第一部「男僧侶と女騎士」
ゆったりと楽しんでください。
第一部「男僧侶と女騎士」
「…………はぁ……。」
「開幕溜め息は縁起悪い。」
「…………はぁぁぁあ!!」
「しゃくりきかせてもダメ。話、聞いてる?」
「うるさいビッチ。お前はそこらへんで適当に跳ねやがれ。ビッチビッチってな。」
「主人公の言葉とは思えない。」
「誰が主人公だ?」
「貴方。」
「俺が主人公?馬鹿言うなよ。俺はなぁ……俺は……。」
・・・・・・・・・
ここは雲の国。
幼き頃からの夢であった勇者を目指し、日々修行に明け暮れていた男・シュイロ。
「よし、次は武器の訓練だな。」
しかし彼には剣の才能が……。
「あだだだだ!!切った!!指切った!!」
一切無かった。
だが槍の才能が……。
「あだだだだ!!先端の方向間違えた!!腹に刺さっちまった!!」
無かった。
となると斧の才能が……。
「だぁぁぁぁ!!重っ!!これ重いわ!!軽いのないの!?何で斧って重いの!?」
やはり無かった。
「…………回復魔法は使えるからいいけど……。」
自身の回復をするシュイロ。
そう。
勇者の素質で必要不可欠であろう、武器の才能が彼には無かったのだ。
代わりにあったのは、回復魔法の素質。
とても強力な魔力を有し、大怪我でもバッチリ治してみせるシュイロは、雲の国では有名だった。
そんなある日……。
「勇者?」
国王からの命で、魔王討伐へと旅立った勇者が、雲の国へとやって来たのだ。
どうやら回復魔法を使える僧侶が必要らしい。
雲の国には多くの僧侶が居たのだが、能力面ではシュイロが一番だった。
勇者になる事は諦めていたが、共に旅をするのも悪くない。
そう思っていた。
「やっぱり、回復してもらうなら女の子だよな!」
その一言で全てが崩れ去った。
勇者が引き連れていったのは、女性僧侶だったのだ。
・・・・・・・・・
「そんなことあったら、誰だってグレるだろ。」
「仕方無い。女の僧侶は人気。」
「……女騎士だって人気あるだろ。」
「ダメだった。壁役は男騎士が人気らしい。」
「……お前も余ったんだったな、イト。」
「仕方無い。」
酒場でオレンジジュースを飲む二人。
男僧侶のシュイロ。
女騎士のイト。
いつ出会ったかは覚えていないが、二人は互いに愚痴を言い合う仲になっていた。
「あーあ……。今頃、勇者様は何をしてるんだろうな。女僧侶とイチャコラやってるのかなぁ……。俺もイチャコラしてぇなぁ……!!」
「本音が出てる。」
「出してるんだから問題無ぇ。」
「いや、ある。僧侶なのに煩悩の塊。」
「僧侶の前に男だ。」
「僧侶辞めたら?」
「生活出来なくなる。」
「……そう。私も。」
「お互い大変だよなぁ……。」
職業上、仕事はあるが安定はしてなかった。
一週間の内、会えない日の方が少ない。
寧ろ一週間じゃ足りない。
仕事なんて、一ヶ月に一度あるかないかくらいだ。
「……イト、一つ提案なんだけど。」
「なに?」
「もういっそ、俺達で魔王倒しに行かね?」
「え。正気?っていうか生きてる?」
「どういう質問だコラ。分かりやすく言えよイトビッチ。」
「イトビッチ……響きは気に入った。」
「意味も聞いとく?」
「死にたいの?」
「生きたいの。」
「なら話さない方が賢明。」
「だよなー……。」
はははと苦笑するシュイロ。
怪我は治せれど、さすがに死ぬ。逆らうのはやめておこう。
「……で、どうする?」
「行こう。」
「……そっか……。」
たとえ僧侶だとしても、世界を救えるのなら勇者より格好良いかもしれない。
シュイロは旅に出る決心をした。
僧侶も世界を救いたいを読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
トークの多い小説となっております。
更新日時は……。2日に1回、22時くらいですかね。
それでは、またお会いしましょう。
Thank You。