第6話 ネコがネコを超えるとき
ファ~ア
ネコでも欠伸をすると、涙が出るんだな。
周りを見ると、すでに夜中で月明かりに照らされているとはいえ怖いな…
確か本の中に夜、明かりをつけなくても見える魔法があったな。
…なんて名前だっけ? ん~分からないときは自分で好きに呼んでみるか。
【夜目】
おお、唱えてみるものだな。
夜の暗闇が、明るくなったみたいに見える。
俺は見えるようになったことで、今いる位置から周りをじっと見ていると
動いている魔物がいるのに気付いた。
こんな夜でも活動しているのかゴブリンよ。
それにゴブリンだけじゃなく、よく見れば豚の顔をした二足歩行のオークか!
ゴブリンは草原を、オークは森の中を何かを探して動いているな…
ふむ、これはレベル上げのチャンスか!
「ブゴッ」「ゴブォ」「ブォォォ」「ブオ」「ブゥゥ」
……やっぱりオークの言葉もわからないな。
【ウィンドカッター】
真空の刃が5体のオークの首を切り飛ばし、首から上がなくなったオークは
その場に崩れ落ちるように倒れる。
「ブギィィ」「ギィギィ」「ブグゥゥ」
これって警戒をしているのかな?
【ウィンドカッター】
再び真空の刃が、今度は3体のオークの首を切り飛ばす。
首から上がなくなり、崩れ落ちるように倒れるオークに
草原にいたゴブリンが近づき、持っていた武器でたたき始めた。
「ギャァァ」「ギャギャ」「ギャオギャ」
何か騒ぎ始めたな、もしかして俺たちが倒したぞ~とか言っているのか?
う~ん、赤い狼とはなんか違うんだよな…それが知能の高い低いってことかな?
【ウィンドカッター】
真空の刃が、3体の騒いでいるゴブリンの首から上を切り飛ばす。
首から上がなくなったゴブリンは、オークの死体に重なるようにその場に倒れた。
おお、また体がほのかに暖かくなったな。
どんどんレベルが上がっているようで結構結構。
それにしても、昼間の冒険者たちがいなくなって今は夜中…
どれだけ寝ていたんだって話だな。
とにかく今は、冒険者ギルドから借りてきた魔法の本に書かれている魔法を
片っ端から覚えていくためにも、どんどん魔物を倒していきますか~
▽ ▽ ▽
あれから10日、いくら不老不死だからといって何も食べずにはやりすぎた。
今俺はふらふらしながら歩いて、町へ戻っている。
もうすぐ町へ着くはず、町についたらまずは屋台を回って食い物をもらうのだ…
そうそう、今の俺のステータスを確認しておこう。
【ステータス】
名前 ―――[宮野 太郎]
年齢 1歳[+46歳]
職業 魔法使い
レベル 42
生命力 4200
魔力 540000
攻撃力 物理 100
魔法 5500
防御力 物理 100
魔法 6000
スキル 異世界言語習得 不老不死[限定]
火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 空間魔法 治癒魔法
光魔法 闇魔法 飛行魔法 解体魔法 錬金魔法 付与魔法
魔力操作 夜目 念話
称号 魔道に目覚めしネコ 暗殺ネコ
加護 ユーキュリアの加護 ネリネの寵愛
どうよ、いろいろ突っ込みたいところ満載だろ?
まずは、ようやく年齢が1歳になったよ!
どうやら、8日前に誕生日を迎えたみたいだ。
初めて年齢が表示された時はうれしかったな~
毎日、夜明け頃にステータスを確認してから寝ていたからな。
次にスキルの多さだが、これは持ってきた魔法の本に載っていた魔法を覚えたせいだ。
こんなに載っているとは知らなくて、苦労したぜ。
特に一番苦労したのが『解体魔法』だったな。
この魔法、解体する魔物の構造をよく知っていないとうまく発動しないんだよ。
おかげで、ゴブリンやオークをぐちゃぐちゃにしてしまったのはいい思い出だ。
何せ、魔石があることも6日ぐらいたってから気付いたほどだからな。
でもその分、他も魔法を覚えるのには役に立ったかな。
しかし、ネコの体になってグロに耐性ができたのかそんなに吐かなかったな。
……これも天使さんの修正なのかな?
あと念話も本に載っていたんだよ。
これって魔法だったんだな、本によると念話の大本は『音魔法』というらしい。
『音魔法』を覚えると、音遮断や音拡張とかが使えるとか。
そして、あとは加護が付いたことか。
称号? それは察しが付くだろう。
魔法ばかりを夢中になって覚えていたせいで、魔道に目覚めしネコ。
木の上から隠れてゴブリンやオークを倒していたせいで、暗殺ネコ。
……これから先、変な称号が付きそうで憂鬱になるな~
鑑定を使われたら驚かれるだろうな、
確か本に鑑定を妨害する魔法があるとかないとか。探してみるか…
さて、加護のことだけど
ユーキュリア様は、魔法を司る女神様らしい。らしいってのは確認してないのだ。
ステータスの加護の所を見ていると、説明が頭に浮かんで知ったほどだ。
これもあとで、ギルドの資料室で調べてみるつもりだ。
ネリネ様は、動物すべてを守護する女神さま。
その中に魔物は入っていない。動物というのは、ネコ、イヌなどなど。
寵愛になっているのはよくわからないが、どこかで良いことをしたからだろう。
神様女神さまは、見ているのだろう。……たぶん。
あと、加護や寵愛のおかげでステータスの数字が大幅に上昇したな。
ネコなのに、もはやネコを超えてしまっているとは…
俺ってば、いつの間にスーパー何とかになったんだろう……
ふう、ようやく町の門にたどり着いた。
もうすぐ夜が明ける。
門が開いたら忍び足で素早く中に入り馬小屋の藁の中で寝る。
ひと眠りしてから、屋台巡りをしておこぼれをいただこう。
ここまで読んでくれてありがとう。