23. ポイント大作戦
私はベッドの上に回復薬の材料を並べてひと睨み。
昨日のポイントがまったくたりない現状を確認して、さすがに少し焦ったといいますかなんといいますか。
朝起きて、ご飯を食べた私はイクルとロロに「今日は回復薬を作るから、ずっと宿にいる!」と告げた。
とりあえず箱庭の扉を増築するために、97,437ポイント稼がないといけないのです。
私の家と、もう1つ家を手に入れるとそこが繋がるというとても便利すぎるもの。今は私の家とラリールの街にあるお店ひなみの箱庭が繋がっている。
その便利すぎる扉をもう1つ設置するのが今の目標です。
「あ、そうだ。ポイント取得方法も確認しておこうっと」
【所持ポイント:2,563】
【交換日記】 3
【回復薬調合:下位】 1
【回復薬調合:中位】 2
【回復薬調合:上位】 3
【回復薬調合:特殊】 5
【魔物討伐:D】 5
【魔物討伐:C】 10
【魔物討伐:B】 20
【魔物討伐:A】 50
【魔物討伐:S】 100
【魔物討伐:魔王】 ∞(無限)
【《呪》の消滅】 1,000,000,000
【その他:特殊】 都度適切なポイント
「あれ、そうか……!」
レティスリール様をお助けしたら自動的に《呪》が消滅して、1,000,000,000ポイントが入るんじゃないだろうか。でも、桁が多すぎてどうしたらいいのかがわからない。
「10億ポイントなんて、逆に使い道が思い浮かばないよ」
それこそ、すきなだけ箱庭の扉を設置して、家も増築して。最終的にはお城になってしまうのではないだろうか。
それとも、今後もっとポイントが必要になってくるものが交換リストにならぶのかもしれない。そう考えると、やっぱりポイントは大切だ。
「でも、やっぱり回復薬を作るのが1番だよね」
魔物の討伐なんて、考えただけでも震えてしまう。
しかし、現状ここで作れる回復薬には限りがある。主に材料的な面で。
植物類は《天使の歌声》で増やすことができるからいいとしても、魔力水だけは使ってしまえばなくなってしまう。そんなに大量にお店で売っているわけでもないし、汲みに行くとしても、おそらく魔物が大量にいる危険な場所なのだろうなと想像して震える。
「ということは……」
体力回復薬
材料:体力草・水・瓶
真紅の回復薬
材料:赤色草・橙色草・水・瓶
「作れるのは体力回復薬と真紅の回復薬の2種類だけ、か。体力回復薬は1個1ポイントで、真紅の回復薬は1個2ポイントもらえる」
となると、作るのは真紅の回復薬のほうがいいかな。作り方は《天使の歌声》を使うだけというお手軽仕様なので、草の種類が増える程度では面倒とも思わない。
瓶はポイントで貰えばいいからお手軽だけれど、問題は出来上がった真紅の回復薬をどうするか……ということ。
さすがに持っていくわけには行かないし、かといって今日つくって今日中にすべて売るというのも難しいだろう。そうなると、ポイントを稼ぐのが難しく感じてしまう。
いっそ味がコーラだから芸人さんのように一気飲みでもしてみようかと阿呆なことを考えて、首を振る。駄目だめ、またイクルに呆れ顔をされてしまう。
「うーん……とりあえず、少し作ってみて考えようかな」
袋に土と赤色草、橙色草をそれぞれ入れて《天使の歌声》を使って成長させる。あとは瓶をポイントと交換してもらって……あ、そうか!
