14. クッション
タイトルに意味はないです。
思いつかなくて。。。
途中で休憩をはさみつつも、馬車にゆれること5時間くらい。
やばい、そろそろ揺れがすごくてお尻が限界かもしれないと思っているところで、本日の夜営場所へとたどり着いた。心底よかったと安堵して、今日泊まる予定の家……もとい小屋を見る。
周りは相変わらずの草原で、そこにぽつんと建っている小屋。こじんまりしていて、昔話とかにでてくる家みたいでなんだか可愛らしかった。
中に足を踏み入れれば、少し広めのリビング。おそらく何人もの人が一緒に使うから、きちんと広さを取っているんだろう。1階のはほとんどがリビングスペースで、2階には休むスペースとして何部屋か用意しているらしい。
「ひなみ様、ロロ。こっちの部屋を借りるからきて」
「あ、わかった」
『了解ぽ〜』
乗り合い馬車に乗っていたのは、私たちを含めて3組。
いずれも冒険者のパーティーで、新しい狩り場やダンジョンを求めて移動を行っているらしい。馬車の中で少しお話させてもらったけれど、皆さんいい人たちだった。
お男性3人組のパーティーと、男性1人女性3人のパーティー。女性ばっかりですごいなと思ったけれど、どうやら姉弟だったようで笑われてしまった。
いや、モテモテなんですね! と、言ってしまった私がいけないのはちゃんとわかっていますよ。
そんなことを思いつつイクルに続けば、ベッドが4つある部屋に通される。
「この小屋は1パーティーに1部屋借りることができるんだ。とは言っても、どこの小屋でも同じようなルールになっているかな」
「そうなの?」
「うん。作戦会議をしたり、人に教えたくないアイテムやスキルを持っている人もいるからね」
男女別ではないことを疑問に思えば、なるほどと納得できる理由をイクルに教えてもらう。ロロも隣で、『初めて会う他人よりは、パーティーメンバーが安心ぽ!』と教えてくれた。
それは確かに間違いない。それにこういった異世界では、あまり部屋割りを気にしたりしないのかもしれない。「わかった」とイクルに了承の返事をしてベッドへ腰掛けて荷物を降ろす。
決して柔らかいベッドではないのだけれど、昼間の馬車に比べたらかなりいい。
『明日も午前中に出発するぽ。それで、夕方前くらいに次の街につくみたいぽ』
「わかった。ありがとうね、ロロ」
『これくらい任せるぽ! アグディスまで一緒に連れて行ってもらえるんだから、おやすいごようぽ!』
えへへと胸を張りながら笑うロロに癒されつつ、そういえばどうしてアグディスに一緒に行くことになったのか。そういえば聞くのを忘れていたとイクルを見れば、何か納得したような顔で説明をしてくれた。
いやいやイクルさん? 私、まだ何を聞きたかったのか伝えていないのですがなぜわかるのでしょうか。
「ロロはアグディスの港町まで一緒だよ」
『そこにおばあちゃんが住んでいるんだぽ〜』
「え! そうだったんだ! 会うのが楽しみだねぇ」
『ぽ〜』
なんとなんと、おばあちゃんが!
