表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 藤本諄子

今私は苦しい。胸の上に文鎮でも乗ったような苦しさ。でもこの苦しさは、誰にもわからない。気のせいとか、気分次第とか、軽々しく言わないでもらいたい。眠ることさえできないんだから。

精神的な問題と言われても、では、それを解決するにはどうしたら、いいか、は、全く教えてはくれないし、自分で考えろと言うなら、ヒントをおしえてほしいものである。でも、口に出していえば、バカとか、甘えているとどなられる。こうなれば、もう、自分なんか生きていても仕方ない気がする。

私は、フラりと外へ出た。みんな働いている時間だから、メールしても返答がなくて当たり前。そもそも、人間は働かないと正常でいられないと、私は教わってきた。うんたしかにそうだ。今働いていないから、わたしも、良からぬことをかんがえてしまう。だから、犯罪をおかす。うん、その通りだ。私は高校時代にそう教えられた。いま、病気になって十年近く経つが、いまでも思い出してしまう。まあ、仕方ないんだけど。

つまり結論をいえば、よい点数をとらなければ世の中は少しも楽しくはないのだ。

私は銀行に向かった。私は、亡き父母が残した貯金で生活している。父母が生きていたときはそれなりに楽しく暮らすことができたが、今は、ふたおやともない。どうせ結婚もできないし、こんな大金、持っていてもしかたないだろう。何より、小学校から、高校まで友達もない。若いときは、インターネットで何人か、友人はいたが、所詮ネットはネットであり、私が望んでいた、つきあいかたではなかった。

銀行の扉があいた。私はATMをそうさできないので、いつも窓口にいる。まあ、手数料がかかってしまうが、仕方のないことであった。というよりは、気にしていなかった。

すると、どどどっとおとがして、おばあさんが入ってきた。そして、いきなり窓口へ来て、こんなことを言った。

「すみません、孫から電話があって、どうしても500万円必要なんです。」

「ああ、それは、いまはやりの、振り込め詐欺というものでしょうね。」

と、店長がいった。しかし、おばあさんは耳が遠いらしい。

「はやりのなんだね!とにかく、孫のために、お金をだしてくれ。久々に電話がかかって来たと思ったらこれだもの、」

「いったい、何て言う風に、でんわが、かかって、きたのですか?」

店長はゆっくりいった。

「今大学生なんだけど、彼女が人工妊娠中絶をするから、その、費用を払わなければいけないと、かかってきた。」

「だからそれは、」

店長は説得しようとしたが、耳が遠いおばあさんには、全くわからず、ここがだめなら、他へいくといいだし、どんどんでていってしまった。

すると、おばあさんの財布から、何かがおちた。わたしは、思わずそれを拾った。

どこかの雑貨屋の、ポイントカードであった。裏を見ると、

「富士市川成島、、、浜本友」

とかいてある。川成島なら、私の家のすぐ近くだ。

私は、このカードをおばあさんに返さなければ行けないとおもい、自分の用は忘れて、川成島にいき、浜本という家をさがした。家はすぐわかった。

「やすお、今振り込んできたよ、500万円。これに懲りて、少しは勉強するんだよ。」

すると、電話の奥でこういう声がきこえてきた。

「何をいっているんだよ、ばあちゃん。俺のいっている大学はそこじゃないし、いま、勉強で彼女はいないんだ。」

「なんだね、もう一度いっておくれ。」

「とにかく、俺は、500万くれという、電話はしてないよ !」

「ともさん!」

と、私はおばあさんの家におもわずとびこんでしまった。

「ともさん!ともさん」

すると、台所から包丁を研ぐおと。台所にいくと、ともさんは、包丁で首を切ろうとしていた。

「ともさん、やめてください、自ら逝くことは、それだけはやめてください!」

私は自分の口からなぜこんな言葉がでるのか、わからなかった。

「だって、もう、財産を全て無くしてしまった。もう、あたしは、生きてる価値がない。」

「私だっておなじですよ。生きてる価値がない人間のひとりですよ。父母には、迷惑かけたまま、なんどお詫びをしても、足りないくらいですよ。働いてもいないし、何一つできませんでした。」

ともさんは、ボロボロとなきだした。

「たった一人の孫だけがわたしのいきがいだった。でも、娘たちは、わたしのことをきらっていた。もうにどと、娘も孫も、ここへは、来ないでしょう。」

淋しいんだな、と私はおもった。すると、ある考えがうかんだ。私の口座には、まだ、金がある。

「ともさん、よかったら、私と一緒に暮らしませんか?」

「えっ、、、」

「寂しい同士、いいじゃありませんか。私のマンションで暮らしましょうよ。明日、迎えに来ます。」

次の日、私は、友さんのいえに行った。友さんは、家を売り払う手続きをするため、わたしと、歩いていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