第五十六部「シュイロ。気付き始めてるの?」
世界を救いたい。
第五十六部「シュイロ。気付き始めてるの?」
「ぐっ……。」
胸を刺された。
程無くして、意識が飛ぶ。
「イト……。」
最期にイトの名を呼ぶ。
シュイロを刺したその当人の名を。
・・・・・・・・・
頭を撃ち抜かれた。
どこで手に入れたのか、矢をつがえてそれを放ったのだ。
「イト……?」
振り向きざまにその名を呼んだ。
届いたかどうかは分からなかった。
・・・・・・・・・
ベキャッ。だの。
グチャッ。だの。
一瞬だけ音が聞こえたが、もう分からない。
死ぬ前に、彼女に崖から落とされたのだけが分かった。
崖から見下ろす彼女は、イト。
騎士で、仲間で……。
・・・・・・・・・
「……がっ……ぐっ……ばっ……ゴボッ……!!」
息が出来ない。
誰だ……?などと冷静に考える暇なんて無かった。
力が強く、頭を上げられない。
空気の代わりに水が入ってくる。
……イト……。
彼女の顔を思い浮かべた。
彼女が犯人とは知らず。
・・・・・・・・・
「…………。」
目覚める。
何度目の朝だろう。
体を起こす。
……異常は無さそうだ。
……。
俺には、身に覚えの無い記憶がある。
それはいつなのか、どこなのか、何もかもがバラバラ。
おかしい。
何もかもが、おかしいのだ。
記憶の中で、俺は常に死んでいた。
いや……最後には必ず死んでいると言った方が正しい。
それは夢と呼ぶには明晰。
しかし俺は生きている。
……いつからだったか、違和感を覚えたのは。
「おはようシュイロ。」
「おう、おはようイト。」
夢の中にはいつも彼女がいた。
無意識の内に彼女の事が刷り込まれているのだろう。
「今日もお前の夢を見たよ。」
「……。」
ピクリと、微妙に、僅かながら動揺したように見えた。
「私の夢?」
「ああ。お前と旅してた。…………なあ、魔王を倒しに行ってみるか?俺の夢みたいに。」
「……。」
「イト?」
「構わない。」
「……うん、ありがとう。」
・・・・・・・・・
痛い。
多分。
麻痺しているのか、よく分からないが痛いのだろう。
止血しないと。
・・・・・・・・・
重い。
足が……正確には足に取り付けられた重りが、海底へと引きずり込む。
・・・・・・・・・
「……。」
目覚める。
何度目の朝だろう。
体を起こす。
……異常は無さそうだ。
僧侶も世界を救いたいを読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
萌葱色も僧侶も、終わりに近付いてきてるのん。
それでは、また2日後。
Thank You。




