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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第3章 呪いの歌
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18. ひなみとアルフレッド - 2

「つまり……ひなみのそれは、スキルということか」

「まぁ、そういう感じです」



 私の笑顔では切り抜けられなかった。

 アルフレッドさんに「どういうことだ」と真剣な瞳で問われ……私は、スキルで生成できることを説明した。もちろん、リグ様のことや私が日本からきたということは言わずに。



「そんな珍しいスキルがあるとは知らなかった。……ひなみ、ほかにも知っている人はいるのか?」

「あ、えと。イクルとまろが知ってます」

「そうか。俺だったからよかったものの……絶対に他者の前では使うな」



 深い深紅の瞳が、私にその深刻さをつきつける。

 ぎゅっと手を握りしめて、ひとつ頷きを返して返事を返す。

 私のことを真剣に考えてくれる優しいアルフレッドさんに、「すみませんでした、ありがとうございます」と伝えて今後は気を引きしめて注意をしないといけないなと思う。

 というか、アルフレッドさんには助けてもらってばかりだ。街に行ったときも、呪奴隷であるイクルのことも、お店を買うときも、市場で回復薬(ポーション)を売り始めたときだって。



「……私、アルフレッドさんにすごく助けてもらってますよね。今日だって……アルフレッドさんがいなかったらどうなっていたか」

「なんだ、そんなこと。俺が好きでやっているのだから、ひなみが気にする必要はない。それに、ひなみの回復薬(ポーション)にはいつも助けられる」



 私の言葉に、礼を言うのはこちらだとアルフレッドさんにも「ありがとう」と言われてしまう。それはこちらの台詞なのに、こんなところもアルフレッドさんの優しさと、強さなんだろうなと思う。



「じゃぁ、私はがんばって回復薬(ポーション)を作りますね」

「あぁ。だが、注意して作ってくれ」

「む、わかってます。……気をつけます」



 そう言って、2人で笑った。

 アルフレッドさんに、スキルについて強く聞かれたりしたらどうしようとか……そんな不安は一瞬で吹き飛んでしまった。それどころか、私の心配をしてくれる。本当に、16歳とは思えないですよアルフレッド様。

 普通であれば根掘り葉掘り聞かれてしまったり、最悪……いや、考えるのは止めよう。今の私にできることは注意して油断なく過ごすことです。



「そういえば、アグディスには何をしに?」

「あ、あー……」

「ひなみ?」



 不意にされた質問に、私は言葉を詰まらせる。まさか、レティスリール様に会いに行くと言うわけにもいかない。どうしようかなと考えていれば、「別に無理に言わなくていい」と気を使われてしまった。



「何か、しないといけないことがあるのだろう……?」

「え?」

「迷いの森の奥に、ひなみのような女の子が1人で暮らしていたんだ。何か理由があることくらいはわかるさ。それが何かまでは、わからないが」

「……アルフレッドさんには、敵いませんね」



 そうか、そうだったんだ。アルフレッドさんは、そこまで自分で考えていたんだ。でも、私を困らせないように気を使ってくれていたんだ。

 そう思えば、アルフレッドさんとは確かにほどよい距離感だったような気がする。忙しいということもあっただろうけれど、必要以上に干渉されることはなかった。



「上手くいったら、報告します」

「そうか……楽しみにしている」

「はい!」



 そう、上手く行けば……きっと世界は変わる。

 根拠はないのだけれど、私はなぜかそんな気がするんです。

 レティスリール様に愛されたこの世界は、基本的に美しい。魔物という恐怖の対象はいるけれど、自然はとっても綺麗なんです。

 それからはシアちゃんのこととか、アグディスのことを話しながらゆっくりさせてもらった。



 しばらくして、イクルとロロが部屋へとやってきて、今後のことを少し話した。





「ううううぅぅぅぅぅっ!」

「ひなみ様、そんなに力まなくても大丈夫だよ」

『高いところが怖いぽ?』



 ただいま上空、なうですうううぅぅぅ!



 作戦会議を終えて戻ってきたイクルの言葉は、予想をしていたそれだった。「歩いて次の街に行くか、このままここで新しい馬車を待つかだね。でも、その場合だと2日くらい待つみたい」、と。

 乗っているメンバーが冒険者だということもあり、迎えの馬車を用意してもらうのは難しく時間がかかるそうだ。魔物の処理に人員がさかれている、というのが1番の問題点だ。

 そこで、それならばとアルフレッドさんが送っていくと申し出てくれた。私の意思はイクルによってさらりと流されて……現在アルフレッドさんのドラゴンであるシュトラインの上です。



「ひなみはなれないな。乗るのは2度目だろう? シュトラインはスピードがあるから、このまま1日も飛べば港町の手前の街にはつく。もう少し我慢してくれ」

「そ、それってもう少しじゃにゃいですよね!?」

「なれないのに喋ると噛むぞ」



 もうかみましたよ! にゃいってなんだろうとしょんぼりしつつ、喋らないほうがいいとアルフレッドさんから助言を貰う。

 初めて街に行ったときよりもスピードが速いので、喋るのが大変なんですよ。それなのに平然としているイクルとロロは人間じゃないのではないだろうか。あ、ロロはスライムだった……。

 前から順に、アルフレッドさん、私、イクル。イクルの鞄にロロがちょんと入っている。私は挟まれているから落ちることはないと思うけれど……イクルが落ちないか結構はらはらしているのです。

 3メートルの、まだ子供のドラゴン。それでも大きいのですが、いかんせん3人乗るとぎゅうぎゅうです。



「そういえば、本当に後始末を任せてしまっていいんですか?」

「あぁ、問題ない。事情も聞くことができたしな。ただ、何かあったらギルドから連絡がいくと思う」

「わかりました」



 噛んでしまうので、しゃべらない私の変わりにイクルがアルフレッド様にいろいろと確認をしている。先ほどの魔物の群れと、ドラゴンに関して。私たちは被害者の立場ではあるけれど、大きく関わっているからいろいろ聞かれることがあるらしい。事情聴取のようなものだろうか。

