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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第3章 呪いの歌
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15. 魔物攻防戦 - 1

今日で箱庭の薬術師が1周年!

すごいすごい!!

と、ひとりで盛り上がってみます。

更新間に合ってよかったー!

 どきりと、心臓がはねた。

 階下から、外から聞こえる「魔物の大群だ!!」という叫び声が私の耳へと届く。

 私が今いる小屋は、安全な草原なはず。魔物は出るけれど、基本的に弱いものが数匹程度と、そう聞いていた。



「……どうして、大群なんて」



 ぶるりと震えた身体は、一番正直だなと苦笑する。

 その後すぐに部屋へイクルとロロが飛び込んできて、状況を説明してくれた。



「ひなみ様、とりあえずすぐに出発するのは無理そうだから」

『ちょ、イクルってば軽すぎるぽ! 魔物の大群ぽ!』



 イクルはいつも通りだった。

 ロロに「わかってるよ」とだけ言って、私には絶対部屋からでないようにときつく言われる。まぁ、私は戦力にもならないし足手まといがおちです。

 まぁ、それはいいとしても。いや、よくはないんですけどね。



「規模は……おそらく300程度の魔物の群れかな。ここまでの距離は3キロといったところか……」

「『300っ!?』」

「こちらの戦力は……あの乗合馬車にいたメンバーのみ。近くの街や村から助けは来ると思うから、それまでしのぐかいっそ倒すかだね」



 イクルの冷静な声のあとに、私とロロの驚きの声が重なる。

 そしてイクルさん、300の魔物をこの小屋にいるメンツで倒すのは無理があると思います。乗合馬車に乗っていた人を順番に思い返してみる。



 男性3人組みのパーティーと、女性3人男性1人のパーティー、そして私たち。

 私とロロを戦力に入れないとしたら、8人。

 あとは御者の人が2人。だけど、この人たちは戦えるのかわからない。戦えるのであれば、こちらの戦力が10人だけれど……と、考える。

 でも、そうだとしても1人あたり30匹の魔物を倒さないといけない計算になる。そんなの不可能だし、回復手段だって限られてしまう。

 私の背中を冷や汗が伝って、どうしよう、これって絶体絶命なのではないかと考えがよぎる。



「まぁ、とりあえず魔物は他の冒険者にまかせてひとまず待機だね」

「えっ!?」

『ぽっ!』

「何を驚いているのさ。俺はひなみ様の護衛だから離れられないし……まぁ、ロロが行くのを止めたりはしないけど」

『そんなところに行ったら死んでしまうぽ……』



 てっきりイクルは魔物退治をするのかと思っていたけれど、そうではないらしい。

 まぁ確かに私の護衛だし、こんな魔物だらけのところで離れるわけには……うん、いけないかもしれません。しかしイクルはかなり強い、私が独占してしまうのも申し訳ないし。

 そもそも、他の人たちはどうするつもりなんだろうか。戦うのか、防御か、逃げるのか。でも、さっきのイクルを見ると逃げるという道はなさそうに思える。



「まぁ、確かにそうかもしれないけど。他の冒険者さんとかがどうするかは、私たちも把握していたほうがいいと思う。1度下に行って話を聞きたいんだけど……いいかな?」

「ん、わかったよ」

『作戦会議、燃えるぽー』

「…………まぁ、ほどほどにね」



 何がほどほどなんですかイクルさん。

 とりあえず、私はイクルとロロを連れてリビングへと降りた。そこでは、机を囲みながら……ロロ曰く作戦会議が行われていた。

 かなり切羽詰まった様子だろうかと思っていたけれど、そこまで張りつめた雰囲気は感じられなかった。何かいい作戦があるのか、それとも実はすごい冒険者の人が乗り合い馬車に乗っていたのだろうか。



