13. スキル《神託》に選ばれし者
ようし、気合ばっちり、服装ばっちり!
神さ……リグ様にもらった、というか、ポイントで交換してもらった装備を身につける。花をモチーフにした可愛らしいそれは少し恥ずかしいけれど、今は15歳だしきっとそこまで違和感はないはず。だと思いたい。
今日は午前中に村を出て、乗合馬車で次の街を目指します。が、その前に《神託》のスキルをゲットするべく教会によります。
ロロは村でお買い物で、私とイクルの2人で教会へ行く。ロロは一足先に宿を出ているので、後は私とイクルが出るだけだけれども。
「あっ! イクル、待たせちゃった?」
「大丈夫」
張り切って部屋からでれば、既に支度を済ませたイクルが部屋の前に立っていた。
いつも先に支度をして待っていてくれるから、今日こそは先手を打とうと思っていたけれどどうやら失敗してしまったようだ。うーん、さすがはイクルさん。一筋縄ではいきません。
「ごめんね、次はイクルを追い抜くよ……!」
「……」
力を込めてイクルに私のガッツを伝えれば、無言で呆れ顔をされた。
おかしいな、そこは笑って期待してるよって言ってくれるところではないだろうか。
そんなことを考えていられるのも一瞬で、イクルは「行くよ」といって歩き始めた。相変わらずのイクルペースですが、私が世間知らずマイペースなので実はかなり助かっているのも事実。
出会った頃のイエスマンイクルが今も続いていたらと思うとちょっと怖い。だって、イクルだから何やってるんだろうと思いながら私が聞かないと教えてくれなさそうだし!
いやぁ、本当イクルときちんとお話できてよかったとしみじみ思いますね。
「あ、そうだひなみ様」
「ん?」
「教会だから料金っていうより寄付みたいな形になると思うよ」
「なるほど。相場の料金ってあるのかなぁ……? でも、うーん」
世界でたった3人しか取得していない《神託》スキルチャレンジ、1回1,000リル! みたいなものを少し想像していましたごめんなさい。
そうだよね、教会とかそういうところはお布施とか寄付とかそんな感じだよね。イクルに相場を訪ねるも、さすがに相場までは知らなかったようで首を傾げられてしまった。
今後もこの世界で暮らしていくことを考えると、少し多めに渡したほうがいいのかなとも考える。まぁ、相場を知らないから確実性はないんですけどね!
とりあえず教会について、話を聞いてから考えるのでもいいよね。
スキルを取得するには、祈りを捧げて聖水を飲む……だったかな。でも、必ずスキルを得られるわけではない。この世界の人口が何人かはしらないけれど、《神託》スキルを取得しているのはたったの3人だ。壁はかなり高いと思っていたほうがいいだろう。
神様じゃなくてリグ様にきっと取れると思うよと言われはしたが、それでも確実な言葉ではないわけで。
少し不安になりつつも、私はイクルと教会を目指すのです。
「こんにちは。お祈りですか?」
「は、は、は、はいいぃ!」
やばい声がおかしかった。
後ろでイクルが笑っているような気配がするが、そんなのは気にしていられません。
ステンドグラスがきらきらと輝く教会の扉をくぐれば、そこは花で溢れた教会だった。いたるところに花が飾ってあり、女神様の像が設置されている。
あぁ、レティスリール様を本当に大切にされているんだなと思うと、胸がきゅんとする。
絶対ぜったい、私がレティスリール様を見つけてみますからね! そう心で誓い、私は対応してくれた猫耳のお姉さんへと視線を戻した。
……猫村だから猫の獣人さんなんだろうか? って、そうじゃなくてですね。
「スキルの《神託》を取得したくて……」
「あぁ、神託ですね。では、こちらへどうぞ」
「はい」
馴れた感じで案内をしてくれるお姉さん。おそらくお手軽な方法だから誰しも1度は通る道なんだろうなと考える。だって、祈って聖水を飲んでスキルを覚えられでもすれば、世界で4人目の《神託》スキル所有者になれるのだから。
教会入ってすぐの礼拝堂で祈るのかと思っていたけれど、どんどんと進み地下へ続くと思われる階段を下るお姉さん。スキルに挑戦するときは違う礼拝堂があるのだろうか。
階段を下っていけば、壁が綺麗に作られていた建物から岩肌へと変化していった。少し肌寒くなったのを思えば、ここは地下道のようなところにつながっているのかもしれないと考える。
「あの、ここって……?」
「ここは地下の礼拝堂へ続く道です。《神託》スキルを取得するために祈りを捧げる場所は、その教会内で一番神聖な場所と決まっているのです。ここが、この教会で一番神聖な礼拝堂なんですよ」
「うわあぁ……! すごい、綺麗ですね」
思わず感嘆の声を上げてしまったが、これはどうしようもない。
地下の階段が終わり、少し歩いて広いところにでて……そこは地下の花畑だったのだから。太陽の光がないのに、綺麗な花が咲いている光景と言うのは圧巻で。
そして花畑の先には、小さな泉と女神様の像。
まさしく秘密の礼拝堂といった感じで、一番神聖というお姉さんの言葉をすっと受け止められた。
「でも、こんな地下で花が咲くんですね……」
「えぇ。これは特殊な花みたいです。私も詳しくは知らないのですが、あの小さな泉がすべての栄養を花に分け与えていると言われています。何度か薬術師の方にお分けしたりしましたが、結局わからずじまいで……」
