表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

五話 天文術式は力をためている

15000字あると推敲が面倒になる(´・ω・)

 約三百年前、トリウィアは山岳の国の豪商の娘として生まれた。

 トリウィアの父は家族を愛する人間だった。妻を愛し、一人娘を愛した。トリウィアを産んだ際、妻が子供を望めない体になってしまっても、変わらず愛し続けた。

 その時代は長男が家業を継ぐのが常識であったため、商家を存続させるためには娘婿に有能な男を充てがうか、一度離婚し新しい妻に子供を産ませるかのどちらかが必要であったし、普通は当然そうするものだったが、父はそうはしなかった。家族に寂しく辛い思いをさせないためなら、数代続いた商家を終わらせても良いと思っていた。


 それほど深い愛情を受け、トリウィアは自由に伸び伸びと育った。甘やかされていたと言っても良い。

 あれが欲しいと言えばあれを買い与えられ、これがしたいと言えばお膳立てをしてもらい。常に優秀な護衛が付き、有能な使用人が侍っていた。

 しかしワガママには育たなかった。幼い頃は体が弱く、寝てばかりだったからである。遊び回りやりたい放題をする元気は無く、専らベッドの上で本を読んだり、窓の外に見える庭の美しい木々や花、小鳥を絵に描く事を好んだ。


 幼少時に父に買い与えられた高価な本の中の一冊に、魔女の物語があった。トリウィアの人生を決める事になった本である。

 魔女とは女性の強力なギフト持ち(ギフテッド)に与えられる称号だ。男ならば魔人。歴史書や英雄譚、恋愛小説でも、魔女か魔人が登場すればそれは必ず重要な立ち位置を占める。本来魔法が使えない人の身でありながら、魔獣を凌駕する力を振るう彼ら彼女らは、歴史上実際に重要な役割を果たしてきたし、今もそうであるし、これからもそうだろう。

 創作物の中ですらそうだったが、やはり創作なだけあって誇張が入っていた。


 その本の中の魔女は強大で、華麗だった。

 枯れた大地を蘇らせ、死の病を癒し、三つ目の月を創造し。世界最強のドラゴンを従えさえした。

 そしてその全ての偉業は魔法によって成されていた。


 ギフトの取得条件は不明で、何が可能で何が不可能かもはっきりしていない。物語の魔女のようになれないとも言い切れないのだ。

 トリウィアは魔女に憧れ、憧れるだけではなく、努力を始めた。


 トリウィアのとった方法は堅実だった。

 ギフトが贈られない場合に備え、魔道具の研究をした。世に出回る魔道具を買い集め、仕組みを調べ、改良していった。

 二十代中盤で自分が不老のギフトを持っている事をはっきりと自覚してからは、努力はより遠大なものになった。世界中を旅し、新しい魔法や強力な魔法を求めた。

 見目麗しく金を惜しまないトリウィアは良くも悪くも注目されたが、護衛がいたし、本人が慎重に立ち回り、焦らず堅実確実に事を進めるのを好んだため、良からぬ事態に巻き込まれる事もなかった。


 旅から戻った時、護衛は年老い、両親も高齢であった。トリウィアは若いまま。旅立った時と同じ、若いままだった。

 両親と護衛が天に召されるまでの数年間、トリウィアは甲斐甲斐しく彼らの世話を焼いた。料理を作り、掃除をして、老いた体が少しでも楽になるようマッサージをした。使用人には手を出させず、全て一人でやった。幼い頃に受けた愛情や、旅の間欠かさず送られてきた手紙。もう随分遅かったが、最後に少しでも報いたかった。

 長い旅の間、トリウィアは多くの死を見てきた。家族の死は堪えたが、受け入れられないものではなかった。

 父が老いてから商家は徐々に規模を縮小し、死と共に穏やかに無くなっていた。トリウィアは天涯孤独の身になった。


 独りである、というのは恐ろしい事だと思っていたが、実際になってみるとそうでもなかった。涙を流し、悲しみはしたが、打ちのめされはしなかった。

 トリウィアは自分が思っていたよりもずっと薄情な人間だったらしい。

 あるいは、家族へ向ける情が別のものに注がれていたのかも知れない。

 つまり、魔法である。


 世界を回り、トリウィアは魔法を求めた。天を裂き地を割り海を支配する。強大な魔法を求めた。何十年もかけて世界の端から端まで旅をし、探し続けたのだ。最早トリウィアにとって魔法は人生だった。

