第60話 ケルベロス無双
今日、俺は確か町を見回って冒険者ギルドの屋根で
春の温かい日差しを浴びながら昼寝をしていたはず。
なのに、いきなり衝撃を覚えると全身鎧の男に蹴飛ばされていた。
【エアシュート】
俺はすぐに反撃した。
風の槍を、全身鎧の男3人にぶつけて吹っ飛ばす。
さらに、倒れたところへ
【ガイアチェーン】
石の鎖で身動きがとれないようにして拘束!
俺は、全身鎧男たちにテクテクと近づいていくと
いきなり抱きしめられた。
「ケロちゃん!」
その懐かしい声の持ち主のアンナだ。
ギュッと抱きしめてくるアンナは、俺の存在を確かめるように抱きしめる。
『あ~、アンナ、うれしいのはわかったから、いい加減放してくれ』
アンナは、自分の行動に気づき俺を放してくれる。
俺は、改めて周りを見るとアンナに似ている女の子2人と
ケガをしたジニーを見つけた。
『ジニーが、ケガをしているのか』
俺はすぐに治癒魔法をジニーにかけて、切り傷を治してやる。
【ヒール】
俺が治癒魔法を使うと、アンナをはじめとする全員が驚いてくれる。
「ケ、ケロちゃん、治癒魔法なんて使えるの?」
『ああ、使えるぞ。俺の師匠がすべての魔法を一通り教えてくれたからな』
「そ、そうなんだ…」
俺はネコの姿で、首を傾げながらおかしなことを言ったかな?と不思議がる。
そんな俺を見ていたジニーたちは、
「ネコが魔法を…」
「これ、本当にネコ?」
「…やはり、ただものではないようですね」
などと感想をもらしていた。
そこへ、石の鎖をどうにかしようともがいている帝国兵士の音が響く。
何度ももがくうちに、鎖が外れそうになっていた。
【アイアンチェーン】
俺が新たに魔法を唱えて、鉄の鎖を帝国兵士に巻き付けて動きを封じると
今度はあきらめたらしく、おとなしくなった。
「くそっ!」
俺は、ネコの姿のまま帝国兵士に近づき
動けないそいつらの顔を、ネコパンチしてやる。
「ふ、ふざけるな! なんだこのネコは!!」
俺は、すぐにいったん帝国兵士から離れると
【人化の法】
アンナたちの知らない言葉で魔法を使い、人族に変身する。
人化の法はもともと、古代竜が開発した魔法で動物や魔物が人になる魔法だ。
そのため、その言葉は『竜語』となっていてアンナたち人には理解できないのだ。
「ケ、ケロちゃんが、男の子に変身しちゃった…」
俺は今、服を着たどこにでもいる人間の男の子になっているはずだ。
年齢は10歳前後。
何故か、この年齢に固定されている。
おそらく、俺にこの『人化の法』を教えた赤い狼が細かいことを
教えてくれなかったからだろう。
「この姿で会うのは初めてだなアンナ」
俺は笑顔でアンナに、挨拶をすると後ろの女の子2人が近づいてきた。
そして俺の両手をそれぞれで握ると、
「初めまして、リリーとサリーです。よろしくね」
と、挨拶をしてくる。
「…流石アンナ様のお子様」
ジニーは立ち上がり、治った足を確かめながら感心している。
アンナは、自分の子供の行動に呆れ気味だ。
そんな、なんとも言えない空気が気に入らないのか帝国兵士がうるさくなる。
「何、俺たちを無視している!」
「ふざけるな! この鎖を解け、俺たちは帝国兵士だぞ!」
「もうすぐ、残りの帝国兵士が来るからな!」
それぞれに喚き散らしていた。
俺はすぐに、リリーとサリーをアンナに渡すと帝国兵士の目の前に立つと
「俺を蹴飛ばしたのは、お前か?」
と少し相手を威圧して聞く。
だが、帝国兵士には俺の威圧がきかないのか分からないのか
うすら笑いを浮かべながら
「ふっ、貴様を蹴飛ばしてやったのは俺様だ!」
と一番右端の帝国兵士が答えた。
俺は、答えた男の前に立つと
「そうか、お前か… 【ショック】!」
俺はその帝国兵士に軽い電気ショックの魔法をかけると
兵士は、白目をむいて気を失いその場に崩れ落ちる。
その兵士の様子を見ていた残りの2人の帝国兵士は、顔を青ざめ大人しくなった。
俺はアンナに、今回の召喚の理由とこの状況の説明をしてもらう。
…俺は、アンナたちからの説明を聞いてどうするべきか考えていた。
このまま、ここにとどまっていてもこの帝国兵士たちが言っていた
残りの帝国兵士が追いかけてくれば、また戦わないといけない。
だからと言って、このまま闇雲に逃げてもいずれ見つかってしまう。
……ならば、これしかないな。
「アンナ、帝国兵士はあと何人いるんだ?」
アンナは、淡々と答えてくれる。
「私が見たのは、10人ほど…。 確か、騎士が1人いたはずよ」
アンナが確認できたのは逃げる前だから、ここに3人ということは
兵士騎士合わせて8人か…
う~ん、厳しいな…せめて、兵士だけなら何とかなるんだけど……
俺が考えている姿を見て、アンナが提案してくる。
「ケロちゃん、このまま森の中を逃げるのはどうかな?」
「それは厳しいな、帝国兵8人の追手だ。
すぐに回り込まれて捕まってしまう…」
アンナは、少し落ち込みながら「そう…」と言葉を出す。
するとそこに、声をかけてきたものがいた。
「ならば、私たちが手を貸そう」
森の中から、俺の知らない兵士と騎士が現れた…
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