「あぁ……今、どうしようか考えていたのよ。ほら、ここは草原で立地的には私たちが不利でしょう?」「あ、はい……」



 私に気付いた女性の冒険者さんが、丁寧に現状を説明してくれた。

 簡単に言えば、この小屋を拠点というかたちにして防御をするということだ。小屋に結界を張って、魔法と弓で魔物を攻撃するのがメインだそう。

 一応、初期段階では前衛が前にでて戦うそうだけれども、草原という立地なので囲まれてしまう。なので、そうなる前に小屋へ退却し、魔法と弓をメインで応戦する。



 現在の戦力についても教えてくれた。ちなみに、御者の2人も戦えるということも教えて貰う。


 男性3人のパーティー

 前衛術師 2人

 魔術師 1人


 男性1人・女性3人のパーティー

 前衛術師 1人

 弓術師 2人

 回復術師 1人


 御者の2人

 前衛術師 2人


 そして私、イクル、ロロ。



 前衛が5人で、魔術師1人、弓術師2人、回復術師1人。プラスイクルが戦力になるくらいだけど……って、あれ?



「これだと、魔法で敵を倒すっていう作戦が厳しくないですか?」

「……そうなのよね。だから、援軍を待つと言ったほうが正しいかしらね」

「援軍……」

「連絡は取ったから、きっとすぐに来てくれる。私たちは、それまで持ちこたえるの」



 どうやら弓術師だったらしいお姉さんが、ぐっと弓を力強く握る。その声に、他の冒険者の人たちも「もちろんだ」と気合を入れる。

 そんな中、何もできない自分がもどかしい。弓はあるけど、矢は3本だけ。これでは戦力にならない。でも、1番の理由は……魔物を前にして恐怖してしまうということが簡単にわかる。

 すぐ隣にいたイクルの服をぎゅっと掴めば、呆れた顔をしつつも頭を撫でてくれた。



「ほら、ひなみ様は部屋に……」

「……イクル、私ここにいる。できることはあまりないけど、手持ちの回復薬(ポーション)ならあるし。それに、部屋にいるのも不安だから」

「まったく。俺の側から離れないって約束するならいいよ」



 イクルの言葉に頷いて、心遣いに感謝する。他の冒険者の人も、「無理はするなよ」と私を気遣ってくれた。自分が情けなく思ってしまうけれど、こればかりはどうしようもない。せめて、自分のできることをきちんとしよう。

 私は鞄の中から回復薬(ポーション)を取りだして、机の上へと置いていく。

 みんなが頑張ってくれているのに、私だけ部屋にいるのは申し訳ない。せめて、リビングスペースで補給組……というわけではないけれど、せめて。

 そうすると、驚いたように冒険者の人が声をあげた。



「それ、ひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)回復薬(ポーション)じゃないか! しかもそんなにたくさん持ってるなんて、お嬢ちゃん貴族か何かか!?」

「えっ! いや、えと……本人です」

「「「ええええぇぇぇぇ!!」」」



 いや、私が驚きたいんですけど。

 私が回復薬(ポーション)を机の上に並べたら、どっと部屋の空気が変わった。すごいと冒険者の人が口々に「使ったそれ!」と言ってくれる。

 なに、どういうこと? みんな私の回復薬(ポーション)を知ってくれているんだろうか。そう思っていれば、男性3人組のパーティーの人が嬉しそうに話しかけてくれた。



「それ、超美味い回復薬(ポーション)だよな! 俺も何回か買わせてもらったんだ」

「そうだったんですか! ありがとうございます」

「あ、私も買ったわ!」

「僕は収入がもう少しあがったらだなぁ」

「俺はその回復薬(ポーション)を使って彼女の好感度を上げるんだ!」



 ちょ、最後の人使い方が間違っていませんか!

 まさかこんなに私の回復(ポーション)を買ったり知っててくれたなんて、驚きつつもすごい嬉しい。この世界にきてから2年と少し……もうすぐ3年になるのかな? 結構長い時間だけど、私はちゃんと頑張ってこれてたのかな。

 たくさんの人にありがとうと言いたいなと思う。だって、みんながいなかったら私は今ここにいない。それどころか、まだ家に引きこもっていたかもしれないし。

 シアちゃんに出会えたことが幸せだし、その後はイクルに出会えたし。今はまろにロロもいる。それに、その……リグ様もいる、というか、気にかけてくれているし。

 こう考えると、私って幸せなんだなと思う。いや、今は魔物の群れが襲ってきそうで若干どころかかなりのピンチではあるのですけれどもね……?