 しかし人生とは思うようにはいかないもので。魔道具についての知識は増えたし、ギフトも増えたが、天を裂くどころか鉄を裂くのでやっとだった。


 知識を集めるだけでは限界があると考えたトリウィアは、故郷の王国の魔法研究部門に所属する事にした。世界を巡って得た知識を、国の後押しを受けて更に磨こうと考えたのだ。幸いトリウィアは老いない。一足飛びに強大な魔法を手に入れる必要はなかった。少しずつでも歩みを止めなければ、いずれそこに至る。しかし早いに越した事はない。同志が得られれば一人よりもずっと早く強力な魔法を得られるだろう。


 ところが、魔法研究部門とは名ばかりだった。真面目に研究しているのはトリウィアだけで、他の者は偶然得た物(ギフト)を笠に着て威張るのに忙しかったり、市場に出回っているものよりちょっと出来が良いだけの魔道具を高値で売りさばく事にご執心だったりした。

 これは国の立地が悪かった――――正確には良すぎたためだ。

 山岳の国は東、西、北を急峻なツェーヴェ霊峰に囲まれ、南には荒海。守りは堅く、攻めに出るのも難しい。しかも水が豊富で鉱山は掘っても尽きず、気候は温暖。

 特に新しく何かを作るまでもなく、国は十分豊かで安全だった。魔法研究部門は他国の似た組織を伝え聞き、半ば王の気まぐれで設立しただけの名ばかりの物だったのだ。


 やる気の無い、あるいは明後日の方向へやる気を見せる同輩にトリウィアは心底うんざりした。それでも数年は一人で研究をしていたのだが、以前から厭らしい目で見てきていた研究所長に押し倒されそうになり、我慢の限界が来た。

 所長は焼き豚になり、騒ぎを聞きつけ鳴き喚きながら襲ってきた者達も同じ運命を辿った。

 結局、魔法研究部門は壊滅。魔女と称されるようになったのはこの頃からだ。


 国を追われたトリウィアは他国の研究組織に身を置こうとしたが、異国人故に信用されず、冷たい返事をもらうばかりだった。門前払いならまだ良い方で、攻撃される事もあった。山岳の国が平和だっただけで、外の国は小競り合いが絶えない。魔法技術を盗みに来たスパイだと思われるのも道理だった。

 やっとある国の魔法団に受け入れられたかと思えば、魔法を磨く事よりも魔法を戦場で振るう事を要求されるばかり。同僚は嬉々として魔法を振るいはするが、それを高めようとはしない。モノにもよるが、ギフトは高めるまでもなく十分強力なのだ。少なくとも、戦場で振るうだけならば。魔道具も性能を高めるというよりも、いかに量産するかという事に重点が置かれていた。

 トリウィアは深い失望を味わい、魔法団を抜けた。追っ手がかけられたが、蹴散らした。二百年もかけて研鑽した魔道具の技と、五つのギフトは一国の精鋭達を物の数にもしなかった。「硬化」で自分を守りつつ、「生命探知」で標的を定め、「発火」で焼く。それで大半は片付いたし、それを突破してきても魔道具があった。


 旅に疲れ、人に疲れたトリウィアは再び故郷に戻り、ツェーヴェの高い峰の一つに屋敷を建て、そこに住み着いた。半分成り行きで各国で悪名を轟かせてしまっていたが、流石の追っ手も霊峰を登って来る者はほとんど無かった。険しすぎて登って来れなかったとも言えるが。

 一人だけの、静かな生活が始まった。


 朝起きて、朝食を食べ、小さな畑の世話をして、肉を得るため狩りに行く。昼食の後は魔法の研究に打ち込み、日が暮れれば眠りにつく。

 そんな平坦な毎日が百年も続いた。年に一回だけ山を降りて買い物をする以外、人に会う事も無い。魔法だけが友だった。

 トリウィアの魔法への静かな情熱は、孤独を苦にしなかった。


 三百歳を超えたトリウィアはとうとう限界を感じた。もう何年も研究に進展が無い。自分一人ではこれ以上は無理だと悟った。

 共に研究する同志が欲しいと考え山を降りて探したが、百年前とほとんど変わらない有様にため息しか出ない。自分が世界で最も優れた知識を持っている事を再確認しただけだった。

 

 失意と共に鬱々と屋敷に戻ろうとしたトリウィアは、偶然ドラゴンの鱗を手に入れた。それも並のものではない。数万の屈強な軍隊か、難攻不落の砦を手にしているのかと錯覚しそうな異様な圧力。それは世界最強の生物の鱗だった。

