第2話 魔法を覚える
気が付くと、俺は馬小屋の藁の中で寝ていたようだ。
藁の中から顔を出すと、目の前に馬の顔があった。
驚きと同時に声が出た。
「ニャ~」
うん、ネコの鳴き声だ。
俺、本当にネコになったんだな…
でも生前読んだどこかの小説で、ネコは人間と見え方が違うことを書いていたが
今の俺は人間の時と同じ見え方をしている。
…たぶん、これが天使さんの言っていた修正というやつだろう。
今はその修正に感謝をして、深くは考えまい。
それで、俺の意識があるってことはネコの俺は成ネコになったのだろう。
気になって、生まれてから今までの記憶を思い出したけど
平凡なネコの生から巣立ちまでだった。
みんなお母さんの元から巣立ったようだけど、どうしているかな~
それはさておきさっそく、異世界の町を探検とまいりますか!
馬小屋を出ると、すぐに大きな道路に出た。
そこはすごい人通りだ、いろんな人が歩いていて馬車も通っている。
おお、あの立派な髭の人、ドワーフじゃないかな?
ああ、あの人の耳とがってる! あれがエルフか~ 美形だ…
あれ、馬車をひいているの馬じゃないな… ドラゴンみたいな見た目だな…
犬がいた! 異世界にも犬とか普通にいるんだな~
でも、いろんな店の客引きがうるさいな。
ここはいい匂いのする屋台だな… 何かもらえないかな~
「ニャ~」
お、屋台のおじさんが気付いた。もう一声かな?
「ニャ~」
おお、食い物くれた~ …うまっ!
俺が意思を取り戻して初めての食い物、うまっ!
それにしても、いろんな看板が読めるのはありがたい。
何とか商店や何とかの宿など、いろんな名前があるものだ。
でも、異世界も地球も文明の規模は違えどやっていることは変わらないな。
いろいろ歩いて探検していくと、大きな屋敷の廃墟を見つけた。
ここは、貴族の屋敷だったのか?というほどの大きさだ。
まあ、俺がネコだからそんな大きさに見えたのかもしれないが…
周りを見ると、この屋敷より小さいけどいろんな建物があるのね。
もしかしたら、ここになら本があるかもと門の隙間から中へ侵入し
屋敷の中へ窓の隙間から入っていく。
廊下に降り立った俺が目にしたのは、埃だらけの屋敷内部。
窓のあたりだけ雨風にさらされたこの屋敷に、
はたして本があるのかないのか。
だが、意外と早く見つかった。
何せ、埃だらけの廊下を進んですぐの部屋に本が3冊だけ置いてあった。
おそらくいらなくなって置いていったのだろう。
さっそく俺はタイトルを確認。
『スライムでもできる魔法』
『常識と非常識』
『薬学を学べ』
……これも天使さんの修正か?
俺が読みたい本がそろっているじゃないか!
まあ、難しいことは考えずに今ある現実を受け入れよう。
ではさっそく、まずは『スライムでもできる魔法』を読んでいこう~
ふむ、まずは『ステータス』を出して適性を知ることか。
「ニャ~」
……えっと、声に出さなくても心の中で唱えればいいのか。
【ステータス】
名前 ―――[宮野 太郎]
年齢 ―――[+46歳]
職業 ネコ
レベル 1
生命力 10
魔力 200
攻撃力 物理 1
魔法 1
防御力 物理 10
魔法 10
スキル 異世界言語習得 不老不死[限定]
称号
やっぱりネコなんだな、この世界の平均がどうなのか分からないが
めちゃくちゃ低いのはわかる。
しかし、年齢が表示してないのは1歳にもなっていないからかな?
後ろの+46歳は、生前の記憶を持って生まれたから
生前の年齢が表示されたのか。
俺、名前もないんだな…
う~ん、今自分で付けてもいいが確か強者とかに名前をもらうと
強くなるって、どこかの本に書いてあったような…
それまでは、今のままでいいか。
それにしてもあったよ不老不死!
後ろに限定の文字があるけど、何か複雑だ。
とにかく、魔法だ魔法。
適正はわからなかったが、片っ端から学んでいくぞ!
不老不死で時間はたっぷりある、頑張ってやるぞ~
▽ ▽ ▽
俺はそっと本を閉じる。
あれから30日、寝て起きて飯食って本読んで試してを繰り返し
習得しましたよ魔法! これで俺は魔法使いのネコ!
……なんか使い魔みたいだが、
この本に載っていた魔法はすべて使えるようになった。
見せてやろう、俺の30日の努力の成果を!
【ステータス】
名前 ―――[宮野 太郎]
年齢 ―――[+46歳]
職業 魔法使い
レベル 1
生命力 10
魔力 200
攻撃力 物理 1
魔法 50
防御力 物理 10
魔法 80
スキル 異世界言語習得 不老不死[限定]
火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 空間魔法 治癒魔法
魔力操作
称号 ネコを超えるネコ
どうだ、レベルはお粗末だが職業が魔法使いになったから
だいぶマシになっただろう。
これでレベルを上げていけば、強くなって不死が無くなっても生きていける。
それに空間魔法を覚えたから、空間収納が使えるのだ~
所謂アイテムボックスだ。
早速、本3冊を空間収納にしまってこの屋敷を出て行こう。
レベルを上げたら、格闘技を学ぶのもいいかもしれないな…
今のところ、ネコパンチしかできないし。
俺はお世話になった廃墟の屋敷を後にして、再び町中を探検し始める。
次は、情報収集だ。
どんなところでレベルを上げるか、考えないとな…
いろんな屋台に顔を出し、おこぼれをもらって食べながら
俺はある場所を目指した。
もうお分かりだろう。
レベル上げの情報収集といえば、冒険者ギルド。
しかし、最初は冒険者ギルドがあることすら分からなかったが
屋台へ何度も顔を出し、おこぼれをもらっているうちにその屋台のお客から
冒険者ギルドの名前を盗み聞きしていた。
まあ、俺は見た目ただのネコだし喋れないから聞きっぱなしなんだけどね。
でもその分いろんな話を聞けた。
噂話の類から、確実な情報までね。
さて、そうこう考えながら歩いていると目の前は冒険者ギルド。
さすがに、ネコにテンプレはないと思うが一応覚悟はしておくか…
そして俺は、冒険者ギルドへ入っていく。
勿論、忍び足で……
ここまで読んでくれてありがとう。




