宿屋
さてと…<クラウンストリート>に行ってみよう。
大きなアーチをくぐっていくと、ぽつりぽつりと店が並んでいた間に大きな宿屋があった。
すごく大きいけど、宿屋はここだけっぽいしお金もないけど入るだけ入ってみよう…。
大きな扉を開けるとドアについていたスズがカランカランと音を鳴らして人の出入りを知らせる。
中に入ると、木を基調とした建物で、筒抜けの高い天井にシーリングファン(お店とかの天井によく見るプロペラみたいなもの)が回っていて、ホテルのロビーのように広いスペースにソファーやテーブル・椅子が置いてあり、足元から長い絨毯が続き、その上のカウンターには宿屋の女将さんであろう人がいて、忙しそうにお客の対応をしている。
隣りには小さな喫茶店のようにガラス張りのケースにケーキやサンドイッチが並べてあり、宿泊するものとそうでないもの両方に心地よい時間を与えている…。
うん、さすが王都の宿屋…。これは…例え住み込みで働くから泊まらせてくださいと言っても無理だこりゃ…。めったにホテルに泊まった事ないからよく分からないけど、うん…。どうしようかなぁ〜〜。きっと言ったら何言ってんのこの人…って言われるんだろうなぁ〜。
…っよし!一回ダメもとで言ってみよう!だめだと思うけど、もしかしたらなんとかなるかもしれないし!うん!だめなら野宿だ!
真っ直ぐ歩いて行ってカウンターの女性に行ってみよう!
「こんにちは!あの、すみません。本当に突然なんですが、今日だけでいいので無料で泊まらせて頂けませんか?今日王都で仕事を探そうと来たんですけど、開いてなくてお金もなくて困っているんです。お手伝いでもなんでもしますので泊まらせて頂けませんか?お願いします!」
うわぁ…言っちゃった!言っちゃったよ〜変な人って思われてないかなぁ〜?
頭を下げたまま目を開いて女性を見ると、うーんと考え込んでいた。
「そうねぇ…それなら、お願いしようかしら。」
そうですよね、無理ですよね、こんな突然無料で泊まらせてくださいなんてありえないですよね、すみません……え?
「今、なんて…?」
「手伝ってくれるんでしょ?お願いします!」と女性はニコニコして言った。
うそお〜!え?え?無理だと思ってたのに…。やったぁ‼︎
「あっ、ありがとうございます!」
「ふふふ、さっそくだけどお願いしてもいいですか?」そう言って女性はカウンター奥へ案内してくれた。
小さな休憩室のような少し狭い部屋にテーブルとソファーが両端にあり、奥の中央にドアと右端に木のタンスが置いてあった。
「突然本当にすみません…。図々しくて」と言うと
「いえいえ、いいタイミングで来てくれましたよ…。今日はお客様が多い日で、もうお昼過ぎからバタバタしていましたから、猫の手も借りたい所でした。お客様にお手伝いをお願いするのも気が引けるのですが、よろしくお願いしますね。あっ、そうそう自己紹介がまだでしたね、私はここルーチェ・デル・ソーレの女将をしております、テルン・キーレンと申します。みなさんは私の事をレンと呼んでいます。よろしくお願いしますね」と言った。
「そうだったのですね、泊まらせて頂けるのですしお役に立てるよう頑張らせていただきます!
私は如月 さらです。こちらこそよろしくお願いします!」
続く