 思わぬ偶然にトリウィアは何年かぶりに喜びから笑みを浮かべ、すぐに強力な魔道具の素材に使おうとしたが、ふと考え、思いとどまった。

 これだけの素材、ただ使ってしまうだけではもったいない。もっと先に繋げるような使い方はできないだろうか。


 考えに考えた末、鱗は異世界召喚に使う事にした。この世界に自分より優れた知恵者がいないのなら、他の世界から連れてこれば良い。

 魔道具の製作に長けたトリウィアは鱗に込められた力を活かし、異世界召喚術を作り上げる事ができた。

 召喚するのは別世界で最も優れた魔法使い。送還術までは作れなかったため、喚びだすだけになってしまうが、トリウィアは新しい魔法に触れたいという欲求に勝てなかった。誘拐になってしまっても、望まぬ召喚であっても、最も優れた魔法使いを失ったどこかの異世界が酷い損失を被る事になるとしても。

 せめて、召喚成功の暁には敬意と誠意を以て接しようとトリウィアは心に決めた。













 痛みは無いはずの翻訳角の接続で召喚された者が七転八倒しているを見て、トリウィアはドキリとした。

 鹿と猿に試した時は問題なかったが、人、それも異世界人では勝手が違ったらしい。

 しかし異世界召喚である。想定外が起きるであろうという事は想定していた。蓄えた知識をさらって冷静に考え、頭が破裂していないという事は痛みは一時的なものだろうと結論付ける。

 幸い異世界人は十分知的かつ冷静で、説明と交流は最高と言って良いほど順調に進んだ。召喚された事を喜び、帰還を望んではいないというのも都合が良かった。


 異世界人、アマノは素晴らしい同志だった。

 魔法に対する真摯な姿勢。自分以上では無いかと思える情熱。優れた知性、豊かな知識。元の世界の仲間だという星の知恵派もさぞ素晴らしい組織なのだろう。家族に恵まれても仲間に恵まれなかったトリウィアには羨ましい限りだった。

 一山幾らの安い魔道具にすら子供のように目を輝かせ、無邪気に喜ぶアマノに最初は大の大人がこんな……とモヤモヤした気持ちを抱いたのは確かだったが、慣れてみれば微笑ましい。トリウィアもまた幾何学的美しさを表す天文術式に静かな高揚を感じていた。その術式の高度な論理性と確かな説得力からデマカセや妄想だとは全く思わなかった。もし嘘の類であれば別の意味で尊敬しただろう。


 思いもよらない、しかも十分自分の世界でも使えそうな画期的魔法理論を惜しげもなく提供してくれたアマノに、トリウィアはよく応えた。慣れない環境で不便をかけないようそれとなく気遣い、好みを合わせながら栄養バランスのとれた料理を振る舞い、肌触りの良い服を布から仕立て贈り。甲斐甲斐しく、しかし鬱陶しく思われないよう注意を払って世話を焼いた。

 男という生き物が大抵そうであるように、アマノが自分を好色な目で見てこない事も好ましかった。度が過ぎなければ不快ではないのだが、異性関係にあまり良い思い出はない。魔法に夢中でそれどころではないだけかも知れないが、それもまた良し、だ。

 世話をするのが全く苦にならないし、魔法について語り合い、理論を戦わせるのは至上の喜びだった。


 だからアマノの頼みで山を降り、別行動をする事になった時、寂しさを感じなかったと言えば嘘になる。短い付き合いではあったが、そばに居て心地よく、それに慣れきってしまっていた。もちろん、特別困難でもないアマノの頼みを断る訳もなかったのだが。

 旅と調査の日々、星空を見上げるたびに孤独は募った。隣で望遠鏡を手に空を仰ぎ、歓声を上げる男がいない。それが酷く心を乾かせた。一人が辛いと思うのは一体何十年ぶりだっただろうか。


 いつの間にか、トリウィアは孤独に弱くなっていた。


 試作天文術式にアマノが焼かれた時、トリウィアは心臓が止まりそうになった。焦燥と恐怖に凍りついた頭とは裏腹に、体は素早く動き、気絶したアマノを抱きとめた。治療系のギフトを持っていないのをこれほどまでに悔やんだ事は無かった。

 しかしトリウィアには魔道具がある。トリウィアが長きに渡り積み上げてきたモノは、確かにアマノの命を救った。二度と手に入らない絶滅した魔獣の素材を使った薬も、アマノの為なら惜しくはなかった。アマノが死んでしまうと天文術式の教えを受けられなくなるから、という打算もあったが、トリウィアの心の大部分を占めていたのはもっと別の思いだった。


 アマノはベッドの上で療養しながら研究を進めていた。

 トリウィアとしては完全に治るまでじっとしていて欲しかったが、アマノにとってはじっとしている方が辛いらしい。

 体に傷を負っていても頭脳は明晰で、天文術式の研究は長足の進歩を見せた。


 まず、銅板と鏡から成る天文術式装置から鏡が撤去された。鏡はそもそも星の光を集め、術式の効率を上げるためのものである。地球世界では鏡があっても酷いものだったが、スラエ世界ならば鏡がなくても十分な威力を出せる。ただでさえ煩雑な計算を求められる天文術式を更に面倒にしている鏡の曲率や設置角度の計算を省けるならば、それに越したことはない。


