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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第50話 何年か後のお別れ




ブロトール学園主催のダンジョン体験ツアーは、一応成功した。

学園の参加生徒全員がダンジョン25階層へ到着し、

誰一人、途中棄権はなかったのだから。


何人かの生徒は、ちょっとしたトラウマを持ってしまったが、

それでも体験ツアー後、生徒はダンジョンへしばしば出入りしている。


また、今回全面協力した冒険者ギルドは

例の女の子事件が、この体験ツアー後、急速に収束していったことに

戸惑いと多少の混乱をしたが、ダンジョン内の例の女の子目撃階層で


宝物の採取が可能になったとの報告と確認を行い、事件解決と発表したのが

体験ツアーが終わって半年後のことだ。




そんないろんな意味での体験ツアーが終わった3年後、

世間での話題と言えば、エリザベスの学園卒業と同時に結婚ということか。

アンナたちも15歳という結婚できる歳となり、


いろいろ周りの大人がうるさくなっていた。

そんな中でのエリザベスの結婚は、大きな話題であった。



ちなみに、この世界では16歳が成人年齢で15歳が結婚可能年齢だ。

昔は12歳ぐらいで結婚なんてあったが、妊娠、出産での死亡率が高く

勇者神話の時代に、勇者たちから強く抗議があったため


だんだんと年齢が上がって、今の15歳で落ち着いたそうだ。

まあそれでも、勇者たちからすればまだ年齢がと文句もあったようだがと

京花が俺に話してくれた。



さて、今俺は遺跡の京花のところにお邪魔している。

なぜなら、ネコの俺が捨てられることが決定したからだ。

…捨て猫決定!


アンナのとこのメイドたちの話では、

アンナの一番上の兄が、父親とともにどこかの地方領主になるそうだ。

また、アンナの姉たちは全員が結婚して家から出ていて


唯一残っていたアンナも、婚約が決まり学園卒業と同時に結婚するそうだ。

…あの幼かったアンナが結婚、時がたつのは早い。

で、アンナが結婚すると俺は一緒に連れていくことはできない。


しかも、アンナが家を出ればアンナの家族は地方領主になるため王都を離れる。

俺は王都を離れたくないので、姿をくらませる。

俺、旅立ち!



ダメだ、変な考えしか浮かばない!

まあ、しょうがないのかもしれないな。

ここのところ、アンナは婚約者の彼に夢中みたいだし。


俺が1週間、無断外泊をしても気にされなかった。

…なんか寂しいような、アンナの成長がうれしいような。

とりあえず、俺は大人だ。アンナのことは笑顔で見送ってやろう。


そして、アンナの家族の出世に祝福を!




そんな悶々とした生活から1年、ついにこの旅立ちの時が来た。


今俺は、教会から出てきた2人を屋根の上から眺めている。

勇者神話の頃に確立した結婚式を終えた2人。

教会から出てきたところを、友人や家族に祝福され夫の領地へと旅立つ。


…アンナ、きれいになったな~

ネコなのに涙が止まらない!

アンナたち夫婦は、王都での夫の家に行き1泊して領地へ旅立つみたいだ。


アンナの家族も、王都で1泊して領地へ旅立つそうだ。

これで、俺はアンナのもとから旅立つことになった。

俺は屋根の上から王都の町を眺めながら、こんな『さよなら』もあるんだな~と


涙をぬぐっていた。

…さて、京花に慰めてもらおう。

あそこには、ホムンクルスたちもいるから寂しくないと思うし。



ダンジョンを目指して歩いていると、後ろから声をかけられた。

「ケロちゃん、どこ行くの?」

俺はその聞き覚えのある声に振り替えると、そこにはいつもの姿のアンナがいた。


…着替えたのか? それにしても早すぎるだろう…

「ニャ~」

「フフフ、教会から屋根の上にいたの見えたよ。

だから、こうして探しに来たんだよ?」



無茶するな~、貴族なのに護衛とかどうなってんだ?


……ん~、もういいかな。

『アンナ、結婚おめでとう』

「! ケロ、ちゃん?」


『ああ、いつのころからかこうして念話をして意思疎通ができるようになった』

アンナは、俺の前にしゃがむと手を伸ばし、俺を抱きかかえる。

「すごいよ、ケロちゃん。

私、ずっとケロちゃんとお話してみたかったんだよ」


『それなら、話せるようになってすぐにアンナに話しかければよかったかな』

アンナは俺を撫でながら「うん」と返事をする。


『それで、どうしてここに?』

「ケロちゃんを迎えに来たんだよ、一緒に行こう?」

アンナは不安そうにのぞき込む。


『…王都に用事があるから、いけないよ』

「そう、なん、だ……でも、ケロちゃんと離れるの、分かってた…」

アンナの目に涙があふれ始める。


「最近、全然、帰ってこないし、彼女でも、できたかな、って…」

アンナの腕の中から、俺は飛び降りる。

「あ…」


『アンナ、俺は王都に残るだけだ。お別れじゃないさ』

アンナは涙を流しながら、黙っている。

『それに何かあれば、迷子の時みたいにそばに駆けつけてあげるよ』


「ケロちゃん……」

アンナは涙を流しながら、笑顔を作る。

俺は、そんなアンナにある魔道具の腕輪を投げて渡す。


「これ、は?」

受け取ったアンナは、困惑している。

『それを腕に嵌めておいてくれ、アンナが困ったときそれに手を当てて願うと

俺が召喚される仕組みだ』


「これって、魔道具、なの?」

『俺の友人が作ってくれたものだ。

俺からの結婚祝いだな、どうしても困ったことがあったらそれで側に呼んでくれ』


アンナは腕輪をつけると、笑顔でお礼を言ってくれる。

「ありがとう、ケロちゃん。……幸せになれるかな?」

『アンナなら、なれるさ。だから、また会おうな』


「うん、またね、ケロちゃん」

こうして、この日、俺はアンナたちのもとから旅立った。







ここまで読んでくれてありがとう。


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