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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第67話 裏事情を知るもの




アジトの屋敷の食堂で、酒を飲もうとグラスに手をかけたところで

いきなりドアが開き、盗賊の手下の1人が騒ぎ出した。


「親分、2階に閉じ込めておいた女たちがいなくなった!」

親分は自分の耳を疑うように手下に怒鳴る。

「何だと!」


そこに親分の右腕を自称する男が、説明を求めた。

「おい、どういうことか説明しろ」

手下は、その声に委縮したのか説明を始める。


「さ、さっき、親分に玄関で言いつけられた女たち3人を

2階の監禁部屋に連れていったんだ」

親分たちは、頷く。


「監禁部屋の扉には鍵がかかっていたから、鍵を外して

扉を開けて中に入ると、そこには5人の女たちがいるはずだった…」

「そいつらが、いなかったと?」


睨みをきかせて、親分が聞く。

「は、はい! だから俺は一大事だと女たち3人を中に入れて

すぐに親分に知らせるためにここに…」


「ちょっと待て! …扉に鍵はかけたか?」

手下の男は、だんだんと顔が青ざめていく。

「バカヤロー! お前ら、入り口を固めろ! 他のものは屋敷内を探せ!!」


「「「おおっ!」」」

屋敷内に盗賊たちが、捕まえてきた女たちを探し始める。




少し時間はさかのぼって、手下が親分たちが捕まえてきた女3人を

監禁部屋に閉じ込めるために、首に縄をして引っ張っている。


女たち3人の手首にも縄がしてあり、逆らえないようになっていた。

「ほれ、さっさと歩けよ」

首に繋がっている縄を引っ張ると、女たちが苦しそうにする。


「くうぅ」

「ひ、引っ張らないで。 歩けというなら歩きますから…」

「くっ!」


手下は優越感に浸っていた。

なぜなら、この女3人は親分の話では貴族の娘らしく

またその中の1人は、王族の血が入っているとか。


そんな女たちを縄をひいて歩かせる、そして夜には……

「うひひひ」

手下は、我慢できずに声に出して笑ってしまった。


女たち3人は、その声を聞いてものすごく嫌なものを聞いた気になった。



手下に連れられ、ようやく2階の奥にある監禁部屋にたどり着いた。

扉には、厳重に2か所鍵がかかっていた。

そのカギを手下が開けていく。


2か所の鍵を開け、扉を開けると中へ入って手下は驚く。

「…あれ? いない? いないぞ!」

手下は部屋の中を隅々まで探した後、女たち3人を部屋に入れてドアを閉める。


『た、大変だ~!』

ドアの外から手下の慌てた声が響いていた。


「…どうやら、先に捕まっていた人が逃げたようですわね」

3人の中で一番上等な服を着た、銀髪の女性が声を出す。

普通の服を着ているように見えるのに、どこか普通と違うな。


「姫様、あの男、ドアに鍵をかけずに行ったようです」

それは女騎士。

だが鎧は外され、鎧の下に着る黒いシャツが彼女の胸を主張している。


髪は短いショート、それでも金色の髪は艶を持っていた。

「私たちも、逃げ出しますか?」

もう1人の女性が、隠し持っていたナイフで手首の縄を切る。


そして、首に巻き付けられている縄を切ってから女騎士にナイフを渡す。

彼女もまた護衛の1人だと思うが、女騎士とはタイプが違った。

言うなれば、冒険者や傭兵といったところか。


「ニャ~」

姫様は、俺がベッドの下から出てきたところを気付いた。

「…ネコ? こんなところにネコがいるなんて…」


姫様がしゃがみこんだところで、俺は姫様たち3人をマンション空間に入れた。



いきなり変わる周りの景色。

そして、そこでお茶を飲みお菓子を食べながら談笑している女性8人。

「…どうなっているの?」


目を丸くして驚いている3人の女性たちの前に、京花が進み出て

「ようこそ、空間魔法で作った部屋へ」

と言ってニコリと笑う。


そこへようやく、我に返った女騎士が姫様をかばうように割り込む。

もう1人の女性も姫様の側につくと、京花たちを警戒する。

「お前たちは、何者だ?」


女騎士の質問に、京花が答える。

「まず、私を含めてそっちにいる2人はある事情でこの空間にいる」

姫様が眉間にしわを寄せて、


「その事情は、教えてくれませんの?」

京花は少し考えると、

「まあ事情ぐらいは良いだろう。


私たち3人は帝国に行くために、この空間にいるんだ」

女騎士がますます警戒してだす。

「…何のために帝国へ?」


「助けたい人が帝国にいるんだよ、そのためにね」

姫様の警戒心が少し解けたようだ。

「ではそちらの5人の女性は?」


京花は5人の女性たちを指さすと

「君たちと同じ、盗賊にさらわれてきた人だよ」

これには姫様をはじめとした3人の女性たちは驚いた。


「…いなくなった女性たちとは、あなたたちのことか」

5人の女性の中の1人クルセは、姫様の質問に答える。

「はい、盗賊たちの慰み者になる所を助けてもらっています」


「…助けてもらっている?」

「ええ、この空間の外は、まだ、盗賊たちのアジトですから」




俺はすごい足音が聞こえてきたので、急いでベッドの下に潜り込むと同時に

大きな音を立てて扉が勢いよく開いた。

「…やっぱり鍵がかかっていねぇ! 探せ! まだ屋敷内にいるはずだ!」


声だけでも、ものすごい剣幕だっていうのはわかるな。

手下たちが、屋敷内を探すために走っていったみたいだ。


「ちっ、せっかくとらえたお姫様まで逃げ出してるじゃねぇか…」

「手下の制裁は後だぜ、親分。今は、見つけねぇとな」

「おめぇの言いたいことはわかってる!」


部屋の中を親分とは別の奴が歩いている。

「しかし、この国にも女のために裏切る貴族がいるとはねぇ…」

「おい」


「すまん。でも親分も今回の話、うまくいきすぎているとは思わないか?」

俺の潜り込んでいるベッドに、親分が思いっきり座る。

「おそらく、あの女たちを引き渡した後は始末されるかもな」


「ふっ、黙って始末される親分じゃないだろうに…」

ベッドからそっと出て、親分を見上げると

「まあな」


という親分は、ニヤリと悪い顔で笑っていた。







ここまで読んでくれてありがとう。


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