 次に課題として挙がったのは出力の安定化だった。

 天文術式は発動する魔法の出力と種類を、完全に天体の運行に依存している。

 例えば太陽の南中時に発動する発熱術式は、南中の瞬間を最大出力として、マトモに起動するのはその前後十数秒。他の時間帯は0.1℃すら上がらない。

 他の術式も同じだ。理論上、二つある月が重なる「重月」の夜には強力な回復術式が起動するという計算結果が出ているのだが、重月は約半年に一回しか起きない天文現象である。半年に一回、それも一晩の間しか使えない術式は実に不便だ。しかも空に雲がかかっているとその短い間の発動すら不可能になる。ツェーヴェ霊峰のような雲より標高が高い場所で使えばその問題は無くなるが、根本的な解決にはなっていない。


 これを改善し、時間帯や天候に関係なく安定して発動する術式を構築できれば。その恩恵は計り知れない。

 とはいえそう簡単に改善できたら苦労はない。研究とは大部分が地道なデータ採りの積み重ねなのだ。アイデア一つで一発解決、という訳にはいかない。

 そもそも情報不足の試作術式の事故で死にかけたばかり。慎重になってなりすぎるという事はないだろう。

 新しい術式を使うと今度は取り返しのつかない事故になるかも知れないので、既に効果が分かっている発熱術式を術式の細部をほんの少しずつ慎重に変えながら何度も何度も使い、データの蓄積をする事になった。おかげで毎日南中時刻になると庭に火柱が上がっている。


 やがてアマノの傷も癒え、一層精力的に活動するようになった。トラウマものの事故を経験したにも関わらず、アマノは魔法の研究が心底楽しくて仕方がない、という様子だ。トリウィアもそれを見ていると嬉しくなる。トリウィア自身も、もちろん魔法の研究は楽しくて仕方が無かった。長きに渡る停滞に吹き込んだ鮮烈な風。楽しくない訳がない。

 資料室の棚に日毎に増えていく星図や仮設メモ、実験データを書き記した紙の束。アマノはぱそこんで処理できないのが面倒だ、と不満そうだったが、紙媒体が当然のトリウィアにとっては研究の証であり、誇るべきものでしかない。アマノ召喚前の遅々とした歩みが嘘の様。

 アマノもトリウィアも天文術式の研究に夢中で、スラエの魔法については全くと言っていいほど手をつけていなかったが、それも仕方ないだろう。二人共一度行き詰まった魔法よりも、未知と不完全さに溢れた天文術式を優先するのは当然だった。













 アマノ召喚から三年が経とうというある日。

 朝早く起きだしたトリウィアは、エプロンを着て長い黒髪をポニーテールにまとめ、台所に立った。前の晩から弱火にかけておいた鍋から牛鳥の骨を出し、布を張った別の鍋にゆっくり注いでスープを濾した。数種類の野菜を手際よく食べやすい形に切って濾したスープに入れ、今度は中火で煮込む。寝かせておいたパン生地をオーブンに入れ焼けるのを待つ間、トリウィアはテーブルに着いて昨日の計算結果が書かれた紙を見直した。


 そこには三年間の星図を元に予測された、極陽系の図面が書かれている。

 何度か改良を繰り返した望遠鏡天体観測によりはっきり目視できた極陽系惑星は、六つ。しかし紙には七つの星(と、スラエの衛星である二つの月)が描かれている。

 これは理論上七つの惑星があるはずだと予測されたからだ。惑星が六つ以下や八つ以上であると仮定して組んだ術式よりも、七つであると仮定して組んだ術式の方が出力が高い。これは惑星の数が七つである可能性が高い事を意味している。

 直接天体を観測しなくても、「天体はこうである」と仮定して組んだ術式が正常に、そして効率良く働くかどうかを実験してみる事で、逆説的に天体の真実を知る事ができるのだ。もちろん、実際に観測した方が応用の効く確実なデータが集まるため、そうできるならそうした方が良いのだが。


 また別の紙には、発熱術式改め火炎術式の常時発動に向けた研究についてのメモが書かれていた。これはある程度の成果を見せている。 

 南中時でなくとも、日中ならば術式を起動できるようになったのだ。依然、時間帯次第で威力が乱高下し、蝋燭程度の火~火柱、という安定しない出力ではあるが、着実に進歩はしている。進歩したおかげで、天文術式には何かが足りない、という事も見えてきた。


