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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第68話 一網打尽




アジトの2階にある女たちを監禁していた部屋で、

盗賊の親分と親分の右腕の男が、消えた女たちの捜索を手下に任せ雑談をしている。

それを聞いている、1匹のネコの俺。



「それで、見つからなかった場合はどうするんですか?」

右腕の男が、少し困った顔で親分に聞く。

「そん時は、死んでしまったとでもいえばいいんだ」


親分は投げやりに答える。

「いいんですか? あの女を渡すのがこちらにつく条件だったのだろう?」

右腕の男の不安は消えない。


「構わねぇよ、あの貴族以外にも裏切る貴族は何人もいるからな」

親分は相変わらず、悪い笑顔だ。

「まあ、私たちも裏切りの貴族なんだけどね」


「言うなよ、帝国の条件がたまたまよかっただけだ」

親分は腕を組んで目を瞑った。

「ジャスタール王国では、準男爵。しかし帝国は伯爵として迎えてくれる」


親分は右腕の男のその言葉に、ふと笑ってしまう。

「フッ、まさか事実とは思わなかったな…」

「ええ、本当に帝国は伯爵の地位を用意していましたからね」


右腕の男も笑っていた。

「キュビール領への侵攻作戦は、

奪還も視野に入れていると王国は気づいていませんでしたね」


親分は、ニヤリと笑う。

「だからこそ、こうして盗賊のふりをして王国の貴族の中から

裏切り者を、誘うことができたのだ」



そこへ手下が走って入ってくる。

「お、親分、見つかりません! ど、どうしやすか?」

「本当に、屋敷中をくまなく探したんだろうな!」


手下は親分の怒鳴り声に委縮するも

「へ、へい! 屋敷中、くまなく探しやした!」

「…なら仕方ねぇ、あの貴族にはお姫様は襲撃時に逃げましたというしかねぇな」


右腕の男が少し不安になる。

「いいんですかい? あの貴族、女のためなら何でもしそうですけど…」

「いねぇものは、しょうがねぇだろう。


おい! 全員を食堂に集めろ、今回の分配をするぞ!」

手下は、嬉しそうに

「へい! 分かりやした!」


と、飛んでいきそうな勢いで部屋を出て行った。

「…潮時ですか?」

親分はニヤリと笑いながら「ああ」と言って部屋を出て行く。




空間魔法で作ったマンション空間では、姫様が1人憤っていた。

テーブルを何度もたたき、悔しさと怒りを爆発させている。

「ひ、姫様…」


女騎士は、姫様の悔しさが分かるのか涙をこらえて姫を心配していた。

「なんてこと! 王国の貴族が帝国に尻尾を振るなんて!

しかも、私を何者か分かっていてこんなことをしでかすとは…」


京花は、少し意外そうに言う。

「しかし、帝国の関係者かと思ってみれば王国の裏切り者とはね~」

姫様とそのお付きの3人は、京花にお願いする。


「京花様、すぐに私たちをこの空間から出してください!」

「「京花様、お願いします」」

3人の女性は、京花に迫る。


「ん~、ダメだって」

京花は、少し考えて断る。

「な、なぜですか! すぐに外に出て裏切り者をこの手で断罪しないと!」


女騎士は、鼻息荒く剣に手をかけている。

「落ち着きなさい! あなたたち3人は捕まったのよ、外にいる盗賊に!

…今は、時が来るのを待つのよ」


京花に注意され、少し落ち着いた3人は

「時、ですか?」

「そう。外にいるケロが作ってくれるわよ、その時をね」


3人の女性も、5人の女性も「ネコが?」と疑問を持っていたころ

外では、少し騒ぎになっていた。




屋敷の食堂に盗賊全員を集めた親分は、今回手に入れた金貨や銀貨などを

全員の目の前で、分配していた。

そこへ、騎士団を連れた貴族が食堂の扉を豪快に開け入ってきた。


「親分! ミュリアが手に入ったそうだな!」

それは一見、紳士に見える貴族。だが、着ているものから成金の残念貴族だと

すぐに考えを改める。


残念貴族は、騎士たちを食堂に入れると親分と対峙する。

「これは、ローベン卿。到着は明日と思っていましたよ」

「ミュリア姫が手に入ったと聞いて、飛んできたのだ!


あの王族のミュリア第9王女を好きにできるのだ!

何があろうと、私は飛んでくるさ。

で、どこにおられるのかな? 私の姫君は」



…チャンスだな!


【ガイアチェーン】

【アイアンチェーン】

【ショック】


食堂にいた盗賊、貴族、騎士たちが全員その場に倒れ鎖に拘束された。

石の鎖と鉄の鎖が絡みつき、その場から動くことができない。

しかも、体のどこかがしびれていてさらに動けなかった。


「こ、これは、どういう、ことだ?」

困惑しか頭に浮かばない親分。

「何が、どうなって、いる…」


訳が分からない残念貴族。

そこへ、ネコが1匹食堂の真ん中に入ってくる。

「…ネコ?」


1匹のネコは、足元の床を前足でたたくとそこに魔法陣が浮かび上がる。

「何!」

そして、その魔法陣の中から出てきたのは


ジャスタール王国の第9王女ミュリアと、その護衛についていた騎士2人。

そして、京花も出てきた。


『おい京花、なんでお前まで出てくるんだよ』

「仕方ないでしょ、そこの3人だけにすると惨劇にしかならなそうだったし」

ネコと京花は、3人の女性の後ろで内緒話をしている。



ミュリア姫は、石の鎖と鉄の鎖で拘束された残念貴族を見下ろすと

いい笑顔で、挨拶をする。

「…久しぶりですわね、ベルキオ・ローベン様」



ベルキオ・ローベン。

彼は一度犯罪者として断罪されたが、金を握らせたほかの貴族たちの嘆願により

恩赦を与えられていたが、なんの役職も与えられず

ただ生きているだけの貴族となっていた。


だが、ミュリア姫に一目ぼれをすると何が何でも手に入れようと

あの手この手を駆使するも、手に入れることはできずに

今回の帝国に手を貸すなら、ミュリア姫を。と言う話に乗ってしまいこのざまだ。



べルキオは今、初めて女の恐ろしさに気が付いた。

そして、後悔し始める…

なぜ、こんな女に心を寄せていたのだろうと…







ここまで読んでくれてありがとう。


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