第40話 体験企画者
迷宮都市『ダルニア』のダンジョン第7階層。
アンナたちは、今日1日でここまでたどり着くことができた。
ダンジョンの魔物は、階層ごとにだんだんと強くなってはいるが、
倒せないことはないし、ダンジョン内に仕掛けられた罠も
護衛のフローラやレナがいれば、クレアでも処理することができた。
また、各階層の階段下にはギルドが設置した休息所があり
冒険者ギルドの依頼で、そこに冒険者を何人か配置していた。
そして、7階層の途中にある安全地帯に
冒険者ギルドの冒険者と一緒に学園の先生がいた。
「シャララ先生、こんなところで何をしているんですか?」
冒険者と話をしていたシャララ先生は、アンナたちの方を向くと
「私たちは、この休息場所を確保しているのよ」
と質問に答えた後、アンナたちの班の全員の無事を確認して
「ここまでよく頑張りました、
今日はこの奥で野営をして次へ進んでもらいます。
他の生徒たちの班も、ここで野営して行くからあなた達も準備して休むように」
アンナたちが奥の広場を覗くと、10ちょっとのテントが見える。
「ホントだ、結構この場所にいるのね…」
ローリルはすでにいる他の生徒たちを確認して、感心していた。
「ほら、あなた達も中へ入ってゆっくり休みなさい。
休めるときに休んでおかないと、明日持ちませんよ」
アンナたちは「は~い」と返事をして奥に入っていく。
そして、シャララ先生の言葉通り
護衛の冒険者に質問しながら野営の準備をしていった。
簡単な夕食を終えて、明かりの周りにみんな集まって今日のことを話し合う。
「みんな、どうでした? 今日ダンジョンに始めて潜ってみて」
エリザベスが紅茶を飲みながら、みんなに質問してみる。
「そうね、ダンジョンに入ったばかりの時は怖かったけど
皆と一緒に進んでいくにつれ、怖くなくなったね」
「うんうん、アンナちゃんの言う通り。
私も最初、ダンジョンの魔物が怖かったけど今は平気だよ」
アンナとリニアが笑顔で答える。
「あと、階層ごとに冒険者がいるのが気になったけど…」
サラは、フローラとレナを見て気になったことを口にする。
「ん、あれはギルドの依頼で各階層の入り口に常駐してもらっているのよ」
「学園の生徒たちの安全のためにね」
サラは、質問の答えに「そうなんだ~」と納得したようだ。
しかし、今回の学園のダンジョン体験ツアーはかなり大がかりだな。
そして金も人もかかっている。
俺が考える限り、通常こんなダンジョン体験なら日帰りにすると思う。
ダンジョン内での野営を取り入れても、安全階層までがせいぜいだろう。
今回ならば、例の女の子の目撃情報のあった階層なんかは避けるはずだ。
「ねえ、エリちゃん。このダンジョン体験って王様が企画したの?」
クレアが、いきなり俺の思っていたことを質問したのには驚いた。
「フフフ、そうですわ。
このダンジョン体験を企画したのは、私のお父様である陛下ですわ」
「…そうなんだ」
「よくわかりましたね、クレアちゃん」
「だって、このダンジョン体験、お金も人もかかりすぎだよ?」
そのクレアの指摘に、他のメンバーもようやく気付き始めた。
「確かに、クレアちゃんの言うとおりだね」
「冒険者の人たちや学園の先生たちが、総出でこのダンジョン体験に参加してるし」
皆の疑問に答えるように、エリザベスは語り出す。
「皆さんは、ダンジョンの恩恵というものをご存知ですか?」
アンナたちはお互いの顔を見合わせながら、横に顔を振る。
「『ダンジョンには、黄金が眠る』かつての勇者神話の時代に
ある勇者が言った言葉です。
その勇者は、ダンジョンにある数々の未知の魔道具や
ダンジョンの魔物の素材を使って、国を造ったとまで言われました」
アンナたちは静かに、エリザベスの話を聞いている。
「ダンジョンにはいろんなものが眠っているのです。
私の父はそれを国のために使おうとこの迷宮都市を作りました。
ですが、それと同時にダンジョンで命を落とす冒険者が増えてしまいました。
なぜかと、父は考えダンジョンに対する経験が足りないのでは
という結論になったそうです。
そこで、学園卒業者の半分が冒険者になるのならと今回の企画となったわけです」
「…なんて言うか、すごい企画を考えたんだね、王様」
サラは、感心しているようだが
アンナたち他の者は、呆れるのと王様のムチャぶりが顔を引きつらせていた。
勿論、俺は影の中で大笑いさせてもらいました。
よく、こんな企画に家臣たちが賛成したものだ。
たぶん家臣たちも呆れながら、陛下の企画だしとしょうがなく実行したんだろうな。
エリザベスは、少しほほを赤くしながら反論する。
「わ、私だって、このような企画反対でした。
でも、お兄様たちがダンジョンは国を豊かにするからとおしゃるから…」
「わ、私はこの企画面白いよ。ダンジョンなんてこんな機会でもないと入らないし」
「リニアちゃん…」と、エリザベスは感動している。
「そうだよ、エリちゃん。さ、もう寝ようよ、明日も頑張らないと!」
アンナの言葉に感謝しつつ、みんなで就寝となった。
なるほど、国を豊かにか。
王様の周りの本音はそこだろうな、ダンジョンで手に入る魔道具などの恩恵。
かつての勇者がダンジョンで国を作ったほどの財産。
それでギルドも全力でバックアップってところか。
例の女の子の件が片付いていないのに強行したのは、中止や延期にするには
費用も人もかかりすぎたからか。
なんか、変な思惑が見えてきたな……
ここまで読んでくれてありがとう。




