1-6 楽しい時間
お兄ちゃんが意識を失ってから3日がたった。お兄ちゃんはまだ目を覚ましていない。ニュースでは連日ドリームズのメンバー全員が行方不明と報じられていた。ここ数日はその話題で持ちっきりだった。
(お兄ちゃん、早く目覚めて!)
神影もずっと可視化して目覚めを待っている。すると、
「うぐぅ」
お兄ちゃんの声だ。お兄ちゃんをじっと見つめてみる。ゆっくりと目を開けた。私は急いで医者を呼んだ。
「龍さん、何処か痛いところとかはありますか?」
「いいえ、ありません」
「退院しても大丈夫ですよ」
「ありがとうございました」
お兄ちゃんは今日中に退院できた。
「俺、何日間眠ってたんですか?」
お兄ちゃんの質問に私は答えた。
「……3日だよ」
「3日も……」
残念そうに見えたが仕方がないことだとも思える。あの日、お兄ちゃんは覚醒したとでも言える。それだけ体力を消耗していたんだ。退院の準備を終えて、病院を後にした。
退院の翌日、俺はいつもと変わらない朝を迎えた。ただひとつだけの事を除いて。ドリームズのことだ。俺の父はドリームズの所属事務所で働いている。ここ数日は泊まり込みらしく今日の朝に帰ったと思ったら朝食を済ませたあとすぐに出勤した。あの日、ドリームズは殺された。黒の呪いの組織によって。本来なら負けたら存在は消える。しかし、ドリームズの存在価値を知ってる俺は負けたあとに存在だけ消えないようにしておいたのだ。しかし、ドリームズは行方不明扱いにされている。
「今日は気晴らしにどこか行きましょうよ」
神影が提案した。
「そうだな。最近戦闘ばかりしてるからなちょっとした休養と考えて今日は遊ぼう!」
「うん。遊園地に行こうよ、お兄ちゃん!」
「いいね。チケットは俺が奢るよ」
「そんなことはしなくていいよ。ほらここに3枚チケットがあるんだから」
なぜかチケットがある。
「何で持ってるんだ?」
「私って幽霊でしょ?見えないんだからチケットくらい盗めるよ」
「ちょっと待ったぁぁぁっ!お前何犯罪行為やってるんだよ!今日は俺がチケットを買うからそれは返しておけ!」
「はぁい……」
俺は神影と神子と一緒に近くにある大手の遊園地に行った。そこにはジェットコースターはもちろん、観覧車などもある。神影は着くなり
「まずはこれね」
と言うと、この遊園地で一二を争うほどの人気のお化け屋敷に向かった。神影は可視化し、早速入場した。しかし、俺はそうゆうのは苦手だ。しかし、神影の思うがままに向かわされ、お化け屋敷の中を進んだ。
「ウギャァァァッ!」
「龍君怖いの?」
「こ、怖くなんかないぞ?」
しかし、ゾンビが近寄ってくると叫ばずにはいられない。
「やっぱり龍君怖いんじゃん!」
「つ、次に行こう」
俺が選ぶ番だった。乗るアトラクションはコーヒーカップだった。この遊園地で乗れるのがこれしかないからだ。しかし、
「こんなのに乗って楽しいの?」
なんかバカにされてるような気がする。けどそんなことはあとにして、一番憂鬱になるジェットコースターに乗ることになった。コーヒーカップはどうなったのだか……。
「行ってらっしゃい!」
「行ってきまーす!」
神影は楽しそうだ。神子も楽しんでいるが、唯一俺だけが楽しめてない。そう考えてるうちにジェットコースターは頂上に登りきった。その後、すぐに急降下する。
「ウギャァァァ!ウヘェェェェェ!」
自分でもどう叫んでるのか自分でも訳がわからないほど叫んでいると思う。それにしても長すぎるだろこれぇぇぇ!3分は乗ってるぞ!地獄の3分が終わった。もうフラフラだ。このジェットコースターには急降下するときに写真を撮ってくれてる。その写真を見ると、神影と神子は大笑いした。俺は目を飛び出させているかのようなほどの顔をしていた。自分でも恥ずかしい……。
次に乗るのは観覧車だ。俺は高所恐怖症だ。なるべく下を見ないようにして、観覧車の時間を潰そうとした。これも長すぎるわ!約10分で、終わるはずなのにまだ頂上だ。高さもある。すると、神影は神子に憑依した。そして、
「私、龍君のこと好きだったんだ。今もその気持ちは変わらないよ」
「俺も好きだった。神影が死んじゃったとき、とても悲しかった。一番大切だと思ってた人がいなくなるなんて考えたこともなかったよ」
そのまま観覧車はしたに降りていった。憑依から外れると、神影は顔を真っ赤にしていた。
「今日は楽しかったな。神影、ありがとう」
「ううん。私も楽しかったよ。私こそ今日はありがとね」
何て幸せな時間だっただろう。1日があっという間だったなぁ。だけど、これから先、待ち受けるものは大体が見当がついている。修行してもっともっと強くなって、あのとき彼が言っていたように自分の使命を全うしよう。そう決心した。
次回予告
自分の弱さを感じた龍。修行をして強くなると決心したあとすぐに襲いかかる刺客達。果たして、ドリームズの言っていた使命とは。