第25話 商会の発見と襲撃へ
王都、ブロトール学園から家に帰るため出てきた。
あの後結局、学園の図書館には入れずベッドの上でふて寝していると
すぐに夕方近く。
シャーロットに断ってから、家に帰ることに。
「あんまり飼い主の女の子に、心配かけないのよ」
と、ありがたくもない忠告をいただき学園を出た。
そう言えば、あの親子は家族を見つけたのかな?
と考えていると、本人たちの登場だ。
……あの様子だと、手掛かりなしといったところか。
『お~い、お~い』
赤いネコの親子が俺に気づき近づいてくる。
『あんた、確か契約であの人間のところにいたはずじゃあ?』
『ああ、俺のは仮の契約だから自由が効くんだよ。
それより、家族の行方は分かったのか?』
赤いネコの親子は、そろって顔を横に振る。
『さっぱりだ、誰も知らないし分からないというだけだ…』
『ふむ、実はあそこの学園の人間が面白い情報を持っていたぞ』
赤いネコの親子は訝しげに俺を見る。
『…情報?』
『ああ、おそらくあんたたちの家族も同じだと思うぞ』
『それで、どんな情報なんだ?』
『実はな、この王都ではあんたたちの家族以外にもネコの失踪があるそうだ。
しかも、それと同じ時期に使い魔が流行り出した』
『失踪と使い魔にどんな関係が……ってそうか!』
『! いきなりなんですか父さん』
『これが驚かずにいられるか!
今回のネコの失踪は、使い魔を確保するために捕まえているってことか!』
『さすがです、魔法が使えると知恵もつくんですね~』
赤いネコの兄弟は、面白くない感じだ。
『では、その使い魔を捕まえている人間を探せばいいのか?』
『いえ、使い魔ではなくネコを捕まえている人間です』
『でも、そんな人間この王都にいくらでもいるのでは…』
『そうです、だから探す場所は商会です』
『えっと、誰を紹介するんだ?』
『…息子よ、その紹介ではなく商売や店の商会だ』
『……』
『そ、それで、商会を探すってどういうことです?』
『俺が聞いた情報だと、ネコを専門にさらって集めている商会があるそうです。
学園の魔法使いの間で使い魔としてネコを使うそうなので、
でも、そんな商会がたくさんあるとは考えにくい…
だとするならば、商会の数は多くありませんからみんなで探しましょう。
まとめ役の力を借りれば、すぐに見つかりますよ』
赤いネコの親子は、俺に頭を下げてお礼を言う。
『ありがとう、俺たちの家族のことに懸命になってくれて…』
『時間がありません、とにかくまとめ役の所へ行きましょう』
俺と赤いネコの親子は、まとめ役のいる教会へ向かった。
そこからはトントン拍子に進んでいく。
まとめ役のところで商会捜索のお願いに行くと、そこでもネコの失踪が
問題になっていてどうするか話し合っていたところだった。
また、職人街のまとめ役のところにも同じように相談に行くと
そこでもネコの失踪のことで話し合いが行われていた。
俺たちの情報は渡りに船だったようで、すぐに動いてくれた。
さらに、職人街のまとめ役と市民街のまとめ役が市場街のまとめ役に
話を通してくれて、王都で初めての3街合同で事に当たってくれた。
どうやら、王都のネコたちにとっては明日は我が身だったようだ。
捜索の規模が大きくなり、すぐに探している商会が見つかった。
王都、市民街まとめ役のいる教会。
今ここには、市民街、職人街、市場街のまとめ役3匹と赤いネコの親子3匹
そして、俺の合計7匹が情報を待っていた。
『まとめ役!』
『『『何だ?』』』
『…市場街のまとめ役、お探しの商会を見つけました!』
まあ、いつもまとめ役と呼ばれているから3匹一緒に返事したんだろうな~
と、それより商会の場所が分かったなら
『商会の場所が分かったなら、確認にいかないと』
『確認? 何を確認するんだ?』
『そうだよ、その商会に乗り込んでいけば』
『息子たち…それでは捕まりに行くようなものだぞ…』
『そうです、俺たちはネコです。
相手は人間ですよ、ネコの俺たちではかないませんよ』
『じゃあ、どうすれば…』
『そのために確認に行くんですよ。
まず、あなたたちの母娘の確認、そして人間の数の確認です。
まとめ役のお三方、集めれるだけ集めてくれますか?
暇してたり、暴れたいネコたちを』
まとめ役の3匹はお互いの顔を見合わせると、悪い笑みを浮かべていた。
『市民街のネコの勇敢さを見せてやろう』
『何をいっとる、ここは職人街のネコの強さを見せるとき!』
『…市場街のネコの狡猾さをお見せしてあげるわよ』
……なんか、燃えてるな3匹とも。
赤いネコの親子と、情報を持ってきてくれたネコがひいているぞ。
まとめ役たちと集合場所を決めた俺たちは、
赤いネコの親子と一緒に、情報を持ってきてくれたネコの先導で商会を目指した。
商会は市場街の南側にあり、奴隷商の集まるエリアにあった。
ネコ専門の商会と思っていたが、どうやら奴隷商も兼ねているようだ。
使い魔購入の入り口と奴隷購入の入り口が別々にあった。
どうやら奴隷商での知識を使ってネコを使い魔にしているようだ。
中に忍び足で潜入して使い魔のやり方を見たし、赤いネコの家族も父親が見つけた。
俺たちはいったん外に出て、まとめ役との合流地点に急いだ。
合流地点にはまだまとめ役たちは来ていなかったため、俺たちは待つことにした。
『なあ、さっき助けることができたんじゃないのか?』
『いや、それは無理だ』
『何でだよ!』
『人の数だよ、あの商会は奴隷商も兼ねているから人の数が多いんだよ』
『……どういうことだ?』
『ネコを使い魔として買いに来る客は、俺たちが潜入したところから入るが
その反対には、奴隷を買いに来た客が入るところがあった。
奴隷って結構手間がかかるみたいで、そっちに人が多く集まっていたよ。
俺たちがネコを救出しようと動けば、使い魔の方には人がいなくても
奴隷商の側から人が来てあっという間に捕まって終わりだ』
『じゃあ、どうすれば…』
『だから、数で勝負するんだよ』
俺が暗がりに顔を向けると、
暗がりからまとめ役のネコ3匹とともに大勢のネコが姿を現した。
『なるほど、ネコの非力さを数で補うのですね』
『いい手だな、この数なら面白くなるだろう』
『よっしゃ、職人街のネコの恐ろしさを人間に分からせるぞ!』
赤いネコの親子は感激しているようだ。
『皆さん、ありがとうございます!』
『礼はいいぞ、みんな他ネコ事と思えなかっただけだしな』
『それで、作戦はどうするんです?』
『そんなものはありません、
みんなで突っ込んで、みんなで戦って、みんなで開放して、みんなで逃げる、以上!』
『ぶわっはっはっは!簡単でいいじゃねぇか!行くぞてめぇらっ!!』
『『『『『おおー!!!』』』』』
こうして、救出作戦が始まった!
しかし、こんだけネコが集まるとニャ~ニャ~うるさいね!
ここまで読んでくれてありがとう。




