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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第44話 意思疎通と遺跡




ダンジョン23階層。

アンナたち学園の生徒や、学園の生徒を護衛している冒険者たち

さらに、援軍として降りてきた冒険者たちなど


23階層の入り口は、大勢の人がいる中

学園職員の女性は、冒険者の人たちと相談した結果

学園の生徒たちを上の22階層へ避難させることにしたようだ。


「皆さん、この階層にいつまでも留まるわけにはいきません。

上の22階層に休息所を作りましたから、そこへ移動してください」

そう大声で、アンナたち学園の生徒に知らせる。


アンナたちもこの階層にいても足手まといなのは理解しているので、

冒険者の人たちのためにも、移動しようとしたとき


全身傷だらけで、盾を構えた冒険者が1人後退してきた。

「ヒッ!」

学園の生徒の1人が驚きのあまり、声を上げる。


冒険者たちは、すぐに学園の生徒の前に立ち生徒たちをかばうように

戦闘態勢をとる。

アンナたち学園の生徒は、ついに例の女の子を目撃した。



盾を構えた冒険者の先に、ショートソードを右手に持ち

銀色の髪を後ろで1つにして結び、戦いの邪魔にならないようにしている。


服は、平民がよく着ているであろう一般のもので

上はブラウス、下はスカート。そこに靴下と靴を履いている普通の女の子。

また、鎧は一切着けておらず盾すら持っていなかった。


ただ、自分たちと違うと一目でわかる特徴が『目が赤く光っている』だった。


「あの子が、冒険者の間で噂になっている例の女の子…」

リニアが呟き、その赤い目を目撃して背筋が寒くなった。


「フローラたち護衛は、学園の生徒を上の階層へ上げろ!」

盾を構えていた冒険者が、自分の後ろをチラッと見て声を上げた。

「ザック、そんな傷だらけで私たちに後退しろと?」


フローラの側で剣を構えていた冒険者が、少し怒りを言葉に込めて言う。

「護衛は、護衛対象の安全を最優先に確保する。

護衛依頼の鉄則じゃなかったっけ?」


その言葉に、護衛冒険者は額にしわを寄せる。

「……わかったよ、すぐに学園生徒を上の階層へ!

ザック、すぐに戻ってくるからな! 死ぬなよ!」


盾を構えた冒険者ザックは、苦笑しながら答える。

「ダンジョンの奥には、重傷を負った仲間がいるんだ。

あいつらを助けないで、死ねるかよ……」



護衛冒険者たちは、すぐに学園の生徒たちを誘導して上の階層へ移動しようとしたとき

例の女の子が、左手を目の前にいる冒険者や学園の生徒に向ける。

「! まずい、魔法を使う気か!」


【星の足かせ】


「!!」

アンナは自分の体がいきなり重くなった感覚になり、膝をつく。

「な、何これ…」


自分が重くなって動けない感覚を味わいながら、周りを見てみると

その場にいる全員が、膝をつき動けないでいるようだ。

冒険者の人たちも、あのフローラでさえ顔を苦痛に歪め立ち上がれないでいる。


「…これで、動けない、でしょ」

その言葉は、ここにいる全員が見つめる先の例の女の子から発せられた。

「あ、あなた、何、ものな、の…」


フローラは、重力の重みに耐えながら質問する。

「…私は、ムツミ。6番目に、造られた、ホムンクルス、だ」

女の子の告白に、衝撃を受ける魔法使い系冒険者たち。


「ホムンクルス、と言っ、たら、錬金、術の最高、作品…」

「まさか……完成、させた、奴が、いたのか…」

「う、動け、ねぇ…」


何とか動こうともがく冒険者もいるが、重力に押しつぶされて動くことができない。




しかし、このムツミというホムンクルス。

さっきから、重力の影響を受けているわけでもないのに

まともにしゃべることができていない。


俺は、アンナの影の中から声だけを聴いていたのだが不思議に思った。

しかし、飼い主であるアンナのピンチ!

ここはさっそうと影から飛び出していき、助けるパターンだなと。


しかし、ただのネコにそんな甲斐性などなく、ただ状況を見守るだけだった。

おれって、ヘタレだな…




重力に抵抗しながら、フローラは考えていた。

(このムツミというホムンクルス、意思疎通ができる…

そう言えば、例の女の子と会話をしたなんて冒険者は聞いたことなかったわね…)


「ならば、ムツミ、だっ、け? なぜ、私たち、を、おそう、の?」

ホムンクルスのムツミは、フローラに顔を向けると

「遺跡の、宝物を、奪われないために」


(遺跡の宝物? 奪う? どういうことなの?)

フローラは、さらに情報を聞き出すために会話を続ける。

と、その時、フローラにかかつていた重力魔法が解けた。


「え?」

「これで、まともに、会話ができる」

(会話をするために、私だけ重力魔法を解いたのか…)


フローラの周りの人たちは、いまだに重力魔法によって膝をついている。

(私との会話で、みんなを助けることができるかもしれないし

このムツミというホムンクルスの謎が解けるかもしれない…)


「ありがとう…、ところで、遺跡の宝物とはどういうことなの?

私たち冒険者が狙ったのはダンジョンの宝物のはず…」

「そのダンジョンの、宝物が、遺跡の、宝物、なのだ」


「…詳しく説明してくれるかしら」

「どんなことを、説明して、ほしい?」

「まず、遺跡ってこのダンジョンにあるの?」


フローラは、少し怖がりながらも赤い目の光るムツミを見つめて質問する。

「ある。遺跡は、このダンジョンの、誕生とともに、呑みこまれた」

「…呑み込まれた?」


ムツミは頷くと

「このダンジョンの、入り口を、覚えているか?

洞窟、ダンジョンなのに、入り口は、違って、いるだろう」


「…確かに、このダンジョンの入り口はどこかの遺跡って、それじゃあ!」

「そうだ、このダンジョンは、遺跡に、絡みつくように、誕生した」



…ダンジョンって、一種の魔物じゃないかって説があるが

これを聞くと、たちの悪い魔物って感じだな…






ここまで読んでくれてありがとう。


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