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ネコで異世界を生きる  作者: 光晴さん


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第23話 仮の契約




俺は今、明日ここでアンナの入学試験が行われる学園に来ている。

ちょっとした親切心、もしくは同じネコ仲間から身代わりをかって出たからだ。

あの赤いネコの親子は無事に、家族を救い出せるのかな~



…待てよ、今大事なことを思い出したぞ。

シャーロットの前を歩いていた俺が急に立ち止まったことで声をかけられる。

「? どうかしたの?」


『いや、大事なことを思い出した…』

「何よ、大事なことって…」

シャーロットが屈んで視線を下げてくる。


『夕方になったら、家に帰らなければならない…』

「あら、あなた野良ではなかったの?」

『飼い主はいるぞ、かわいい女の子だ』


呆れた顔をして俺を見るシャーロット。

「あなた、飼い主がいるのに仮とはいえ契約したの?」

『まあ、あの赤いネコの親子が困っていたからな』


「…呆れた、人が、じゃなくてネコが良すぎるわよ」

『ん~、この仮の契約は主人と離れてはいけないのか?』

「別に離れても問題ないわよ。


テイム契約には何種類かあるけど、今回のは代替えの仮契約。

本契約を結んでいるレガルドと違って名前で縛っていない仮契約は、

ある程度自由が利くのよ。


だから、飼い主のところに帰ってもいいわよ」

俺は少し考えて、答えを出した。

『ん~、なら夕方になったら飼い主のもとに帰らせてもらおう。


その代わり、朝になったらシャーロットの元に戻ってくるがそれでいいか?』

「私はそれで構わないわよ」

『では、シャーロットの部屋に案内するのだ~』


そう言ってシャーロットに、案内を促した。

シャーロットは「しょうがないわね」という顔をして自分の部屋へ案内する。




しかし、この学園は広いな。

さっきまでいた校舎裏から、校舎に入り廊下を通ってさらに別の校舎へ。

そこから、いったん外に出て学生寮の女子寮へ案内してくれる。


…俺が女子寮に入るのか~

ネコじゃなかったら、袋叩きにあって追い出されていたな!

「こっちが貴族が住む女子寮よ。左にいけば貴族以外が住む寮になるわ」


『何で、貴族とそれ以外に分けているんだ?』

「それは部屋の大きさが違うのよ。

基本貴族は従者付きだから、部屋もそれなりに大きくないといけないのよ」


『シャーロットは貴族なのか~』

「私がではなくて、父が伯爵なのよ。私は伯爵の娘に過ぎないわ」

『ほう、貴族にして珍しく上から目線ではないのだな』


シャーロットは自分の部屋に案内しながら俺に説明する。

「当然でしょ、貴族の娘ってだけで私自身が偉いわけではないのだから…」

『ふむ、そんな考えを持っているシャーロットは好感が持てる貴族だな』


「…それって褒めてるの?」

『勿論、見直したぞ!』

「まあいいわ。 ……さあ、ここが私の部屋よ」


シャーロットはドアを開けて、俺を中へ入れてくれた。

中に入った俺が見たのは、ベッドの上で枕を抱きかかえて眠るメイドの姿だった。

……なるほど、これが貴族寮の部屋の大きさか。




俺は現実逃避してしまった。

『おい、良いのか? このメイド…昼間からベッドで熟睡とは…』

「ニーナはいつもこんな感じよ、私が朝の散歩に出かけて帰ってくると

私のベッドで寝ているわ」


俺はなんて言っていいのか分からない顔で、

ベッドで熟睡しているメイドを見ていた。

『ところで、シャーロットは…「ねぇ」……ん?』


「いい加減、あなたの名前を教えてほしいんだけど?」

『おや、言ってなかったか?』

「ええ、言ってないわよ」


『それなら自己紹介をしておこう、俺の名前はケルベロス。

飼い主からはケロちゃん、と可愛い呼ばれ方をしている』

あれ? シャーロットが頭を抱えているぞ?


「ケルベロスって、勇者神話の聖獣じゃない。

どんな奴なのよ、あんたに名前を付けた女の子っていうのは…」

『可愛い子だぞ? 明日、この学園の試験を受けるみたいだが』


「え、この学園に入学してくるの?」

『確か、[ブロトール学園]と言っていたな』

「この学園じゃない、あんたの飼い主って貴族なの?」


『貴族だぞ、昔は領主をしていたがある事件の不手際で王都勤めにされたがな』

「……貴族の中で不手際の事件って言ったら『ビュルズ』で起きた事件ね。

ビュルズの前領主で貴族と言えば、クスオール家。


なるほど、あなたの飼い主は今年入学試験を受けるクスオール家の末娘なのね」

『シャーロットは、天才か?!』

「フフ、少しは見直した?」


『ああ、見直した!

だから、俺の秘密を教えておいてやろう』

「ネコの秘密って、念話だけでも十分驚いているけど?」


『まあまあ、俺の秘密はな『治癒魔法』が使えることだ』

「あのね、魔法が使える動物はめずらしいけどいないわけじゃあないわ。

それなりの発見例があるからね。

でも『治癒魔法』が使えるなんて、聞いたことも本で見たこともないわよ」


『俺は、嘘はつかないぞ?』

「なら、やって見せてくれる?」

シャーロットはそういうと、机の引き出しからナイフを取り出し

自分の指先を切ってしまった!


……なんというか、行動力がありすぎだろ!


「クッ、ナイフで指先を切るのは久しぶりだから痛いわ…治してくれる?」

『後先考えないで行動するなよ』


【ヒール】


淡い緑色の光が、シャーロットの指先を包み傷を癒していく。

完全に傷がなくなると、淡い緑の光も消えていた。

『……どうだ、使えただろ?』


「こんなに驚いたのは、姉が結婚前に子供をつくった時以来ね」

たぶん冗談を言いつつも、驚きの表情のシャーロットは俺をじっと見つめる。







ここまで読んでくれてありがとう。


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