水がない。きょろきょろと見回してみるけれど、宿屋の部屋に水道などという立派なものはついていない。ましてや、水差しのようなものだって置いていない。
宿屋の裏手にある井戸から水を汲んでくるしかないのだけれど、あいにくそんなに水をたくさん入れられるものがない。かといって、外で、しかも井戸の前で回復薬の作成なんてしたら目立ってしまう。
「いっそ昨日の入り江に行ってみるとか? でも、海水でも回復薬ができるのかな?」
検証してみるのもいいかもしれないし、入り江に行ってみよう。海には人が多くいたけれど、入り江があった場所には人がいなかった。それに、最悪あの洞窟に入れば大丈夫だろうと安易に考える。
あとは勝手に行くとイクルに怒られるから許可をもらいたいのだけれど、どうだろうか。朝はすごく眠たそうな感じがしたけれど、なんだかわりとさっぱりしていたような気もするし。
「とりあえず、聞くだけ聞いてみようかな?」
私の1人部屋の隣に、イクルとロロの使う2人部屋がある。隣同士なので連絡もとりやすくて、お手軽でいいのです。
そっと扉をノックすれば、中からイクルの声が「どうぞ」と私を促した。
寝ていたかな? と、そう思って扉をそっと扉を開けてみればイクルは既に着替えていた。あれ、寝ないでまたレベルあげに行くのかなと思えば「出かけるんでしょ?」と。
「え、何でわかったの?」
「だって、回復薬を作るにしても材料がたりないでしょ」
「あ、うん、その通りです…………」
既に私が考えていることはお見通しだった、ということか。ちょっぴり悔しいような気もするけれど、イクルには敵わないのだ仕方がないと早々に諦める。人生、誰かを素直に認めることも大切です。
いや、そもそもイクルには最初からわかっていたのか。むむ、私もしっかり考えておかないと。
「でも、イクル疲れてるよね?」
確か徹夜でレベル上げとかハードすぎることしてましたよね? そう思って様子を伺うけれど、「別にこれくらい大丈夫だよ」と頼もしい返事が返って来る。
身体も鍛えているからだろうか。あまり疲れていなさそうだし、若さもあるのかもしれない。
「それに、今寝ると夜に寝れなくなるしね」
「あぁ、確かに。じゃぁ、お願いしていいのかな?」
「もちろん。というか、ひなみ様は遠慮し過ぎ。もっと俺にあれこれ言っていいんだよ?」
やれやれと鞄を持って、イクルがドアまでやってくる。
簡単に言ってくれるけれど、そんな図々しいことができるとは思えない。私はそんなに我が強いわけではないし、どちらかと言えば申し訳ないと思ってしまうタイプで。
正直、そんな私がイクルと契約をしたこと事態が奇跡だとすら思っている。
「ちょっと、気にし過ぎ。ちなみに、ロロは買い物にいったから」
「う、うん。ありがとうね、イクル」
「とりあえず場所は……昨日の入り江とか?」
私が考えていたのと同じ提案をされて、笑って頷く。
とりあえず鞄をもって、入り江に向けて出発です!
◇ ◇ ◇
「《天使の歌声》」
入り江の隅っこに、赤色草・橙色草・瓶を並べる。ちなみに、水は海水を使用しております。
失敗したりするかな、塩水だし。と、若干不安はあったのだけれど、なんなく成功して私の目の前には大量の真紅の回復薬が転がっている。
薬草を袋に入れて育てているため、材料の量的に1回にできる真紅の回復薬の数は10個程度。あまり効率はよくないかもしれないけれど、家でもないしこのくらいが丁度いいのかもしれない。
「……でも、そんなに作ってどうするのさ?」
「ポイントを貯めるの! ほら、箱庭の扉を追加したくて。まぁ、どこに追加するとかはまだ未定だけど……」
「あー……うん。それもそうだけど、作った真紅の回復薬はどうするつもりさ」
「………………」
目の前には、何回か作った為に真紅の回復薬が50個ほど。
イクルに無計画ですと説明するわけにもいかなくて、あははと乾いた笑みだけを浮かべておいた。すぐに「はぁ」と大きなため息が耳に入り、呆れを通り越して無表情のイクルがいた。
ごめん、ちゃんと今から考えるから見捨てないでください。
「売るにも、こんな高性能の真紅の回復薬をそこらへんで売るわけにも行かないし。かといって使う当てもないし……」
「うぅぅ。ご、ごめん。とにかくポイントを稼がないといけないと思って」
「はいはい。それかいっそ、置いて行って帰りに持って帰る?」
「え?」
しゅんとしていた顔を上げてイクルを見れば、昨日行った入り江の洞窟を視線で指した。
