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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第48話 遺跡の主




ダンジョン23階層から遺跡に入った俺は、ムツミの案内で

ホムンクルスの心臓部を訪ね、そこにあった秘密に驚かされた。


そして、遺跡にいるホムンクルスの主に会えることになり案内されている。



ホムンクルスの心臓部ともいえる部屋から

初めて遺跡に入ってきた場所へ戻り、道を変えて遺跡の主に会いに行く。

別の道の遺跡もまた、すごい作りになっていた。


地面の道は石畳となっていて、水にぬれても滑らないように

所々、デコボコしている。

しかし、壁の模様は、ホムンクルスの部屋へ向かう場所とは違い


シンプルに白一色だった。

だが、天井は見事だな。

この道も天井は高く、いろいろな姿絵が描かれていて神秘的だった。


中でも、地球の影響だろう『天使』の絵が一番多かったように思える。

また、『女神』の姿絵もあり美しさと神秘的さを演出していた。



俺はふと疑問に思ったことを、前を歩いているムツミに聞いてみた。

『なあ、ここは建物の中なのか?』

ムツミは歩きながら振り返り


「そうだ、ここは遺跡の町の中心にある庁舎のようなものだ」

『ダンジョンは、本当に遺跡の中心を襲ってきたのか…』

俺は、ネコの姿で歩きながらキョロキョロと周りを見て呟く。


「ダンジョンは、この庁舎を貫き町の一部を呑み込んで成長している」

ムツミは淡々という。

「そのおかげで、この庁舎の一部が使えなくて困っていたところだ」


『……町は良いのか?』

「この町に人は住んでいない、200年ほど前に勇者たちが亡くなってからは

主を残し、町に生きているものはいなくなった」


『ん? 勇者の家族とか仲間がいたんじゃ…』

「勇者たちの家族や仲間は、700年ほど前に亡くなっていなくなった。

それからは、勇者たちのみとなりこの町は遺跡へと変貌していった」


俺は、この町の滅亡を淡々と話すムツミを見て悲しくなった。

ホムンクルスは、感情を持つことができなかったのかと…


勇者たちの安住の地であるはずのこの町が、

最後は勇者に寂しさを与える街になるとは、不死というスキルは考え物だな。

…俺も、本気で生き方を考えよう。



10分ほど歩いた廊下の先に、大きな3メートルぐらいの扉がある。

ムツミは、扉の前で止まるとノックをしてから声をかけた。

「ムツミです、例のネコをお連れしました」


すると、中から女性と思える高い声が聞こえた。

『どうぞ、入ってくださいな』

ムツミは、声を聴いてからドアを開け自分がまず入り、俺を招き入れる。



俺は、少し緊張しながら中へ入ると

そこは、天井いっぱいに空の絵が描かれていた。

青い青い空、白い雲が少ししかなく本物のような空だ。


下は緑の絨毯が敷かれていて、まるで草原のようだった。

俺が、部屋をキョロキョロと見れば

大きなベッドが、草原の中にあるような錯覚を覚える。


他にもいろいろとあるのだろうが、あまりにも部屋のインパクトが強すぎる!


「ようこそ遺跡へ、ネコ君。それとも名前があるのかな?」

部屋のインパクトに気をとられていた俺は、ムツミの横にいる人に

気づくのに遅れた。


少し薄い黒の髪を後ろで束ねてポニーテールにしている、

どう見ても18歳ぐらいの女性がそこにいた。

顔はまさに日本人の可愛い系の顔で、どこかのアイドルに似ている気がする。


服は、この世界の服で顔と服とのバランスが微妙だ。


この女の子がこの遺跡の主か…

『今は、ケルベロスと名をつけられているよ』

「クフフ、ネコなのに犬とはこれいかに。

確かに、ムツミの報告通り喋れるネコとは1000年以上生きてきて初の体験だ」


こちらを興味深そうに、じろじろと見るムツミの主。

『…自分は名乗らないのか?』

「おっと、これは失礼。

1000年以上自分の名前を名乗ることはなかったからね~」


ムツミの主はおどけて言うが、ムツミから怒られる。

「主様、自己紹介はコミュニケーションの基本ですよ」

「こほん、私の名は……え~と……ん~……すまない、ちょっと待ってくれ」


ムツミが、すごい目を細めて自分の主を見ている。

ホムンクルスが感情を顔で表現しているぞ。


…しかし、自分の名前を忘れるのか。

これも不老の弊害かな?



「あ、思い出した。

私の名は、上条京花。年齢は1000歳以上だ。

スキル『不老』のおかげで今日まで生きながらえているよ」


俺は、ムツミを見て彼女の名前があっているか確認した。

『彼女の名前はあっている?』

ムツミは、俺に頷いて答えてくれた。


そのやり取りが気に入らなかったのか、京花は拗ねてしまった。

「200年以上自分の名前を言う機会がなかったんだから、こうなるよ」

そういうと、プイっと横を向いた。


『聞きにくいんだが、他の勇者と違って京花はなぜ生き残っているんだ?』

眼だけをネコに向けると、

「…それは、私が精神耐性をカンストさせているからよ。


どんな精神攻撃もつらい出来事も乗り越えられるけど、

皆が亡くなっていって私一人になった時は、この耐性を恨めしく思ったものよ」

『…そうか』


京花は、俺が少し落ち込んだのを見て笑顔で答える。

「でも、あなたみたいなネコに会えたことは生きていてよかったと思えることね」

『そうか』


「それで、私に会ってどうするつもりだったの?」

京花が俺の前にしゃがむと、質問してくる。

『ああ、実はな…』








ここまで読んでくれてありがとう。


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