プロローグ
今日は待ちに待ったライブの日だ。俺は電車とバスで一時間かけてライブ会場まで行った。だけど、ここから狂い始めたのだ。何もかもが。
ライブまであと三十分。ワクワクしながら歩いていると、目の前にいきなり黒のローブを着た人が前に現れた。俺は後ろに倒れ尻餅をついた。
「なんだよお前!」
俺はローブの人に注意した。男なのか?女なのか?ずっと考えてると黒のローブの人は
「黒の呪いが来た」
声は男だった。いやいやそんなことじゃない。黒の呪いってなんだよ。するといきなり目の前が真っ黒になった。ローブでも被ったのか。少し納得して、ならばと手を前に出した。しかし押し倒すどころか感覚がない。
「なんだ、これ。暗い。だれか。誰かいないのか!」
返事は無かった。
「なんなんだよここは。まさか、死んだのか?」
最悪の事態を考えた。すると、一筋の光が差し込み、声が聞こえた。
「お前は白の方が似合っている」
「どうゆうことだよ!」
俺は聞いたが返事はない。すると今度は、目の前が真っ白になった。
はっと目を覚ました。周りには電話をしながら走るサラリーマンや、応援してる!と書かれたうちわを持ってる人がいた。俺は時計を見た。
「やばっ!ライブが始まっちまう!」
俺は急いでライブを見に行った。俺が見に行ったのは神野神影の好きだった五人組のアイドルユニット「ドリームズ」のライブだ。神野神影はあと二週間で三回忌つまり、もうこの世にはいないのだ。俺は、あの時も一緒にいた。思い出すだけで涙が出るほどの悲しい出来事だった。そう、彼女は俺の目の前で二トントラックに轢かれた。即死だったそうだ。そしてそのときもドリームズの話をしながら歩いていた。だからこそ知らなくてはと調べた。するとどんどんその魅力の虜になったのだ。そして今日に至る。
二時間ほどのライブが終わり、家路についた。その時にライブの前に言われたことが、脳裏をよぎった。「黒の呪いが来た」という言葉を残してどこかに行った人。そして家に着くや否やパソコンを起動させ、黒の呪いを調べることにした。しかしそんなことは載るわけがない。全くの情報を得ることができなかった。
母親の凜に呼ばれ夕食を取ろうとしたときに、凜は嬉しそうに俺を見ていた。
「何かいいことでもあったのか?」
「その通り!」
「なにがあったんだ?」
「今日ね、会社で新しいゲームの企画書を出したらね……」
俺の母親、凜はゲームを開発する会社に勤めている。龍はごくりと唾を飲んだ。凜は話を続けている。
「企画が通ったのよ!しかも社長のお墨付きだって!」
「やったじゃん!」
俺は正直に喜んだ。しかし、もっとすごいのはこのあとだった。それは父親の博人が帰ってきてからだった。
「たっだいまー!」
なんか嬉しそうにしてるなぁと思いながら聞いてみた。
「なんかあったねぇ?」
「ようわかったな!実はな、俺が次期代表取締役だって社長から直々に言われたんだ!」
博人はあのドリームズが所属している「GODKNOWS」に勤務している。その事務所で代表取締役になることは実に名誉なことである。
俺は夕食を済ませたあと、嬉しさの余韻に浸りながら眠りに着いた。
「ここは?」
「あなたの夢の中ですよ」
この声は!あの時の声だ。俺は興奮しながら聞いた。
「白の方が似合っているってどうゆうことだ?あなたは誰?」
「私は白の使い」
この声にもうひとつ聞き覚えがあるような気がした。
「まさかお前神影か?」
「神影って誰です?まぁ話を続けましょうか。私は白の使い。黒の呪いに対峙するもの」
「黒の呪いだと?」
「はい。あなたは黒の呪いに選ばれました。ですが、私がそれを止めました。その代わりもうひとつの呪いを与えられるようにしましたよ。それが白の呪いです。この力はあなたならわかるでしょう。先ほどあなたが体験したことこそあなたの力が与えられたのです」
「そんなこと言ったって自覚ないし。第一何を体験したんだ?」
「あなたのご両親が出世しましたね?」
その時俺ははっとした。まさかそれなのか?そう思った瞬間にその答えが告げられた。
「白の呪いは幸福をもたらす呪いです。呪いと言っても悪い方ではないですよ。しかしあなたが選ばれた黒の呪いは逆に残酷な運命をたどらせる。でも大丈夫ですよ。あなたは白の呪いに選ばれたのです」
「人を生き返らせることもできるのか?」
「はい。ですが、強く念じたらできますが発動者にしか見えないことが多いです。では健闘を祈ります」
目が覚めた。
「お兄ちゃん聞いてる?」
妹の神子だ。俺の家族は4人家族で俺今枝龍、母親の凜、父親の博人そして妹の神子だ。どうやら寝てるときに部屋に入ってきたらしい。
「お兄ちゃんってば!」
「どうした?」
「どうしたじゃないよ!お風呂空いたよ」
妹は10歳だ。俺は高校1年の15歳だ。かわいい妹でよくモテるらしい。俺は返事をしてお風呂に入って考えた。神野神影のことである。
「神野神影さん、また会いたいな」
すると目の前から俺とほぼ同じくらいの身長の女性が現れた。顔つきからわかった。神影だ。すると顔を真っ赤にして俯いている。あ、ここ風呂だ。
慌てて風呂からあがり部屋に行った。これは夢だと思い寝た。これは夢だ。そう思いながら刻々と時間だけが過ぎていく。時計の音、たまに聞こえる車の音。その音を聴くとなんとなく安心して眠りに着くことができた。
そう、この時から全てがおかしくなったのだ。