「ってことは、あなたは薬術師ね。戦闘はできないだろうから、ここに待機してもらって情報の整理や回復薬(ポーション)の管理をお願いするわね」

「はいっ! 戦闘面ではお役に立てなくてすみません……」

「いいのよ。それぞれの役割を全うすることが大切なんだから」



 お姉さん格好いい……!! 私は大きく頷いて、ぐっと拳を握る。となりではイクルが「やれやれ」と呆れ顔をしている。イクルはなんだかんだで、本当に駄目でない限りはちゃんと私の気持ちを優先してくれる。



「さて、と。とりあえず現状確認をしつつ、魔物を倒そう。先頭の魔物はすぐそこまできている。あとは、発生原因を解明できればいいが……今は後回しだ。みんなが生き残ることを考えよう」

「「おう!!」」

「お、おー!!」



 しまった、かけ声に乗り遅れた恥ずかしい。

 いや、今はそんなことを気にしている場合じゃない。なんとなく笑いながら前衛術師組が小屋からでて、とりあえず現状をみるということで私も後に続いた。

 イクルとロロが先にでて、その後に私が続く。うーんと……見えないかな? あ、でも少し先に土ぼこりが見えて……?



「うそっ!! ハードウルフ!」

「なんだ、雑魚じゃねぇか!!」



 先頭の1番早い魔物を私が肉眼で確認すれば、私がもっともなじみ深い……というか、1番最初に苦い思いをしたあの魔物。

 怖いと思ったのは私だけだったようで、隣にいた冒険者は雑魚だと言って走り出した。

 なんですか、みなさん超強そうですけど……これは頼もしい。というか、ハードウルフを雑魚と言って突っ込んで行く冒険者のみなさま。あれ、この勢いなら魔物の300くらいあっという間に倒してしまうのではないだろうか……?

 現にイクルも小屋へ戻れと言わずに、ぼーっと魔物の群れを眺めているだけのように見える。ロロはなんだかそわそわしているみたいだけど、間違っても群れに突っ込まないように注意をする。



「ふああぁぁ……」

「イクル、眠い?」

「ん、大丈夫だよ」



 この状況下であくびをできるイクルって。さすがイクルさんとしか言えない。……そういえば、一晩レベル上げに行っていたことを思い出す。そうだ、イクルは寝てないんだ。

 ということは、できる限り戦闘に参加はしないほうがいい気がするけれど……どうだろう。寝不足で怪我をしてしまうという恐れだってある。でも、そういった判断は私よりイクルの方が的確だろうし、それに間違っても無茶はしないだろう。たぶん。イクルの判断に任せることにして、私は再度前を見た。



「楽勝だぜ! おいレン! 次はレッドウルフがくるぞ」

「あいよ。後ろは任せて暴れていーよ」

「回復は僕にまかせて。レッドウルフだと、数が多くなると厳しいでしょ」



 前衛の人が一旦報告に下がってきて、次にくる魔物がレッドウルフだということを教えてくれる。知らない魔物だけれど、きっとハードウルフと名前が似ているから同じような魔物なんだろうとあたりをつける。

 返事をしたのは魔術師の男性と、回復術師の男性。

 魔術師の人は、名前をレンと言うらしい。金髪さらさらの髪で、イケメンさんだ。隣の回復術師さんは、お姉さんたちとパーティーを組んでいると言っていた男の人。気が弱そうな印象を受ける、優しそうな茶髪の青年。

 魔法と回復、これはかなり頼もしいなと思いつつ、横をみれな女性2人が矢を放っていた。



「よっし! 1匹ゲット!! まだまだいくよー」

「もう、エリザベスってば……」

「ほらほら、アリスも頑張ってよ。まーた私が殲滅数で勝っちゃうよ?」

「もう! いつもそうなんだから……でも、負けないわ!」



 …………え、この状況下で勝負しているの?



