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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん
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閑話1 赤い狼の件で動くギルド




冒険者ギルドの正面にある掲示板の前で、受付嬢が溜息を吐く。

「…今回の赤い狼は、この依頼書が原因でしょうね」

受付嬢が見ていた依頼は『ゲルバの森の子供狼の生け捕り』


「はぁ~、貴族関係の依頼は必ず何かあるのよね…」

そこに後ろから声をかける男のギルド職員。

「エリスちゃん、そんな風に言うものではないですよ」


女性受付嬢が振り向くと、さらに愚痴を言い出す。

「そう言いますけどね副ギルド長、

こういう貴族がらみの依頼、何とかなりませんか?」


副ギルド長は、困った顔をしながら受付嬢をなだめる。

「でもね~、貴族関係の依頼は報酬が確実なんだよね~

どこかの商会の依頼なんて、いつも報酬が滞ってるって文句ばかりだし」


「それは、ルジリオ商会のケチ爺に直接言ってください!」

「まあまあ、エリス先輩」

横からなだめに入った後輩の受付嬢。


「ユウナちゃん、私の言ってること間違ってる?」

「いいえ、先輩の意見はもっともですけど…」

「ですけど、何よ」


後輩受付嬢は、周りを見渡して答える。

「その意見は、ここで言うことではないですよね…」

「う…」

エリス受付嬢は、周りを見て顔を赤くしスタスタと受付カウンターの中に入っていった。


ユウナ受付嬢も、1回お辞儀をすると受付カウンターの中へ入っていった。

そして、副ギルド長は依頼書を見てからギルドの奥に入っていく。

「やれやれ…」




しばらくして、ギルドに冒険者が入ってくる。

それは大きな男と小さな女の子のパーティー、別名『ドラゴン親子』だ。

ランクAの冒険者パーティーで、赤い狼こと『レッドウルフ』が出たことにより


助っ人兼救助のために出ていた。


大きな男が受付に報告に帰ってきたようだ。

「おかえりなさい、バストールさん。

ケニーたちのパーティーは、救出できましたか?」


応対を受けた受付嬢エリスは、大きな男バストールに成果を聞いてくる。

それに苦笑いを浮かべたバストールは、困ったように答えた。

「それがな、俺たちが到着した時には戦闘は終わっていた」


「え、それじゃあケニーたちは…」

「いや、ケニーたちのパーティーは無事だ。

ただ、彼女たちの話では赤い狼に見逃してもらったとか言っていたな」


受付嬢のエリスは、信じられないというように驚いている。

その会話に横から入ってきたのが、後輩受付嬢ユウナだ。

「魔物が、見逃したんですか?冒険者を?」


「ケニーのパーティーの話では、そうらしい」

エリスはバストールに、状況説明を求める。

「あのバストールさん、ケニーたちから聞いた状況を詳しく話せますか?」


「ああ、まあその報告も兼ねてここに来たんだがな。

で、ケニーたちの話だと……」


バストールは、ケニーたちが依頼を受けて森の奥へ入ったところから詳細に

聞いておいた話を報告した。

勿論、赤い狼との死闘も話し、その結末も話し終える。


「…その話が本当なら、赤い狼を助けた謎の何かがいるってことですよね?」

「先輩、何のために赤い狼を助けるなんて…」

「ユウナちゃん、あったでしょ?掲示板に原因の依頼書が…」


「ああ!『ゲルバの森の子供狼の生け捕り』依頼!」

「そう、貴族が出した問題依頼よ。

娘のテイムの練習に使うとか何とかでこんな依頼を出して…」


「せ、先輩、顔が怖い…」

「この顔は生まれつきよ!」

見ていられなくなったバストールは間に入って、話を戻す。


「それで、依頼がどうかしたのか?」

「…実はその依頼のことをしつこく聞いてきた冒険者たちがいたんです」

「それは、ケニーたちのパーティーじゃないのか?」


「いいえ、ケニーたちの受けた依頼は森の奥には行くけど別の依頼です。

赤い狼が関わってくることなんてないはずよ」


「では、別の冒険者たちか…」

「先輩、その冒険者たちはどんなことを聞いてきたんです?」

「確か、報酬とどこの貴族の依頼かを聞いていたわね…

ってまさか……いえ、あのパーティーならあり得るかも……」


「どうしたんですか?先輩…」

ユウナは、いきなり考え込み始めた先輩受付嬢を心配している。

「ん?何、ユウナちゃん」


「いえ、いきなり考え込み始めたんで心配になって…」

「ああ、ごめんねユウナちゃん。

バストールさん、おそらくギルドを通さない直接交渉を依頼者として

報酬を上げさせる気だったんだと思うわ」


後輩受付嬢の顔色が悪くなり

「先輩それって、ギルド契約違反じゃ…」

「ええ、立派なギルド契約違反。犯罪よ、犯罪」


「では、その冒険者たちを探しに行かないといけないのかもな…」

「……おそらく生きてないと思うわ」

「先輩、もしかしたら生きているかもとは…」


「俺もその冒険者は生きていないと思うぞ」

「バストールさんまで…」

「ユウナちゃん、いい?

ケニーのパーティーは別の依頼で森の奥に行ったのよ?


なのに赤い狼に襲われている、これは欲深い冒険者たちが独断で子供狼を

捕らえようとして、間違って赤い狼の子供をさらってしまった。

怒った赤い狼は、冒険者を襲い子供を取り戻そうとした所へケニーたちが鉢合わせ


また冒険者が来たかと赤い狼はケニーたちも襲った。

そして、あとはバストールさんの報告通りといったところね」


「先輩、すごい予想です。私も合っている気がしてきました」

バストールは苦笑いを浮かべて、

「その予想を確実なものにするためにも、その欲深い冒険者を発見しないとな」


「いいの?森の奥に入ることになるし、

その冒険者がどこにいるのかもわからないけど…」

バストールはニッと笑って

「そのためのランクAだろ、まあ体力仕事は任せておけ。

その代わり、報酬はよろしく頼む」


「いいわ、ギルド長をおだてて何とか出しておくわね」

その言葉を聞くと、バストールたちはギルドを出て行った。


「先輩、ギルド長に報告に行くんですか?」

「勿論よ、犯罪者を見過ごせるわけないでしょ?」



2人の受付嬢は、ギルド長と副ギルド長に今回のことを報告し依頼料を出させた。

また、この2日後森の奥で6人の冒険者の遺体をバストールたちが確認。

ギルドカードを提出させて、ギルド違反者として処分された。


さらに、この子供狼捕獲依頼は即刻廃棄依頼にされ

依頼者の貴族から苦情が来たものの、冒険者死亡の話を聞かせると

苦虫を嚙み潰したような顔をして、依頼を取り下げた。


娘の依頼で死人を出したとしたくなかったようだ。

そして、この件で冒険者たちへギルドを通さない依頼について

厳重注意がなされた。




受付嬢エリスは、カウンターに座り考えている。

「先輩、また怖い顔になってますよ」

「生まれつきの顔よ、ほっといて」


「それで、何を考えていたんですか?」

「子供狼の件で、1つだけ謎が残っているのよ」

「謎ですか?」

後輩受付嬢ユウナは、かわいく傾げる。


「…赤い狼を助けた奴の正体よ」

「う~ん、どんな奴なんでしょうね~」

「分からないから、こんなに考えているのに…」



2人の受付嬢の話し合いを離れたところから見ていた副ギルド長は、

「今日も、平和だな」







ここまで読んでくれてありがとう。

これから1日1話に変わります。

これからもよろしくお願いします。


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