表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/86

第77話 クーデター




今、俺が座っているのは城の最上段のテラス。

ここから、帝国民へ皇帝が姿を現して演説をする場所のようで

すごい装飾の数々だ。


テラスの床には、帝国の紋章が描かれている。

2日ほど前、この場所で騎士団の出陣のための演説をしていた。

演説している皇帝の後ろで、皇帝の兄弟がそろっていたけど


弟のグレーベルが黒い笑みを浮かべていたな…

誰にも気づかれなかったようだけど、もう憎しみしかないんだな。



しかし、ネコの姿で気づかれないように城に忍び込んでいるけど

人が多いな。 確か、グレーベルたちは潜り込ませていると言っていたけど

誰が潜り込んでいる人なのかな…


騎士団の人たちがいなくなって人が減るかと思ったけど

近衛騎士たちが、守るべきところを守っているから心配はいらないと思うけど

何か心配だな…



その日の深夜、再びテラスで城の様子を見ていると

どうやら始まったようだ。


最初に動き出したのは、城の中に潜り込ませていた人たち。

いろいろ動き回っている。

何人かが、城門へ走り立ち番していた兵士を眠らせて


閉まっていた城門を開け放つ。

開け放たれた城門からは、待機していたどこかの兵士や騎士がなだれ込んでいく。


…さて、皇帝の家族や皇帝を避難させないとな。

俺は、テラスから飛び降り廊下を走って後宮へ急ぐ。

そこには、皇帝の家族が住んでいるはずだから、まずは家族からだな。



後宮にたどり着く前に、近衛兵たちが騒ぎ出したようだ。

侵入者に対しての反撃と、町にいる衛兵を呼びに何人か走らせたようだな。

城門から出て行く人を見かける。



…あちこちで、剣と剣がぶつかる音が聞こえ始めたな。

それと、メイドさんたちの悲鳴も聞こえ始めた。

乗り込んできた奴らは、何をしているんだ?



……やっと、後宮の入り口に着いた。

最上階のテラスにいた俺も悪いけど、大きすぎるこの城も悪い!

もっとコンパクトに作ってくれたら……今回のように襲われやすくなるのか。


とにかく、皇帝の家族を避難させないとな…

俺は開け放たれていた後宮への扉を抜け、中へ入って皇帝の家族を探していく。



ん~、いないな…

後宮のあちこちを探しているけど、皇帝の家族どころかメイドさんもいない。

さっき入り口の扉が開いていたから、中に誰かが入り込んでいるのかな?


…急いで探そう。



見つけた!

あれは皇帝の家族の母親と妹や弟たち、それをメイドさんたちが守るように

頑張っているな。


メイドさん3人しかいないけど……いた、倒れて動かない人が2人。

…まだ、生きてはいるみたいだ。

敵の兵士は…6人、いや7人だな。


気配察知でわかるからいいけど、出入り口から見えない死角にいるとは…


「…あなたたちは、誰の命令で動いているのですか!」

メイドさん、気丈だな。こんな時でも、情報を聞き出そうとしている。

「わかっているのですか? ここは皇帝陛下のご家族がいる後宮、


許可のないものが入ってよい場所ではありません!」

おお、言い終わった後、腰から短い杖を構えたぞ。

「フッ、許可なら貰っているさ、グレーベル様にな」



母親にしがみ付いてふるえていた女の子が、

「お、お兄様が…? なぜ、お兄様が…こんな…」

母親が今度はしっかりと女の子を抱きしめて


「グレーベルが、ここ最近おかしな行動をとっていることはわかっていました。

しかし……しかし、皇帝の簒奪とは……」

やっぱりショックだったようだな。


まあ、わが子同士が憎み合うって親からしたら堪ったものじゃないよな…

「お前たちは、殺すなとの命令は受けている。

…だが、遊ぶなとは言われてないからな」


うわ、兵士たちの顔が歪みきっている。

メイドさんたちは激高してるぞ。

「貴様ら! 恥を知れ!!」


これ以上、皇帝の家族を危険にさらしておくわけにはいかないな。

俺は、皇帝の家族で集まっているその足元に空間魔法陣を展開。

そのまま、京花のいるマンション空間に送った。


「何! 貴様ら、あの女どもをどこにやった!」

皇帝の家族が消えたことで、今度は兵士たちが激高したぞ。

その時、兵士たちの後ろから姿を現した騎士。


「待て、今のは転送魔法陣だ」

キョロキョロと部屋の中を見渡して、誰かを探しているな。

「なかなか高度な魔法陣を使うじゃないか!


どうした? 姿を見せられないのか?」

…たぶん、俺に向かって言っているんだろう。

騎士は、剣を腰のさやから抜くと


「このメイドたちの首をはねれば、姿を現すのかな?」

「くっ!」

メイドさんたちが短杖を構える。


「……どうやら、メイドたちに恥ずかしい目にあってもらう方が趣味かね?」

騎士が一歩下がると、今度は兵士たちがメイドさんたちに迫っていく。

メイドさんたちは、短杖を構えながら兵士たちから離れるため下がっていく。



…やれやれ。

俺はネコの姿のまま、兵士とメイドさんたちの中間に現れた。

騎士は眉間にしわを寄せて、呟く「…ネコ?」と。


兵士たちは、現れた俺に最初は驚いたがすぐに見下した笑みを浮かべ

「後宮で飼っているネコか? 邪魔だ!」

兵士の持っていた槍を、思いっきり俺に突きつけてきた。


「あっ!」

メイドさんの1人が俺をかばおうと、飛び出すが間に合わない。

ネコの串刺しは見たくないのか、目をつぶるメイドさんたち。



しかし、いくら待ってもネコの声が聞こえない。

そっと目を開けていくメイドさんたち、そしてその目で見たものは

ネコの目の前で止まっている槍の先。


「ど、どうなってる……槍が、俺の槍が、動かねぇ…」

驚いて動けなくなった兵士たちに代わり、

騎士の男がネコに走り寄り、剣を打ち下ろす!


「なにっ!」

騎士の剣は、ネコの頭のすぐそばで止まっている。

「ばっ、ばかな! ただのネコじゃないのか!」



俺は騎士を見つめて、

『…お前が姿を見せろと言ったんだろう?』

騎士は目を丸くして驚いている。







ここまで読んでくれてありがとう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