確かに、この洞窟であれば他の人が入る確率は低そうだし、置いておいても盗まれる……ということもなさそうだ。
「うん、そうしよう! よかった、イクルがいなかったらこんな名案なかったよ!」
「大げさだよ。とりあえず、今日のところは後50個で我慢しなよね。これ以上作ったって、持って帰るのもきついだろうし」
「そうだね、空き瓶のまま置いておくのも微妙だし……」
とりあえず、先に作り上げた真紅の回復薬50個を洞窟入ってすぐのところへ置いて入り江へともどる。
後は空き瓶が50個あるので、これを真紅の回復薬にして終了です。
「《天使の歌声》!」
まずは袋に入った赤色草と橙色草を成長させて材料を作る。そしてもう1度《天使の歌声》を使えば真紅の回復薬が完成する。
その工程を5回繰り返して、50個の真紅の回復薬が完成した。イクルと2人で洞窟のところへ置いて、一応見えないように少し大きめの石をカモフラージュとして前に置いておいた。
「うんうん、これで大丈夫だね!」
「そうだね。あとは、あまった赤色草10束と橙色草13束だけど。持っていても仕方がないし、ギルドで買い取りでもしてもらったら?」
「そうだね、まだ予備はちゃんと別にあるし。ギルドで買取とか、初めてだ」
イクルの案に乗ることにして、私は余った薬草を鞄にしまう。どうせなら真紅の回復薬も売ればいいかなと思ったけれど、それはイクルに拒否された。効果がいいので変な騒ぎになると面倒だから、と。
確かにそうかもしれないと、頷きながら私とイクルは港街にある冒険者ギルドを目指すことにした。
入り江からのんびりと街へ歩いて、大きな通りを進むとそこには剣と盾の看板があった。ラリールの街でもみたそれに、剣と盾の看板はギルドの目印なんだろうなと思う。
少しざわついた室内に入れば、いかにも冒険者です! という、装備を纏った人が何人もいた。掲示板に張られているお知らせのようなものを見たり、カウンターで情報を得ていたり、パーティーメンバーへと勧誘している人もいた。
思っていたよりも活気があったので、少し気おされてしまう。が、こちらにはイクルさんがいるので怖くなんてないですよ! たよりにしてますイクル先輩!
右奥のカウンターで素材の買取をしているようで、私は鞄から赤色草と橙色草を取り出して猫耳のお姉さんへと渡した。
「はい、買取ですね!」
「お願いします」
「確認します。ええと、赤色草が10束、橙色草が13束ですね。状態もいいですねぇ……これであれば、赤色草が1束100リル、橙色草が1束200リル。合計で、3,600リルです。よろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
そういえば、薬草の相場は知らないなと思い出す。イクルが何も言わないところを見るとおそらく適正価格なのだろうけど……結構いいお値段になっている。これだけあれば、1人だったら結構いい感じの宿に泊まることだってできるのに。
スキルのおかげとはいえ、なんだか申し訳ないと思ってしまう私は小心者なのだろうか。
ギルドを後にして、私とイクルはカフェに入ってお茶をすることにして……注文をして席についたのですが、イクルが何か言いた気に私を見ているのはきっと気のせいではないと思う。
どうしたんだろうと思ったけれど、その顔が呆れ顔なのでなんとなく言いたいことの察しがついてしまった。さらにそれを察したらしいイクルが、やれやれと言葉を紡ぐ。
「ひなみ様は、別に悪事を働いてお金を得ているわけではないんだから。気にしすぎ」
「いや、わかってるけど……さ。こんな楽してていいのかなぁって」
「ふぅ。ひなみ様は、自分が楽してると思ってるの? 違う世界からいきなりレティスリールに連れてこられたのに?」
「…………」
「俺は、ひなみ様はすごい頑張ってると思うよ?」
たまに見せる、真っ直ぐな瞳のイクル。
いつもうじうじ悩んでいる私を立ち直らせてくれて、ひっぱってくれる。私にはもったいないくらいにしっかりしていて、強いと思う。
そう思うと、私もやる気がでてくるというか、しっかりしなければという思いが強くなる。
「ありがとう、イクル。うん、ちゃんと頑張れそうだよ!」
「はいはい」
「うん! 明日はアグディスだもんね」
そう、明日はやっと〈アグディス〉に上陸するのです。
アルフレッドさんのおかげでかなりショートカットしたとはいえ、冒険初心者の私に長旅は辛いのです。でも、まだまだ先は長い。
明日から気合を入れて頑張るために、今は注文したフルーツを堪能することにしましょう。