ロロのお母さんかお父さんの実家なのかな? そういえば妹さんには会ったけど、ご両親はどうしているんだろう。なんとなくこの手の話題は聞きにくいし、今度の機会にしよう。
『でも、アグディスまでは遠くて行くのが大変なんだとん。そうしたら、イクルが一緒に来ていいって言ってくれたんだぽ〜! 感謝してもしきれないんだとんっ!』
「そうだったんだ。ロロがイクルの鞄に入ってたからびっくりしちゃったよ」
まったくもう、イクルもそんな大切なことなら先に伝えてくれていればよかったのに……! そしたら私だってお土産とか買ってきたりしたのに。
しかし済んだことは仕方がない。明日到着する街はそこそこ大きいらしいので、そこでお土産を買おう。
明日の街で1日休んで、その後はまた乗り合い馬車で移動。途中に小さな村を何個か通るらしい。そうしたらアグディスまで船が出ている港町。アグディスへ渡るまでに1ヶ月。まぁ、馬車での移動だからそれは仕方がない。車があれば数日、飛行機なら1日くらいでいけるのだろうか。
まぁ、それはいいとして。
現在私たちがいるのは〈サリトン大陸〉
ここは2人の王様がいて、それぞれ国を治めている。
1つは首都〈サリトン王国〉。
2つめは私がお店をやっている〈ラリール王国〉。
ちなみに〈アグディス大陸〉は王様が1人、〈ムシュバール大陸〉には皇帝が1人。そう考えると、王様が2人いるこの大陸は珍しいのかもしれない。
まぁでも、権力争いがなく平和に統治できているようなのでいいのかな。
「さてと。俺は夕飯が終わったら出かけてくるから、ひなみ様はちゃんと寝るんだよ」
「えっ!? 出かけるって、夜中ってこと?」
「そう。レベル上げに少しね。アグディスに行くなら、鍛えておいたほうが安心だし」
さらりと言ってくれはするんですがイクルさん。
そうか、教会でみたレベルもすごい上がってて驚いたけど……こうやって夜中にこっそりレベル上げをしていたのか……!! 全然気付かなかった自分が情けない。しかもイクルのレベルの上がり具合を見れば、それが数日程度の日数でないこともわかるわけで。
私はぐーすか寝て、イクルに甘えるのもなぁ。かといって、いきなり夜中に狩り……とかは、私にはハードルが高すぎる。
「そんな顔をしても連れて行かないよ。ちゃんと夜は休むこと。俺は馬車の中で寝てるから問題ないし」
「うぅん。まぁ、イクルがそうしたいなら私はいいと言うしかないよ。でも、十分気をつけてね。回復薬もいっぱい持って行ってね?」
「はいはい、わかったよ」
『イクルは強いから問題ないぽ』
うん、それは私も分かってるんだけどね。
私にイクルの行動を制限することはできないので、無茶をしないことだけは約束させてもらう。あと回復薬もたくさん持って行ってもらわねば。
こういうことがあると、やっぱりイクルの服と武器を新調しておいてよかったとほっとする。
「じゃぁ、夕飯を食べたら別行動で。ひなみ様はこの小屋からでないようにね。あと、ロロと一緒にいること」
「うん、わかった」
『ひなみのことはまかせるぽ〜!』
ロロが小さな騎士さんみたいで、なんだかとっても頼もしい。
夕飯を食べたら、日記を書いてロロと一緒に雑談をしながら寝てしまおう。実は馬車の揺れで結構……体力は限界だったりしなかったり。
◇ ◇ ◇
部屋に戻って雑談をしていれば、ロロが先に寝てしまった。
スライムも寝るんだなぁとしみじみ思いつつ、きっとロロもなれない旅で疲れているんだろうとそのままシーツをかけて上げる。
私もそろそろ寝ないと、明日の昼間がきつくなってしまう。鞄から交換日記を取り出して、リグ様への日記を書き始めることにした。
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もうすぐ1日が終わりです。
私は昨日同様に馬車にのって、5時間くらい揺られました。もうお尻が痛くて、電車で移動していたときが嘘みたいな毎日です。
街でクッションを買っておくか、家から持ってくればよかったと思っても後の祭りで。人生何事も経験ですよね。明日は少し大きめな街につくみたいなので、そこで旅を快適にできるアイテムとかがあればいいなぁと思っています。
もしリグ様のおすすめ必需品アイテムがあれば教えてください! 次の街で探してみようと思います。
まだまだ旅にはなれないので、少しずつベテランを目指して頑張ります! 私って、やればできる子だとは思うんです。リグ様のためにも、一生懸命頑張りますね!
あ、あと…… やっぱりリグ様の名前を呼んでスキルを発動するのは恥ずかしかなって。ただ、今はまだ安全だから何か防御しなきゃいけないという瞬間はないんですけどね。
イクルとロロがいるので、なんとなく心強いです。リグ様にも助けてもらって、イクルにロロに、シアちゃんみたいな友達もできて。私はすごい恵まれているなって、思います。
なので、私はその分……一生懸命リグ様のお役に立てるよう頑張りますね。
そうそう、すごいびっくりしたことがあって!