 アマノが提唱し、星の知恵派が作り上げた天文術式は、既にある程度完成されている。応用や改善の余地は大きく、無限の可能性が広がっているが、星がその配置によって生み出す力を受け取る基礎理論自体は見事に確立されている。

 しかし、何かが足りない。アマノは「箱はあるが蓋が無い気がする」と表現していたが、正にそんな印象をトリウィアも抱いていた。箱だけでも問題は無いのだが、蓋があれば使い道は大きく広がる。

 その蓋に相当する何かが天文術式には足りていないようなのだ。


 例えば、天文術式を組み上げる際、計算の途中で必ず現れる特有の数。切り捨てても術式の発動に全く支障は無いのだが、術式には関係ないはずのその数が、何かを示唆している気がして仕方がない。

 例えば、術式起動の際、装置の近くにアマノがいるか、トリウィアがいるかで微妙に出力が変わる不可思議な現象。強大な星の力を利用する術式に、ちっぽけな人間の存在が影響を与えられるハズがない、誤差の範疇だ、とアマノは主張しているが、トリウィアはどうにも引っかかった。

 他にも引っかかりを覚える要素はいくらでもあった。


 現時点で何が足りないのかは分からない。だが、データが溜まるほど、何か二人が認識していない要素が天文術式に関与しているのでは、という疑念は補強されていき、確信に変わりつつあった。

 何が足りないのか突き止めるにはもっとデータが必要だ。アマノが語った地球世界の著名な学者に比べれば、トリウィアもアマノも二流か準一流といったところ。僅かなヒントから正解にたどり着けるほどの並外れた頭脳は持っていない。アマノですら、天文術式を構築するために目眩のするような量のデータを収集し、丹念に分析する必要があった。

 しかし逆に言えばデータを集め、ヒントを増やせばしっかりと正解を掴み取る頭脳はあるという事だ。

 結局は地道なデータ採りしかない。


 考え考え、アイデアや計算式を紙に書き込んでいたトリウィアは、ふと気付いて顔を上げ、窓の外を見た。そこには実験の余波で焦げた地面とその向こうの雲海が見えるばかりだったが、トリウィアの「生命探知」は確かに雲海の下から何者かがまっすぐ屋敷へ近づいて来ているのを感じ取っていた。

 霊峰に生息する野生動物の気配とは違う。

 それは人の気配だった。


 ツェーヴェ霊峰の頂にある屋敷に人がやってくるのは珍しかった。過去の悪名が――――伝承や昔話の類としてだが――――残っているため、好き好んで近づく者はいないし、遭難して偶然辿り着くような場所でもない。

 わざわざ会いに来る知り合いはおらず、昔の因縁が理由で今更追っ手が差し向けられるとも思えない。強いて言えば可能性があるとすればアマノ関係だが、彼を召喚した事は誰も知らないはず。


 少し考え、トリウィアは椅子から立ち上がった。敵ならば容赦はしないし、そうでないならば追い返すだけだ。

 玄関へ向かうトリウィアだが、鍋とオーブンの火は落とさない。エプロンも、後ろで括った髪もそのまま。

 それはすぐに片付けて戻って来れる、という自信の現れだ。研究畑とはいえ、世界でも指折りの実力者であるという自負があった。相手がどんな人間だろうが片手間で対処できる。


 玄関を出て、高原のそよ風に揺れる髪を抑えながら少し待つと、来訪者の姿が見えてきた。

 それは鈍い銀色の鎧を着た小柄な少女だった。動きやすいショートカットの金髪と、鎧についた無数の傷。そしてトリウィアを見据える冷たく凪いだ蒼い瞳と、腰に下げた無骨な剣が、彼女の訪問の目的が友好的な物ではない事を物語っていた。


 相手が女性、それも十四、五歳の少女であると見て取ったトリウィアの表情は、我知らず僅かに歪んだ。もし男性であれば表情は変わらなかっただろうし、その少女が同性から見ても可愛らしい容姿をしていなければやはり変わらなかっただろう。

 理屈ではなく直感で、トリウィアはその人間をアマノに近づけたくない、近づけてはいけない、と思った。例え敵ではなかったとしても、だ。

 トリウィアは完全に臨戦態勢で少女に向き直った。


 少女は剣の間合いから数歩離れた位置で立ち止まると、見た目相応の幼い声で名乗りを上げた。


「私はサララ。竜騎士サララ。霊峰の魔女トリウィアに決闘を申し込む」

「!」


 それを聞いたトリウィアは体を強ばらせ、エプロン装備で彼女の前に立った事を僅かに後悔した。

 竜騎士とは、世界最強の生物ルタオ=クラズテゥクの弟子が名乗る称号である。


 溶岩の海でまどろみ、尻尾のなぎ払いで街一つ消し飛ばすと言われる隔絶した強さを持つドラゴン、ルタオ=クラズテゥク。彼は闘いにしか興味が無い。有望そうな者を見つけると、攫って鍛えて試練を与える。そして充分強くなると、強制的に闘いを仕掛けるタチの悪い性格をしている。

