一途な想い
「何の本読んでるの?」
ふいに背後から声をかけられた。僕は振り向いて、彼女の顔を見た。
ああ、きっと僕は彼女と結婚する。そんな確信めいた想いをいだいた。
「野球選手の自叙伝」
「ああ!この人知ってる」
「そう?結構有名な人だから」
なんだろう?あんなこと思ったこと今までなかったのに。
僕は不思議な気分で過ごした。
それから何度かデートを重ねて、本当に一線越えてしまった。
「私、初めての人と結婚するって決めてたから責任とって」
そう、だよな。
まず、一緒に暮らしていけるようにしないと。
仕事を探そう。貯金でしばらくは一緒に暮らして行けるけど、それが底をついたら彼女を不幸にしてしまうだろう。
二人で住む家を探して、僕は幸せだった。
「籍はいつ入れるの?」
「もうちょっと待って。自信が持てたらすぐに」
「うん」
散らかった部屋。いつも洗濯された衣類。本棚が増えてゆく。
「花を飾ろう」
「お花?」
「うん。ぱーっと部屋が明るくなるやつ」
「いいね」
ステレオで音楽を流して。
人生で一番の時間かもしれない。
やがて仕事が決まって、順風満帆、入籍した。
妻は趣味で着物を着る。
本当に趣味の範疇だから、ポリエステルの着物に半幅帯がほとんどで、高価なものには手を出さなかった。
だけど、クレジットカード決済で買い物をするものだから、感覚が麻痺して借金ができてしまった。僕はクレジットカードをハサミで切った。
休みの日にはドライブして、好きな服を選ぶ。
そうして十年結婚生活が続いた。
「私、こどもが欲しいの。できればあなたのこどもが!」
「……」
僕は病気で子どもが作れなかった。
妻は僕より十以上も若くて、まだ子どもが産めると主張した。
僕らは離婚した。
妻は若い男に想いを寄せていたようだけど、結局振られたらしい。
僕は一日も欠かすことなく妻に電話をかける。
まだ、愛してる。