2-8 裏切り
「チャージ……ブラストッ!」
俺は思うがままにチャージブラストを放った。しかし、ツクヨミの七星剣によってチャージブラストが、魔法が、跳ね返された。
「お、俺達に向かってくるぅ!」
「に、逃げようっ!」
と神子。
「そうはさせないわよ!
Block You!」
「な、動けない。動きを止める魔法か。」
だが、跳ね返された俺達の攻撃はすぐそばをかすらせただけだった。
「「「えっ?」」」
俺達3人は揃えて頭の上に?を浮かべた。俺達を殺そうとしているはずなのに攻撃を与えなかった。
「な、何で?何で跳ね返した攻撃を当てなかったの?」
ツクヨミは顔を赤らめて答える。
「な、何でもいいじゃない!し、失敗。そう!失敗したの!」
「嘘臭いなぁ」
俺は意地悪げにそう言うとさらに顔を赤らめ、
「う、う、嘘じゃないっ!嘘じゃないけど、し、し、死んでほしくない。」
「やっぱり失敗したんじゃ無いんだな?」
「う、うん」
ツクヨミは顔を赤らめながら認めた。やはりそうだったのか。次の瞬間俺達は予想だにしないことを聞いた。
「わ、私、この男の人のこと、す、す……」
「す!?」
「好きになっちゃったんです!!」
「え?」
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」
突然の告白。ど、どう答えればいいのだろうか……。答え方によっては殺される。ど、どうしよう。
「ご、ごめん。俺には好きな人がいる」
「それでもいいんです」
意外な答えが帰ってきた。ツクヨミはそれに続き顔を赤くし、
「わ、私はあなた達の仲間になりたいのです。こ、この世界は一夫多妻制ですから、け、け、結婚とかもぉぉぉぉ!」
「ちょっと落ち着けぇぇ!まず、俺達の仲間になりたいと?」
ツクヨミは何も言わず首を縦に振っている。
「で、結婚したいと?」
ツクヨミの顔が真っ赤になった。俯きながらも、首を縦に振る。
「い、いいよ。この戦争を終わらせよう!」
「は、はい!」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁっ!」
神影が何か言おうとしている。
「龍君は私と付き合っているの!」
「それが?」
俺は神影に聞いた。何でこんなに鈍いのよと俺に問いかけるように神影は睨んだ。
「んとまぁ、こんなところでこの勝負は終わりにしよう」
「私の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
神影がなんか怒ってるが、無視して、
「強制転移!」
もとの世界へと帰還した。ハルルが俺達のもとへ心配そうに駆け寄るが、ツクヨミを見た瞬間に物陰に隠れようとした。
「大丈夫だって!ツクヨミは俺達の仲間になったんだよ。とっとと他の神を倒してくるよ」
「今なんて?」
「え?ツクヨミが仲間になったって言ったよ?」
「なるほど、ツクヨミ!お前はこうやってこの私を倒そうと考えているわけか!」
「ハル?どうしたの?」
俺はハルルに問いかける。ハルルの答えは驚きを隠せないものだった。
「私はもうハルルではない。私の名はスルト!ここにいるツクヨミが唯一倒せなかった神だ!」
「ハルがスルト?そんなはずはない!だって……」
「残念ながらそれが本当なんだ!フンッ!」
ハルルが踏ん張ったと感じた瞬間、全身を火で纏った巨人が現れた。ほ、本当にハルがスルト。その事実だけを語っているようだった。
「そんな……ハルが…………ハルが……」
俺の精神は破壊されたと思ってもいいほど心に傷を負った。今まで魔法とかを教えてくれた人が、過去5回のゴッドウォーズ全戦で無敗を貫いてきた神だ。しかし、今となっては理解ができる。スルトは炎属性の魔法が得意だ。そして、ハルルも炎属性の魔法が使える。しかも、その力は強大だった。やはりハルルがスルトだ。
「お、お兄ちゃん大丈夫?」
「龍君大丈夫なの?」
「り、龍さん大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃない。で、でも心配しな……い…………で…………」
俺は意識を失った。終わった……この世界は終わりを迎えるだろう……。
「こんなのってないよぉぉぉぉぉ!」
神子が叫ぶ。神影もなんとか目を覚まさせようと魔法を詠唱している。ツクヨミは唖然としていて何も言わず俯いている。
そ、そんな……お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……。
「神子!神子!」
神影が私の名前を叫ぶ。どうやら私も倒れてしまっているようだ。だんだん寒気がして、暗い世界をさ迷っているようだ。これが……死というやつなの?わ、私は生きたい。けど、運命には逆らえないのか……。まさか、こんなことで10年の生涯を終えてしまうとは……。
「神子!諦めちゃダメだよ!神子!」
諦めちゃダメ。うん!諦めない!私はまだ生きる!
「わ…………わた…………し…………は、…………い…………生き…………たい」
「わかった!私がどうにかする!この事態、私に任せて!」
次回予告
ハルルがスルトだと知ってしまった龍達。そして、意識を失った龍と神子。兄妹を助けようと様々の策を練る神影。神影は龍達兄妹を助けることができるのか。