 神にも等しいドラゴンに挑む者は皆無で、逃げる者を狩ってもつまらない。彼が無聊を慰めるには、自分と闘うべく育てた者を自分で収穫するのが一番なのだ。少なくともルタオ=クラズテゥクはそう考えている。


 そんなドラゴンに目を付けられた哀れな犠牲者が、竜騎士。最強の生物に見出され、鍛えられているだけあり、その強さは折り紙つきだ。研究肌にも関わらず世界最強クラスのトリウィアが警戒する相手は、ルタオ=クラズテゥクと竜騎士ぐらいしかいない。そしてその竜騎士が来てしまった。


「私はトリウィア。ツェーヴェ霊峰の魔女、トリウィア。君は私を殺しにきたと考えて良いかな?」

「そうだ。師、ルタオ=クラズテゥクの命により、私はあなたを殺さなければならない」

「私が逃げたら?」

「世界の果てまで追いかけ、殺す」


 トリウィアは思わず笑った。サララが訝しげにしている。

 世界の果て、という言葉に、三年前のトリウィアは何も感じなかっただろう。しかし、今は世界が球体で、まっすぐ進めば一周して元の場所に戻ってくる事を知っている。世界に果てなど無いのだ。

 それを教えてくれたアマノを思い浮かべる。彼を連れて逃避行をする訳にもいかない。


「何を笑っている?」

「大した事ではないよ。いや、大した事ではあるのだけど」

「? ……それで、決闘を受けるのか、受けないのか」

「断っても斬りかかって来るんだろう?」

「ああ。私にも事情がある。貴女に恨みは無いが、貴女と私の関係は殺し合い以外に有り得ない」


 重い陰がまとわり付く言葉で、サララは吐き捨て、剣を構えた。


 竜騎士の人生は必ず悲惨なものだ。

 過酷な試練の途中で死んでしまうか、試練を乗り越え大成しても絶対強者に殺される。試練から逃げ出すと死ぬ呪いもかけられていると聞く。

 竜騎士サララもまた、辛い日々を送り、希望の無い中でその場しのぎの生にしがみついてきたのだろう。

 闘う以外に道は無く。死以外に終着も無い。

 トリウィアには彼女への同情があった。しかし、容赦も無かった。穏やかで喜びに満ちた研究の日々を、竜騎士如きに邪魔されてなるものか。

 竜騎士も気に入らないし、自分を試練の当て馬に利用してきたルタオ=クラズテゥクも気に入らない。


 ルタオ=クラズテゥクは試練の途中で潰れた弟子の報復などしない。彼は弱い者に情がない。

 だからここでサララを殺せば、それで終わりだ。


「分かった。決闘を受けよう」


 奇襲をせず、決闘という形で勝負を挑んできたのは、闘いを強いられたサララのせめてもの誠意だったのだろう。あるいは実質的に奇襲を無効化するトリウィアの生命探知(ギフト)を知っていたのかも知れないが。

 トリウィアが決闘を受けると、サララは一礼して剣を下段に構え、まっすぐ突っ込んできた。流石竜騎士、トリウィアが見た事のある誰よりも疾い。並の強者なら一瞬で接近され、切り伏せられて終わりだろう。

 しかし霊峰の魔女は並ではない。「硬化」で守りを固めつつ、「浮遊」で相手を浮かせ無力化し、「発火」で焼き尽くす。これだけで大抵の敵は何もできずに死ぬ。


 後ろに下がりつつ、小手調べにサララに浮遊を使う。突進中のサララの足は確かに一瞬浮き上がったが、すぐに地面に引っ張られるように地に戻った。

 間合いに飛び込んだサララは突進の勢いはそのままに、水平斬りを放ってくる。


「っ!」


 脇腹を捉えたその一撃は、破城槌で城門を叩いた様な轟音と共にトリウィアを吹き飛ばした。「硬化」で軽減はしたものの、凄まじい威力が内臓に届いている。何度もは受けられないだろう。

 トリウィアは吹き飛ばされた勢いをそのままに空中に舞い上がった。何故かサララへの「浮遊」は打ち消されたが、これなら、

 と考え、空中から火の雨を降らせようとしたトリウィアは、突然重力に捕まった。羽のように軽くなっていた体が一転、鉛にように重くなり、地面に叩き落とされる。着地を狙った袈裟斬りはまた「硬化」で防御したが、貫通した威力で骨が軋んだ。