 その役目は、前衛術師の冒険者さんが名乗りを上げてくれた。特に全員が説明をしなくていいようで、代表として行ってもらうことになったのです。

 こういったものは、冒険者ギルドが調査を国などと連携して行う。だから、何か詳しく聞きたいことがあったりした場合はギルドから連絡がくるらしい。

 そんなことを会話から聞きつつ、眼下を見れば私たちが今日到着する予定だった街が広がった。



「うわあぁぁ……もうこんにゃとこひょ、ふぐ」

「はいはい、寝てていいから」

「うぐぐぐ……」



 すごい風のせいでうまく喋れないんですよ!

 なんで2人は普通なのですか! あ、でもロロもさっき普通に喋ってた。そしてこんな状況下で眠れるわけがないのですよイクルさん。

 うぐぐぐと唸りつつも、私は大人しくすることにした。喋ればしゃべっただけ墓穴をほっていく気がしたからです。

 いつかきっと、私もドラゴンを華麗に乗り回してやるんだ……。



「まぁ、この状況でしっかり喋るにはなかなか難しいだろう。可能な限り揺れないようにするから、寝ていろ。大丈夫だと思っていても、魔物の群れに遭遇したんだ。精神も、緊張した体も疲れているだろう」

「……ひゃい」

「「『…………』」」



 みんなの沈黙が辛い。

 私は仕方なく、背後のイクルに背を預けて瞳を閉じた。特に眠いわけではないので、気分的なものではあるけれど。こうやって落ち着ける環境があるのはとても大切なことだなと思った。







 ◇ ◇ ◇



「イクル、ひなみの荷物を頼む」

「それはいいですけど、ひなみ様も預かりますよ?」

「大丈夫だ」



 ふわりと体が宙に浮いた気がして、少し意識が覚醒して行く。耳にアルフレッドさんとイクルの声が届く。とろんとした意識に、あ、寝ていたんだと思ってはっとした。



「あぁ、起きたか?」

「……はい。私、寝ちゃったんですね」

「ずっと飛んでいたからな、宿を取ったからもう少しまってろ」

「え、えと……」



 はい、と。そう返事をしようとして横抱きにされていることに気付く。慌てておろしてもらおうとしたけれど、「問題ない」と返事をされる。何が問題ないんだろうと思いつつも、疲れ果ててしまっているのか上手くからだが動かない。

 その横でイクルが宿屋の手続きをして、部屋を取ってくれていた。



「アルフレッドさん、もう大丈夫ですよ」

「そうか? じゃぁ、気を付けろよ。ずっとシュトラインの上で寝ていたから、体がふらつくはずだ」

「え……うおっと」



 すとんと床におろしてもらい、アルフレッドさんが言うや否や上手く力が入らずふらついてしまった。すぐにアルフレッドさんが支えてくれて、「部屋まで連れて行くか?」と聞いてくれる。

 さすがドラゴンにずっと乗っていただけある。意外に体は疲れてしまったいたのかもしれない。



「とりあえず、大丈夫です。いろいろすみません……」

「構わない、今日はしっかり休め。疲れているだろう」

「そうですね。ありがとうございます」



 たっぷりドラゴンの上で昼寝をしたので眠気は不明だけれど、体はふらふらする。とりあえず、お風呂に入ってふわーっとしたいかもしれない。



「まったく、ひなみは放っておくと危なっかしいな。妹がもう1人できたみたいだ」

「えぇぇ! 私ってそんな危なっかしいですか? これでもしっかりしているつもりなんです」



 心意気的には!



「変に抜けているからな。先ほどのスキルもあるし、あまり無茶はするなよ?」

「う、善処します……よ?」



 あははははと乾いた笑いしかでません。

 善処しますとか確約できない感じがただよって微妙ですが、絶対頑張って注意しますよと。絶対ですよ。

 ぐぐっと背伸びをして、体のふらつきがなおってきたなと思う。再度アルフレッドさんにお礼を言って、また回復薬(ポーション)を作ったらお礼に持って行こうと思う。



「まったく、ひなみらしいな。まぁ、何か有ればまた助けてやるから呼べばいい」

「はい、ありがとうございます」



 勇者パーティーのすごい魔術師であるアルフレッドさんにそんなことを言ってもらえるなんて、嬉しい反面申し訳ないとも思ってしまう。

 でも、助かることも事実なわけで。特に今回の魔物とドラゴン襲撃は大変だった。なんとなく幸先が不安ではあるけれども、アルフレッドさんのおかげでだいぶ早く進むことができたから……きっといいのだろう。



「さて、と。俺はこのままラリールに戻る」

「え? だってもう、夕方ですよ……?」

「あぁ、問題ない。夜に飛ぶことはなれているからな」



 いやいやいやいや、おかしいですアルフレッドさん。

 確かに満天の星空だから真っ暗闇……というわけではないかもしれないけれど、絶対安心というわけではないと思うのですが。やっぱり異世界だから私の考えは甘ちゃんなのだろうかと思いつつ……そんなことないよね?



「ひなみ様、部屋とれたよ」

「あ、ありがとう」

「うん。アルフレッド様も、ここまでありがとうございます」

「あぁ、気にするな。……イクル、ひなみのことはしっかり見ていろよ?」



 とん、と。アルフレッドさんがイクルの胸を叩いて「任せたぞ」と。イクルもそれに真剣な瞳で頷いて、「わかりました」と返事をした。



 ……え、私ってそんなに危なっかしい?

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