第20話 まとめ役のお仕事
王都の市民街の路地裏を、茶白のネコは俺を案内してくれている。
市民街のまとめ役とはどんなネコなんだろうか…
茶白のネコが歩いて路地裏を進んでいるが、
今もいろんなネコが茶白のネコに挨拶している。
また、路地裏とはいえ人もそれなりにいて女性たちの井戸端会議の声や
子供たちの遊んでいる騒ぎ声などが結構聞こえてくる。
30分ほど歩いただろうか、ここは市民街の教会に案内された。
『ここだ、ここに市民街のまとめ役がいる』
俺は教会をまじかで見て、すごい感動していた。
『へぇ~、こんなふうに教会をすぐ傍で見たのは初めてだ…』
『…変なところで感動するんだな。
ここは市民街で一番人が集まるところだ、人が集まるということはネコも集まる』
『なるほど、それでまとめ役がここに…』
『ほれ、中に入ってまとめ役に会いに行くぞ』
『はいはい』
俺と茶白のネコは、教会の裏口から中へ入っていく。
教会の中をうろつき、本がたくさん置いてある部屋に入ると黒いネコが座っていた。
すごい貫禄がある猫だ。
俺たちが部屋に入ると、目を開けて茶白のネコを確認して声をかける。
『ジョージさんとこのネコか、今日はどうしたんだ?』
『まとめ役、実は後ろの白ネコが貴族街から迷い込んだようで…』
まとめ役は、俺の方を見ると目を細める。
『ふむ、それで貴族街に帰りたいってことか?』
『どうなんだ?』
俺に2匹の目が向けられる。
『いえ、俺はこの王都に来たばかりなのでこの町を見物したいんですよ』
『…なんか変わったネコだな』
『ええ、私もこのネコが貴族街から来たネコとは思えないと感じたんで』
『ふむ、まあ見物するのは構わんがトラブルは起こすなよ?』
まとめ役が忠告してきた。
『それは勿論、この町は広いからいろんなところを見学したいですし』
『見学は良いが、職人街のネコには気をつけな』
まとめ役は本当に心配そうな感じで忠告する。
『何か、職人街ってあるんですか?』
茶白のネコも同意して
『あそこは、喧嘩っ早いネコが多いからな…』
その時、1匹のネコが滑り込んでくる。
『まとめ役、職人街のネコとケンカした奴が怪我をしたんだ!』
『…これだ、あそこのネコには気を付けろとあれほど言っているのに』
まとめ役は溜息を吐きながら、飛び込んできたネコを見ている。
『仲裁にいかねばならんか…』
まとめ役は、飛び込んできたネコと一緒に出て行く。
『一緒に行くぞ、職人街のネコがどういうものか見学するのもいいだろう』
俺と茶白のネコも一緒に出て行く。
教会を出て、飛び込んできた黒に白の靴下をはいたようなネコに案内させて
もめ事を起こしている職人街との境界線の場所に急ぐ。
『しかし、なんだってケンカになったんだ?』
案内されながら、まとめ役が質問する。
『それが、いきなり襲われて
どういうことなのか俺たちが知りたいくらいですよ』
ネコの世界にも、人間と変わらないトラブルがあるんだな…
俺は3匹の後について走っていた。
と同時に、周りの景色にも目を向けている。
市民街から職人街への道順とか、どんな人たちがいるのかとかね。
よく見ると、市民街では女性や子供が多かったが職人街が近くなると
ガタイのいいおっさんが多くなってくる。
特にドワーフたちが目についてきた。
それと同時に、酒場も多くなってきた。
さらに、まだ日が昇っているのにすでに飲んでいる人もいる。
…これはトラブルが多いのはわかるな~
そしてネコたちのトラブルの現場に着いた。
そこには、赤いネコが1匹と黒に赤のネコが1匹堂々としている。
その足元には2匹の白に青のネコと青ネコが横たわっていた。
どうやら横たわっている3匹は、ケンカで負けたようだな。
『おいおい、職人街のネコが市民街で手を出すとはどういうことだ?』
まとめ役が間に割って入る。
『…先に、手を出したのはそっちだ』
その言葉に訝しめたまとめ役は、呼びに来たネコに話を聞く。
『といっているが、ホントはどうなんだ?』
おお、なかなかの迫力で呼びに来たネコに迫っているな…
『……た、確かに手を出したのは悪かったが、
市民街でウロウロしていたのはお前らだろう!』
おいおい、逆切れだよ…
『君たち、すまないなうちのネコが悪いことをした。
今回のことは許してくれないか?』
『まとめ役!』
まとめ役が謝ったことに、呼びに来たネコが驚いている。
『…それはもういいんだ』
どうやら、職人街のネコ2匹はもう気にしていないようだ。
『あー、ところで職人街のネコがなぜこっちに来たのか聞いてもいいだろうか?』
『…実は、あるネコを探している』
『どんなネコか聞いてもいいか?』
『別に隠すようなことではない、俺たちの色を見ればわかると思うが
赤いネコというのはめずらしい色だ。だから俺たちは父親のネコを探している』
赤いネコ、確かに珍しいだろう。
地球で赤いネコといえば、血まみれのネコとしか言いようがないからな。
今まで見てきたネコの中にはいなかったな…
『赤いネコか……市民街で見たことはないな…』
『そうか…』
落ち込んでいるぞ、赤い2匹のネコが……
俺は茶白のネコに近づくと
『なあ、まとめ役ってこんなふうにもめ事を片付けていくんだな…』
『ああ、だからそれなりに顔が効くネコじゃないと出来ないんだよ』
呼びに来たネコは、倒れている3匹に近づきぺろぺろなめていた。
3匹の傷をなめているのか…
俺は、横になって倒れている3匹に近づく
『ん、なんだあんたは…』
呼びに来たネコが俺に何か言っているが、俺はそれをスルーして倒れているネコに
前足をのせると治癒魔法を唱える。
【ヒール】
すると、倒れているネコたちが淡い緑色につつまれると
見る見るうちに3匹の傷が治っていく。
『なっ!』
そして、淡い緑色の光が収まると3匹のネコは立ち上がった。
『…俺たちの傷がなくなっている』
『すごいな、あんた…』
『ちょっと待ってくれ!』
赤いネコ2匹が近づいてきた。
『あんた、魔法が使えるのか?!』
俺は頷いて見せると、
『だったら、この王都で魔法が使えるネコを知らないか?』
『どういうことなんだ?』
『まとめ役、俺たちの父親も魔法が使えたそうなんだ』
『だから、魔法が使えるネコを見たことないかと…』
今までケンカしていたことなど忘れて、その場のネコ全員が考え込む。
ここまで読んでくれてありがとう。




