第4話 森の中での実戦
何かくすぐったい…
「ニャフ~」
目を覚ますと、目の前に馬の顔があった。
どうやら、藁の中で寝ていた俺に顔を近づけてちょっかいを出していたようだな。
いたずら好きな馬め!
とにかく、今日は森に行ってレベル上げだ!
藁の中から出て、馬小屋から外へ出ると朝の喧騒が聞こえてくる。
今日もいい1日になるといいな~
馬たちと別れて、今日こそは外に出ようと門までやってくる。
いろんな人たちが行き交っているな。
大きな荷物を馬車に積み込んで、外へ移動する商人さんかな?
その周りにいるのは、護衛の依頼を受けた冒険者のパーティーだろう。
う~ん、新人冒険者は見た目でわかるな。
まず、格好が違う。さっき護衛についていた冒険者とは、明らかに違いが分かる。
お、あれは子供だな。
門の外には子供も通っていくのか…
おっと、俺も外に出て目的を果たさなくては…
いろんな人が通り抜けていく門の端を、俺も同じように走り抜けていった。
初めて町の外に出たが、いい景色だな。
舗装とは名ばかりの街道、そこを進む馬車や人々。
また、町に入っていく人たちもいる。
そんな中で、冒険者のパーティーが草原へ進んで行ったり
その奥にある、森に入っていったりしている。
俺もそんな冒険者たちの後をついて、森の中へ入っていく。
森の中は、草原の場所とは違い涼しく少し暗くなっていた。
日の光が遮断されているのだろう。
冒険者の後をついて行きながら、適当な木を探し登ってみる。
勢いと風魔法で木に登ると、枝から下を見下ろすと結構高いな…
俺がついていた冒険者は、俺が木に登っている間にさらに奥へ進んでいった。
この場所で、のんびりと魔物を待ってみるかな。
それにしても、この場所は高い位置にあるせいか日の光が時々入ってくる。
ネコだからか気持ちいいぐらいに眠くなるな…
とりあえず、眠気に負けることなく魔物を待たないと…
ん? あれは毎度おなじみゴブリンか?
緑色の体に、小学生かと思える小さい身長。
間違いないな、こん棒や錆びている剣を持っている。
では、木の上から攻撃を仕掛けてみるか。
「グギャ」「ゲギャギャ」「グギャガ」
う~ん、ゴブリンの言葉はわからないままか…
【ウィンドカッター】
真空の刃が、3体のゴブリンの首を一瞬のうちに切り裂く。
これには、ゴブリンたちも何が起きたか分からずに絶命したのだろう。
そのまま、人形のように崩れ落ちた。
お、体が少し暖かい。これがレベルが上がったということか。
ここは確認のために『ステータス』を見てみる。
レベル 10
生命力 100
魔力 2000
レベルがいきなり10になってる。
生命力や魔力の上がり方もすごいな…
ゴブリン3匹で、この上がり方ということはネコにとってどれだけ脅威なんだよ!
魔力の上がり方が多いのは、職業に魔法使いとある所為だろうな。
この調子で、どんどんレベルを上げていくか!
だいぶ日が傾いてきたみたいだな。
この木の枝から草原のあたりにいた冒険者たちが、町へ帰っていくのが見えた。
俺はこのまま、木の枝の上で夜も過ごしてレベル上げだ。
その時、森の奥に行っていた冒険者の3人が草原へ飛び出していった。
何だ?! 草原へ飛び出した冒険者たちがこっちを見つめている。
いや、森の奥を見ているんだ…
…なんだ、この威圧。
俺が木の上の枝で、森の奥から出てくる魔物を見つめていた。
狼だ… それも赤い毛並みの狼…
「なんで『レッドウルフ』がこんな浅い森にいるんだよ…」
「まずいぞ、こいつは俺たちの手には余る…」
「しかし、ケニーとリリーは助けないと…」
ふむ、冒険者の話からこの狼は普段はこの森にはいないということ。
森の奥に、まだ2人の冒険者が取り残されているということか…
「しかし、まずはあの『レッドウルフ』を何とかしねぇと…」
冒険者たちは、文句を言いながらも剣を構えているな。
「おい、トール。お前町に走ってギルドに知らせて来い!」
「なんで俺が?! 俺はケニーとリリーが心配なんだよ…」
「バカ野郎、この赤い狼を何とかしねぇとあの2人も助からねぇぞ!」
「で、でも……」
「いいから行け!!おまえの速さであの2人の命も左右すると思え!」
お、トールっていう冒険者が町に向かって走っていったな。
……なかなか足、速いじゃん。
「やっと行ったか…」
「さあ、赤い狼!おまえの相手は俺たちがしてやるよ!」
冒険者2人と赤い狼の戦いも気になるけど、森の奥の冒険者も気になるな…
行ってみるか~
登っていた木を降りて、冒険者たちが通ってきた森を奥へ行く。
茂みをかき分け奥へ行くと、血だらけで倒れている冒険者2人を見つけた。
俺はすぐに彼女たちに近づくと、まだ息があった。
よかった、まだ生きているようだ。
でも、この出血でこのままだとすぐに死んでしまうかも…
俺は少し考えて、前足を1人の彼女の顔に載せると治癒魔法を唱える。
「ニャ~ウ」
おっと、間違えた。
【ヒール】
彼女を淡い緑の魔力がつつむと、出血が止まり傷が治っていく。
すごいな治癒魔法。効果がすごい!
…もう1人の彼女も治してやらないと。
もう1人の彼女のもとに行き、前足を顔に載せて治癒魔法を唱える。
【ヒール】
淡い緑の魔力が全身を包み、出血が止まり傷が治っていく。
これで、この2人は大丈夫だろう。
あとは、木の上から彼女たちの様子を見ておくか。
俺は近くの木に登り、下からは見えない位置にある枝に乗り彼女たちを見張る。
5分ほどで、2人とも気づいて辺りを見渡していた。
「…どういうこと? リリー、気づいてる?」
「うん、私たちのケガだよね」
2人は自分の体が無事なことを、確認しながら訝しんでいた。
「周りに誰かいなかった?」
「ううん、誰の気配もしない…」
「でも、何だろう。私の顔に何かが乗っていたような感覚が…」
「あ、それ私もそんな感じがする」
……俺の前足は、不思議素材でできているのか?
じっと自分の前足を見てみるが、よくわからなかった。
―――ガアアァァァ!
「!! この咆哮は、あの赤い狼だ!」
「ケニー、みんなを助けに行かないと!」
彼女たちはすぐに周りに散らばっていた装備を集めると、咆哮の聞こえた方へ
全速力で走っていった。
勿論、俺も木から降りて彼女たちが走っていった方向へ向かった。
ここまで読んでくれてありがとう。