 追撃を入れようとするサララに火炎を放つ。サララはバックステップを踏み、距離をとって剣を構え直した。とは言ってもそれほど離れない。すぐに攻撃を再開できる間合いだ。

 素早く立ち上がったトリウィアは、サララが恐らく重力を操っているのだろうとアタリを付けた。ギフト無効化ではない。それなら火炎も無効化したはず。自信が飛ばないところを見ると、加重しかできないのか。ちょうど「浮遊」の逆である。


 戦法の軸になる「浮遊」を無効化されるのは痛い。とはいえ、他に手がない訳でもなかった。

 外見上、トリウィアにダメージは見えない。「硬化」がかかった体への斬撃の手応えはさぞ異様なものだっただろう。サララはダメージが通っていないと考え、警戒しながら考えているのが手に取るように分かった。

 トリウィアは右手をサララに向け、強力な磁力を発した。金属の剣を持ち、金属製の全身鎧まで身につけたサララは見えないロープに引っ張られたようにトリウィアに引き寄せられる。更に「浮遊」を併用。案の定、「浮遊」は加重で無効化されたが、驚くべき事にサララも右手を突き出した。明らかに同じ磁力を使い、相殺している。

 が、それまでだった。

 剣を下に突き刺し、足首まで地面にめり込ませて引力に抗うだけで精一杯のようだ。サララの磁力はトリウィアの磁力よりも弱い。脂汗を流し歯を食いしばりながらも、サララは動けない。釘付けにされた竜騎士に、トリウィアは躊躇なく強力な炎を放った。


 サララは咄嗟に加重を解除したらしい。相殺されていた浮遊と磁力が発揮され、サララの体トリウィアに向かって飛ぶ。炎を突き破り、裂帛の叫びを上げながら、引き寄せられる勢いを利用して放たれた一撃だが、トリウィアは豊富な交戦経験から、過去に同じ戦法を体験している。空中では方向転換ができない。高威力ではあるが直線的で単純な攻撃をあっさりかわし、カウンターの磁力パンチを叩き込んだ。


「が……!」


 流石に高速で迫る相手に狙いすました拳を打ち込めるほどの武術の心得はないため、当たればいい、というパンチだったが、運良く鳩尾に入った。サララが崩れ落ちる。

 ガクガク震えながら立ち上がる意識を朦朧とさせた竜騎士を踏みつけ、手から剣を奪い取り、炎で熱を与えながら磁力で曲げて投げ捨てた。

 これで彼女に武器はない。副武装も見当たらない。詰みだ。


 絶望的な顔で涙を流しながらサララが見上げてくる。そこには活力など何もなく、恐怖と諦観、後ろ向きな感情だけが宿っていた。抵抗する気力も無いようだ。

 しかし逃せばどうなるか分からない。逃がすのも慈悲。横たわる暗い未来をここで絶ってやるのも慈悲。

 トリウィアはほんの少しだけ考え、後者を選ぶ事にした。


「これどういう状況?」

「……アマノ」


 サララがあわや火葬されるされる寸前に、屋敷からひょっこりアマノが出てきた。興味津津といった様子でサララに近づいてくる。


「アマノ、危ないから離れていてくれ」

「いや、途中? から見てたけどこの子殺そうとしてなかったか」

「彼女は私を殺そうとしているんだ。正当防衛……だったか。それだよ。別に殺したくて殺す訳ではないさ」


 アマノは平和な世界で育ってきたという。理由はどうあれ人殺しに反対するのでは、と危惧したが、アマノの回答は斜め上だった。


「いやァ、もったい無くないか?」

「は?」


 思わず死んだ目で震えているサララから視線を離し、アマノを見た。アマノは至極真面目な口調で続けた。


「この子はさ、強力なギフト持ちだろ? 重力系と磁力系の。生かして実験体になってもらった方が良くないか? ……あ! いや! 解剖とか拷問する訳じゃないぞ! ただ話を聞いたり、ギフトを使って理論の検証をしてもらったりな」

「……ああ、まあ、一理ある。私のギフトと比較しよう、という考えだろう?」

「そうそう、流石トリウィア。分かってる」

「しかしな。彼女は私を殺そうとしているんだ。寝首をかかれる可能性を考えると賛成はできない」

「ああ、それな。殺されかけたんだもんな。俺もいい気はしないというか活かすにしても手足の二、三本逝っといていいと思うが……そもそもなんでこの子はトリウィアを殺そうとしてるんだ」


 不思議そうなアマノに、トリウィアは渋々サララの境遇を語った。話の流れが怪しくなってきたし、本音を言えばグダグダ喋っていないでさっさと火葬してしまいたいが、アマノの前ではあまり乱暴に事を進めたくない。凶暴な女だと思われたら立ち直れない。