「ねぇ、イクル」

「何?」

「イクルはレッドウルフって倒せる?」

「倒せるけど」

「…………そうなんだ」



 みんな、すごいなぁ。

 もしかしてはらはらしていたのは私だけなんだろうか。足下にいるロロを見れば『いけいけっぽー』と熱の入った応援を繰り広げていた。

 これは深刻な状態じゃなかったのか、と。そう思った、その瞬間に。



「ひなみ様、危ないっ!!」

「……あっ!?」



 突然後ろから体を引かれ、イクルの後ろに隠される。いったい何が!? そう思ったときにはガンッという衝撃音がして、イクルが魔物の攻撃を棍で受け止めていた。

 それは、大きな……青い鳥の魔物だった。鋭いくちばしと爪がイクルを狙い襲いかかる。地上ばかり見ていて、空を見ていなかった。そう悔やんでも今はもう遅い、私はどうすればいいのかと考えて……私をかばったままイクルが大きな鳥へ棍を振り上げた。



「イクル!!」

「ごめん、助けるのが遅れた」

「私は大丈夫だけど……っ」

「ん、そのままでいいよ。ひなみ様は、俺の後ろにいればいい……こいつはすぐに倒すから、問題ないよ」



 遅れるも何も、まったくの無傷だし全然間に合っているよと。そう叫びたいけれど上手く声がでない。どきどきと早い私の心臓が、伝う冷や汗が。私の足を恐怖ですくませる。

 弓術師のお姉さんがぎりっと大きな鳥を見るが、いかんせん私とイクルの近くにいるため弓を使うのも難しい。



『ひなみ、動けるぽ!?』

「あ、足が動かないかも……」

「わかってるよ。だからそのまま俺の後ろにいればいいから……」



 やれやれと呆れ顔をしつつ、イクルがフォローをしてくれる。まるでお見通しですねと思っていれば、イクルの棍から炎の龍が躍りでた。

 ……すごい、と。そう思ったときには大きな鳥が炎の龍に飲み込まれていた。え? と、私が瞬きした瞬間に……それくらい早く大きな鳥の魔物は消滅した。



「やだ、貴方そんなに強かったの?」

「すごいわ、オートリを一撃で倒すなんて!」

「「私も一撃で倒せるけど」」



 お姉さん2人がすごいと褒めた後、見事にお姉さん2人がはもった。

 イクルを褒めつつ自分のことも褒めていますよね? そしてこの魔物はオートリって言うのか……大きな鳥だから? ちょっと残念なネーミングだと思いながら空を見れば、オートリがいっぱいいた。



 …………え? いっぱい?



「いいいいい、い、い、いく」

「はいはい、わかってるよ」



 だって空にオートリが10匹くらいいるよ! どうようしてイクルの名前を上手く呼べないのは仕方がない。だって魔物が空にいっぱいいたら恐怖そのものというか、怖いですよ!!

 そんな私を見てお姉さんが笑い、「大丈夫」とオートリを次々矢で落としていった。



「すごい……」



 仕上げに魔術師のレンさんが炎の魔法を使って最後の1匹を仕留める。

 なんだもう、みんなすごく強い。安心してその場に座り込めば、ロロが心配してくれた。



『大丈夫ぽ? ひなみは小屋に入っていたほうがいいぽ』

「うん。ありがとう、ロロ。申し訳ないけど、そのほうが……」



「ドラゴンだ!!」

「「「ええぇッ!?」」」



 小屋に入って待機しようと思った瞬間、私の声に重ねて発せられた……緊迫した声色。

 そして眼前を見れば、遠いからか小さいけれど……おそらく近くでみたら大きいであろう、ドラゴンが空を優雅に舞っていた。

あ、リクエストいただいた箱庭小話も更新中です。

興味のあるかたはどうぞ。

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