第31話 学園に行くネコ
米を手に入れ食生活を大幅に良くした俺は、
久しぶりに飼い主のアンナが行っている学園に遊びに行ってみた。
学園へ向かう道では、ネコ襲撃事件以来仲良くなった王都のネコたちと
挨拶を交わしながら、アンナが学んでいる学園『ブロトール学園』に向かう。
王都に数ある学校の中でトップクラスの学園だと、メイドたちの間で言われてて
アンナの姉妹全員が同じ学園で学んでいた。
また、貴族中心かと思いきや平民でもこの学園に通える子供はいる。
アンナが学園に入学してから、ずいぶんと経ったが友達はできたかな~
王都の建物の屋根の上を歩きながらそんな心配をしていると
目の前に、学園が見えてくる。
それは、王城の次に大きい建物だ。
王都に住む子供たちの大半がこの学園に通うことになっている。
なぜなら、このブロトール学園は、はるか昔に異世界から召喚された勇者が
王様からの褒美の1つとして建ててもらったという歴史がある。
…俺は信じてないが…
異世界から召喚された勇者が、学校のことを考える…
たぶん、誰かの頼みだったという方が俺は納得する。
とにかく、この学園は由緒正しい学園なんだということだ
……ってメイドたちが言ってました。
そんな学園に、異世界から転生してきた俺はネコの姿で遊びに来た。
この学園に来たら、まず尋ねる場所が…
「…あのね、ケロ君。
この学園に来たのなら、まず、飼い主のところへ行きなさいよ」
『まあまあ、俺とシャーロットの仲じゃないか~』
シャーロットは椅子に座り本を読む手を止めて、俺を睨んでくる。
「…どんな仲なのよ…」
俺は、この学園に遊びに来たときはまずシャーロットのところに行き
赤いネコのレガルド一家にも挨拶している。
あのネコ襲撃事件から、レガルド一家はこのシャーロットが引き取ることになった。
それは、レガルドがシャーロットの召喚獣として活躍する条件の1つだ。
まあ、家族が何かあった場合、心配であんな行動をしてしまったんだから
この条件はしょうがないだろう。
『そういえば、この間『ホムラ村』に出かけたんだよ』
シャーロットが驚いて食いついてきた。
「『ホムラ村』って確か、黒いゴブリンの出たところでしょ?」
『よく知ってるな』
胸を張ってシャーロットが威張ってる。
「この何日かの主だった出来事は、よく知ってるわよ」
『情報通の食堂のおばちゃんか?』
「…なんで、学園にたまにしか来ないのにそんなこと知ってるのよ」
『俺の情報源は、メイドさんなのだ~』
「メイドは情報交換をよくしているから、何でも知っているのよね…」
『シャーロットのメイドのニーナは、違うのか?』
シャーロットが苦笑いを浮かべる。
「ニーナは食堂にいることが多いの、
だから、私の情報源はニーナが食堂で聞いてきた情報ね」
『…なるほど』
「それで、黒いゴブリンってどうだったの?」
『確か、一緒にいた冒険者の話だと
『狂乱』というスキルが関係しているらしいぞ』
シャーロットは腕を組んで考え込む。
シャーロットの場合、腕を組むと胸を強調しているように見えるな。
大きいから、余計にそう見えてしまう……。
「う~ん、『狂乱』スキルで黒いゴブリン?
確か、図書館のスキルに詳しい本には『狂乱』は
所有者の外見は変えないと思ったけど…」
シャーロットの話では、『狂乱』スキルは所有者が使用した場合
力、体力を大幅に底上げし、知識や知恵を低下させて目の前にいる敵にだけ
意識が集中するらしい。
また、体には大きな変化はなく緑の体が黒く大きくなることはないそうだ。
オーガが『狂乱』スキルを使った場合は、
血の巡りが早くなり全身が赤く変色するそうだが、それは全身の感覚を向上させ
敵の位置をすぐに感知するためだとか。
…だとするなら、あの黒いゴブリンとは何だったのか?
『…なんだか謎が残っちゃったな』
「ここには生物実験の資料もあるから、そのうちに調べてみるわよ」
『おお、それはありがたい。
何かの前触れなんて嫌だから、助かるぜ~』
「…私だって、いやよ」
シャーロットとその後、雑談を少し交わしてその場を後にする。
次に向かった先は、アンナの部屋だがこの時間は校舎の方にいるか…
では、校舎へ向かおう~
実は、この学園には俺以外のネコの出入りはあまりない。
なぜなら、召喚術を勉強している生徒がいるためだ。
シャーロットが赤いネコをテイムしたように、この学園に入り込んだ動物は
テイム実習で利用されることが多い。
そのため、王都の動物たちはこの学園に寄り付かない…
今では、テイム実習で使う動物を学園の外から運び入れているらしい。
今の一番人気は、フクロウだそうだ。
こんなものにも、流行があるんだな…
そんないらない情報を頭で思い出していると、
アンナの勉強している教室の前に到着した。
俺は教室の後ろ側の窓から中を覗くと、たくさんの生徒が授業を受けている。
教室の前には、女性の先生が立っていて黒板に何か書いている。
…異世界に、黒板か~
何か懐かしいな~
前世は46で死んだからな。学校行ってたなんてもう何十年も前のこと。
ほんと、涙が出るほど懐かしい。
黒板をよく見ると、今は算数の授業のようだ。
確か、異世界物の小説なんかでは異世界の算数は地球と比べると遅れているらしいとか。
確かに、黒板の問題とかはそんな感じを受けるな…
おや? こっちを見ている生徒がいるな…
よし、ここは愛想よく手を振ってみよう~
ふりふり…
おお、こっちに注目する生徒が増えたぞ?
よしよし、手を振ってあげるかな。
ふりふり、ふりふり…
おおお! 教室が騒ぎ出したぞ?
ああ、先生が教室から飛び出してきた!
まずい、ここは逃げるべし!
俺はアンナに会うことなく、教室から逃げ出した!
ここまで読んでくれてありがとう。




