第四十一部「死人に口無し」
魔王倒されちゃったね。
第四十一部「死人に口無し」
勇者一行よりも先に魔王を倒すべく、旅に出た男僧侶のシュイロと女騎士のイト、戦士のヤマガイ。
結局、隣国へも行けないまま……彼らは聞いてしまった。
魔王討伐の報せを。
・・・・・・・・・
「嘘だろオイ!?」
立ち上がって、報せを持ってきた男に詰め寄る。
「あ、ずるい。」
イトの戯れ言は気にしない。
「それ、本当なのかよ!?」
「あ、ああ……。いや、正確には噂が流れてきたんだが……十中八九間違いないだろうな。」
「…………。」
絶望的だった。
シュイロたちの目的は、勇者一行よりも先に魔王を倒すこと。
それは昔、シュイロを……ヤマガイをコケにして去った勇者への復讐。
「……ふざけんな……。」
「シュイロ……。」
ヤマガイが歩み寄る。
「ふざけんなよ!!!」
男に掴みかかるシュイロ。
「ひっ……。」
「シュイロ!!」
「俺はなぁ!!俺はあいつが……!勇者が憎くて……憎くてたまらないんだよ!!!なに勝手に世界救ってんだよ!?ふざけんな……!ふざけんな!!!」
「バカ!やめろシュイロ!!」
羽交い締めにするヤマガイ。なんとか男から引き離した。
「離せヤマガイ!!お前だって置いていかれただろ!!」
「そ、そうだけど……!」
ヤマガイは一瞬油断した。その油断から、シュイロは拘束から逃れ駆け出す。
「くそっ……!!」
店を出るシュイロ。
「シュイロ!!」
追いかけるヤマガイ。
……店は騒然としていた。
なんだったんだあいつ……と言う者、変なの……そう言うやつ。
ざわめきのなか、ただ一人。
イトだけは静かにうつむいていた。
「…………。」
・・・・・・・・・
「シュイロ!!おい、シュイロ!!」
戦士のヤマガイ。
鈍足な彼は、シュイロには追い付けなかった。
「ぐっ……くそっ……!!おいシュイロ!どこだよ!?」
辺りを見回すも、いない。
っていうかここどこだ?
森……?
ああ……隣国に行こうとして突破出来なかった薄暗い森だ。
「ヤマガイ。」
後ろから声がした。
「お?イトちゃん。」
「シュイロは見つかった?」
「いや、いねぇ……。ったくアイツ……どこに行きやがったん………。」
ドサリ。
と、鈍い音がした。
「……。え?」
ヤマガイの目の前には、赤く染まった何かがあった。
……いや、見覚えがある。
それはヤマガイが今しがた探していた……。
「ちょっ、えっ……。」
「私が見つけた。」
「……嘘だろ……?」
「嘘。」
「……え……?」
「私がやった。」
「…………あはは、おいおいイトちゃん!冗談はやめろって!!こいつさっきまで生きてたろ!?なのに……何で……こんなことになってるんだよ……!?」
「私がやった。」
いつものように無表情。
だが、その無表情に。
ヤマガイは恐怖を覚えた。
「本気で言ってんのかよ。」
「……。」
イトは首を前に倒した。
そして、その首を戻す前に。
「このっ……!!」
ヤマガイはイトに掴みかかった。
「冗談でも言っていいことと悪いことがあんだぜ、イト……?」
「冗談……?寝ぼけた事言わないで、現実を見て。」
「見れるかよ!!突然シュイロがこんなになっちまって、お前も変な事言うし、訳分かんねぇんだよ!!」
「なら理解しろとは言わない。でも、その手で私を触らないで。」
「てめっ……!!」
ヤマガイが斧を抜いた。
思わず振りかかる。
「……。」
突然こみあげてくる熱い何か。
「ごばぁっ……!!」
吐血して気付く。
……斬られた。
「ぐあっ……あああ……ぁぁ……!!てめぇ……何考えてやがる……!!イトじゃ……ねえな……お前……!!」
イトの表情が曇った。
……図星か?
……だが、ヤマガイがその事を確かめることは出来なかった。
息絶えたのだ。
「……逆上してくれた方がやりやすい。ごめんヤマガイ。」
せめてもの情けだ。
イトはヤマガイの瞼をそっと閉じた。
「……さて。」
イトはシュイロを抱きかかえると、森の奥へと消えた。
僧侶も世界を救いたいを読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
え?唐突?大真面目ですけど。
それでは、また2日後。
Thank You。