今一緒に旅をしているロロのおばあちゃんがアグディスにいるみたいです。ますます、スライムの生態系に謎を覚えている私です。
人間みたいに、普通に生活して家族がいて、子供も普通に産まれるんですかね? 謎です。でも、そういうのも含めて、いろいろなことを知っていきたいなって思います。
今日はもう休みますね、おやすみなさい。
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ぱたん。
交換日記を閉じて、ひといき。気持ちよさそうに寝ているロロを見て、私もそろそろ寝ないとと思う。イクルは今頃狩りをしているのかなぁと思うとはらはらするけれども。
「そもそも、イクルってどんなふうに狩るんだろう?」
基本的に一撃必殺だったし。まぁ、これは魔物が雑魚だった……ということもあるのだけれど。
きっとアグディスにいけばきっと見る機会もあるだろうと考えて、少しわくわくしてしまう。恐怖心がないのは、きっとイクルが強くて安心感があるからだろう。
1人だったら全力で逃げて引きこもっちゃうけどね……!
そんなことをベッドの上で考えていれば、私はいつのまにか眠りに落ちていた。
『ひなみ〜! 朝ご飯だぽ』
「う、うーん……」
『起きるぽ〜!』
「ん……おはよう、ロロ」
『おはようぽ〜!!』
気付いたら、私の上でロロがぴょんぴょんと跳ねていた。いったい何が!? と、思って驚いたが朝日の差し込む窓を見て朝だったのかと納得する。
眠いけれど、身体を頑張って起こして立ち上がる。背伸びをして、少しラジオ体操。ロロに『なにぽ?』と言われたので、朝の体操で健康にいいと教えたら一緒にやってくれた。手とかがあるわけではないので、同じリズムで跳ねるだけだけれども。
でもこれで今日も頑張れそうだと思っていれば、ノックがしてイクルが入ってくる。
「おはようひなみ様、ロロ。朝ご飯たけど、いける?」
『もちろんぽ!』
「うん、大丈夫。イクルも無事に戻ってきてくれてよかった〜!」
「心配性だね。大丈夫だよ」
あ、そんな朝から呆れ顔をしなくても。
イクルとロロに着替えてから行くことを伝えて、先に行ってもらう。私はその間にリグ様からの返事を見ようと交換日記を開く。
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おはよう、ひな。
やっぱりひなに名前で呼んでもらえるのは嬉しいね、ありがとう。
本当は僕が直接ひなを護ってあげたいんだけど、頻繁にそっちに行くことはできないから……ごめんね。
だから、ひながいつでも僕と一緒にいられるくらい強くなるのを待ってるね。
でも、ひなが僕のために頑張ってくれることがなによりも嬉しくて、幸せだよ。
とりあえずは、旅に必要になりそうなおすすめをベッドの横においておくから使ってみてね。
ひなの旅路が少しでも楽しくなると僕も嬉しいな。
あとはひながスライムに夢中すぎて、少し妬けちゃうかな?
確かに〈レティスリール〉では、スライムは普通と特殊の2種類があるからね。普通のスライムは、森とか草原ででる魔物のスライム。特殊なスライムは、一緒にいるロロのように知識を持ってしゃべり、人間と同じ様に生活するスライム。
どういう存在か教えてあげることもできるけど、それはひなが少しずつ知っていったほうが楽しいと思うから今は内緒にしておくね。
じゃぁ、今日も頑張ってね。
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「おすすめアイテム……? あ、これか!」
リグ様が用意してくれたらしい袋をみつけて中を見れば、そこには便利そうなアイテムが。
その中でも一際目をひいたのは、大きいお花形のクッション。直径50センチくらいある、白いお花の可愛いクッション。しかもすっごくやわらくて、肌触りもいい。
リグ様……すごく嬉しいけれど、これを外で使うのは少し恥ずかしいです。それに乗り合い馬車で使ったら汚れてしまいそうだし。
が、リグ様がせっかく用意してくれたのだから、ありがたく使わせてもらおうと思う。
あとは何が入っているのかなーと中をのぞいたところで、階下の……リビングから大声が聞こえた。
「魔物だ! 魔物の群れがきたぞっっ!!」
リグリス「お花に座ったひなは親指姫みたいで可愛いよね」
まろ「…………そうですね」
おっと忘れていました追記です。
もうすぐこの小説が1周年なので、小話リクエストをまた性懲りもなく受け付けます。
詳しくは活動報告にて!
http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/1146037/