 一通り話を聞いたアマノはなるほど、と頷いた。


「サララはそのドラゴンの試練でトリウィアを殺さないといけない。試練をクリアするとドラゴンに殺される。試練に負けるとトリウィアに殺される。トリウィアに殺されなかったり、試練から逃げたりしても、呪いで死ぬ」

「その通り。歴代の竜騎士は試練を乗り越えて得た力でルタオ=クラズテゥクを倒し生き延びる事に望みをかけたようだが、言うまでもなく、叶う訳の無い希望なんだよ」

「……どうせ遅いか早いかでしか無いんだ。もういい、殺せ」

「あ、そういうのいいから。くっ殺が許されるのはエロ同人までだから」


 くっ殺の用法ちょっと違うか? と首を傾げるアマノと光の無い目をしたサララの落差が酷かった。


「本人もこう言っている。ここで命を絶ってやるもの慈悲だと私は思う」

「まあ待て待て。ちょっと確かめたい事がある。サララ、呪いはそのルタオなんとかにかけられたのか?」

「……そうだ」

「解呪条件は?」

「……自分を倒せば解ける、と師に言われている」

「ああ、だから試練から逃げてると死ぬわけか。生きるためには戦いまくって強くなって、最強生物に勝つしかないと。修羅過ぎるな」

「……さっきから何が言いたい」


 苛立ちを帯びたサララに、アマノは単刀直入に言った。


「すまん回りくどかった。天文術式で呪い解くから研究に協力してくれ」


 は? という女性二人の声が重なった。


「アマノ、ルタオ=クラズテゥクの呪いだぞ。奴は私を歯牙にもかけない最強の生物なんだ。流石に無理が無いか」

「最強の『生物』って事はさ、いくら強くてもただの生き物なんだろ? ただの生き物の呪いの力が星の力に勝てる訳ないだろ。どれだけ規模が違うと思ってるんだ」

「それは」


 自信満々に言い切るアマノに言い返せない。

 トリウィアも宇宙に漂う星の想像を絶する巨大さ、天文現象が発する途方も無いエネルギーを学んでいる。

 スラエ世界に生きていた先入観で、ルタオ=クラズテゥクはどうしようもない絶対者だと思い込んでいたが、先入観を捨てて考えれば、確かにアマノの言う事は正しい。

 絶大な天体の力に比べれば、ルタオ=クラズテゥクの力もネズミの力も大差無いぐらいだ。


「理論上は可能かも知れないが。サララ、君の呪いが発動するまであとどれぐらいの猶予がある?」

「師の呪いが解けるわけ」

「いいから」

「……五年と、少し」


 今度は「それなら間に合わない」というトリウィアの台詞と「それなら間に合う」というアマノの台詞が重なった。

 二人は顔を見合わせた。


「え、間に合わないか?」

「データ蓄積の時間は短縮できないだろう?」

「一回か二回ブレイクスルーがあればいけるだろ」

「それはそうかも知れないが、奇跡に頼るようなものではないかな?」

「ブレイクスルーを起こす奇跡とルタオなんとかに勝つ奇跡。どっちが有り得る?」

「……ブレイクスルー」

「だろ。呪いを解く事そのものが魔法の研究にもなるしさ。しっかりした目的を設定して研究した方がやりがい無いか?」


 トリウィアは沈黙した。

 研究者の性か、トリウィアは理詰めの論法に弱かった。


「サララはどうだ? 協力してくれるか? 協力してくれないなら、まあ、殺す事になるから、半分脅しみたいなもんだけど」


 尋ねられたサララはアマノを不安げに見て、まだ自分を踏みつけているトリウィアを縋るように見た。


「魔女トリウィア。本当に。本当に呪いは解けるのか」

「……可能性はあるね」

「それなら、お願いしたい。私にできる事ならなんでもする。一度殺そうとした身で信用は得られないと思う。でも、私は殺したくないし、死にたくない」


 そう言うサララは殉職の覚悟を決めた聖職者のようだった。

 それに頷いたアマノは、先程から嫌な予感しかしないトリウィアに向き直った。


「そういう訳だから、トリウィア。負担をかけて悪いとは思う。自分を殺そうとした奴だ、いい気分ではないと思う。危険もある。かわいそうだから、なんて私情も否定はしない。それでもお願いしたい」

「……何を?」

「サララを屋敷に置いてやれないか?」


 理屈を抜きにして、アマノに女は近づけたく無い。それが男が好きそうな「かわいそうな女」ならなおさら。しかしアマノの願いは叶えたい。

 トリウィアは複雑な心境を静謐な書庫のように穏やかな表情の下に隠し、数瞬の内に散々悩んだが、土下座するアマノに結局頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