第78話 後宮での戦い
広い後宮の奥にある広い部屋で、驚かされている敵兵たち。
倒れているメイドさんと、短杖を構えるメイドさんたち。
一触即発な状況を支配しているのは、1匹のネコだ。
『どうした? ご希望通り出てきてやったぞ?』
俺は、驚いている敵兵の隙を見て倒れているメイドさんを
空間魔法陣を展開して、マンション空間へ送った。
「なっ、転移魔法を!」
その声で敵兵全員が剣や槍を構えなおし、俺を睨みつける。
「お前ら、ただのネコだと思うな! 化け物だと認識しろっ!」
「ネコさんを守るよ!」
俺の後ろにいるメイドさんたちが、俺を守ろうと短杖を構えなおす。
「はぁああぁあああ!」
槍を構えた兵士が、再び俺に突っ込んでくる。
その後ろから、剣を構えた兵士も突っ込んでくる。
「死ね! 化けネコ!」
何度も何度も槍をついてくるが、俺のすぐそばで槍先は止まり
俺を貫くことができない。
「な、なんで、つら、抜け、ない、んだ!!」
「どけっ! 貫けないなら、叩き切ればいいんだよっ!」
槍を持った兵士が後ろに下がり、剣を振り下ろそうとしている兵士が現れる。
「もらった!」
だが、兵士が振り下ろした剣も俺に届かずその前に止まった。
「そ、そんなばかな!」
【ロックドライバー】
剣が俺に届かず驚いている兵士の足元から、石でできた杭が勢いよく突き出す。
「ぐはっ!」
石の杭は、兵士の腹に衝撃を与えそのまま兵士を後ろへ吹き飛ばす。
兵士は飛ばされ、壁に激突して絶命した。
「……なんだ、この魔法は…」
『土魔法の応用だよ、石の杭を勢いをつけてぶつけたのさ。
その衝撃に耐えれず吹き飛び、壁に当たって死んだんだよ。すごい魔法だろ?』
敵騎士は後ろにとんだ兵士を見た後、俺を睨みつける。
「…なぜ、貴様に剣が届かない!」
『空間魔法には、派生で結界魔法がある』
「結界魔法など、勇者神話の中の話ではないか!」
『だが、実際に使って見せただろ?』
「こ、この、化けネコが…」
敵剣士が、ネコ1匹に歯ぎしりしている。
メイドさんたちは、その光景が信じられないのか
「…ねぇ、こいつら弱い?」
「そんなはずないでしょ、私たちは1度戦って負けているのよ?」
「だよね、でも……」
ネコ1匹に手も足も出ない敵兵士たちに、恐ろしさを感じなくなっていた。
「化けネコは俺が抑える、お前たちは後ろのメイドを殺せ!」
敵兵士たちが再び武器を構え、俺を無視してメイドさんたちを狙って動き出した。
『…無駄なことを』
【ロックドライバー】
石の杭が敵兵士に襲い掛かる。
「「ガフッ!」」
「「グハッ!」」
石の杭の勢いに負けて後ろに吹き飛ぶ兵士たちは、
ことごとく壁に叩きつけられ絶命する。
1人の兵士は石の杭をぎりぎりでよけてさらに前に出る。
【エアハンマー】
「グフッ…」
前に出た兵士に、さらなる魔法が襲い掛かり軽く吹き飛ばされる。
「…この私と戦っているのに、メイドをかばうとは…なめられたものだ!」
敵剣士は、魔力を纏い両手に1本づつ剣を握る。
【バーサーカー】
敵剣士の使った魔法で、全身が赤黒く変色し胸の鎧が勢いよく外れる。
「ぐぅぅ……さぁ、後ろのメイドごと死ぬがいい……」
そして、敵剣士は消えた。
大きな音ともに、メイドにかけられた結界に剣を振り下ろした敵剣士が現れる。
「何! いつの間にメイドどもに結界を!」
『驚いたぐらいで止まるなよ…』
【ライトニング】
雷が敵剣士に落ちる。
「ガアァアァァ!」
体から煙が上がり、その場に崩れ落ちる敵騎士。
怯えるように驚くメイドさんたちに、空間魔法陣を展開し京花の空間へ送る。
『これで、この場で助ける人は助けたかな…』
その時、俺に剣先が迫る。
「死ねぇぇ!!」
俺はするりと剣をよけると、魔法を唱えた。
【ロックドライバー】
「ガフッ!」
鈍い音とともに、敵兵士は吹き飛ばされ絶命した。
俺は、敵兵士たちの死体をそのままにして部屋を悠々と出て行く。
『次は、皇帝を助け出さないとな……間に合うかな?』
そして、走り出し後宮を後にした。
▽ ▽ ▽
ベッドに寝かされた2人のメイドさんの側に、
仲間のメイドさん2人がついている。
「治療は終わったから、目を覚ましたらこの薬を飲んでもらって」
京花は、仲間のメイド2人に薬を渡すと部屋を出て行く。
リビングに戻ると、皇帝の家族とメイドさんが1人いる。
京花がリビングに入ってくると、メイドさんが「どうですか?」と聞いてくる。
「治療はしたからもう大丈夫よ、薬も渡したしすぐ良くなるわよ」
メイドさんはホッとし、京花にお礼を言って頭を下げる。
京花は、皇帝の家族に声をかける。
「落ち着きましたか?」
この場所に送られた時、皇帝の家族はいきなり見ていた場所が変わり
軽くパニックを起こした。
それをなだめて落ち着かせると、今度は倒れたメイドさんが送られてくる。
それを助けようと、再び軽いパニックを起こしたのだ。
「ごめんなさい、この子たちのことも見てもらって…」
皇帝の母親の両脇には、縋りついて眠っている女の子と男の子がいた。
「そういえば、ご兄弟は6人と聞いていたけど…」
「一番上は皇帝に、次は…」
「ごめんなさい、言いずらいことを聞いてしまって」
「いえ、大丈夫です。 3人目と4人目はそれぞれの屋敷を持っていますから…」
「それで、まだ小さいその2人があなたとともに後宮で暮らしていたのね」
そこにメイドさんが、京花にお願いしてくる。
「お願いします、陛下を、皇帝陛下をお救いください」
京花は、メイドさんに頷いて、
「私はそのつもりよ、外のネコも皇帝を救うために向かっているわよ」
皇帝の母親は、そばで眠る2人の子供を撫でながら皇帝の無事を祈る。
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