「そうなんですね……」
薬術師が持っていった、か。
でも、私の知識ではこの花の使用用途は分からないしなぁ。今度もし必要になったら、分けてもらいにこよう。忘れないように……というか、こんな神秘的な光景を忘れることはないから大丈夫か。
「では、お2人でよろしいですか?」
「いや、俺は……」
「はいっ! お2人でお願いします!」
危ない危ない。イクルがナチュラルに断るからびっくりしちゃったよ。若干睨まれたような気がしたけれど、だって1人でチャレンジするのは怖いじゃないですか。
それとも実は昔チャレンジしたことがあったとか……かな? そうだよね、だってイクルは私と違ってこの世界の人間なわけだし。ちょっと強引だったかなーと思ってイクルをチラ見すれば、呆れ顔だった。うん、どうやら問題ないようです。
「では、泉の前で祈りを捧げてこれを飲み干してください。聖水になります」
「はい。ありがとうございます」
小瓶に入った聖水を受け取り、1つをイクルに渡す。もしかしてと思って、チャレンジしたことがあるか聞けば普通に「ないけど」と返事が帰ってきた。
うん、やっぱりイクルはイクルだったようだ。
お姉さんが泉の前で一礼をして後ろへと下がる。
それと入れ替わるように私とイクルが前へ出て、泉の前で膝をついた。
とはいえ、何を祈ればいいのかわからない。どうしようかと考えていれば、隣にいたイクルが聖水を飲み干した。え? イクルさん祈るの早くないですか? だってまだ10秒くらいしか経っていなかったと思うのだけれどどうだろうか。
後ろで控えていたお姉さんもあまりの速さに驚いていて、私は苦笑することしかできない。
まぁ、私は付き合ってもらった立場なので何か言うことなんてできないですけどね。
目を閉じて、手を合わせて女神像へと祈るポーズをとる。
この世界だから、リグ様というかレティスリール様への祈りなのかな? もちろんリグ様に祈ることも大切ではあるのですけれども。
レティスリール様、こんにちは。楠木ひなみです。こないだは、私の夢にいらしてくださってありがとうございます。今、貴女を捜してアグディス大陸に向かう旅の途中です。
まだ出発したばかりなのですぐに会えるわけではないですが、1日でも早くレティスリール様に会えるのを楽しみにしています。
いつも私はリグ様にお世話になっていて、すごいよくしてもらっていて。恩返しをするために、この世界で暮らしていきます。まだまだわからないことが多い私ですが、どうぞよろしくお願いします。
「ふぅ……んっ!」
心の中でレティスリール様に伝えたいことを思い描いて、小瓶の蓋を開けて聖水を飲み干した。一気に潔く、味の確認もせずに。
不味かったらどうしようと思っていたけれど、この聖水……どうやら味自体しないみたいだ? ちょっと安心しつつも、特に身体に変化がないので不安が襲う。
ほら、スキルを取得した実感とか、そういう身体の変化的なものがまったくない。
「ずいぶん長かったね」
「いやいや、イクルが短すぎたんだよ……!」
「あはは……では、もどりましょうか」
私たちのやり取りを見たお姉さんが苦笑しつつ、来た道をゆっくりともどっていく。
ステータスの確認をしたくてそわそわしてしまうが、今はそんな雰囲気ではないのでもう少し我慢しよう。結局寄付もいくらくらいがいいのか予想をつけられなかった。
10,000リルくらいでいいのかなと思いつつ、考えがあまりまとまらないうちに地上へと帰ってきてしまった。
階段を上がりきったところで、お姉さんがこちらへ振り返って一礼。
「本日はお祈りを頂戴しましてありがとうございました。ご寄付をいただけることがあれば、あちらの受付にお申し付けくださいませ」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「いいえ。レティスリール様のご加護があるよう、心よりお祈りいたします。《神託》スキルを取得された場合、特に報告義務はありませんが報告いただけると嬉しいです」
「はい」
簡単な説明をして、もう一度礼をして去っていくお姉さん。
どうやら寄付は強制ではないようだが、説明をしたということは暗黙の了解……的な部分があるのだろう。私はそのまま受付に行き、とりあえず10,000リルを渡しておいた。
受付の人が驚いた顔をしていたから、たぶん多かったんだろうなということはわかりました。が、ここで出したお金を引っ込めると女が廃る……気がする! ので、そのまま笑顔で受付を済ませた。
別に今はすごくお金が入用っていうわけでもないし、今後への投資ですよ。うん。
「大丈夫だった?」
「うん、ばっちりだよ。ロロも待ってるだろうし、乗合馬車まで行こうか」
「そうだね」
「っと、そうだった! その前にスキルを取得できたか確認しよう! せーのでステータスを見せ合うのはどうかな!?」
「まぁ、別にいいけど」
よっし! イクルにオッケーいただきました。
これで《神託》スキルを取得すれば私からリグ様へ話しかけることができる……はず。しっかりとしたスキル内容は把握していないけれど、きっとそんな感じだろう。
そわそわする。言うなれば受験の合格発表を見に行く、そんな感じ。私が思いとどまっているのを見たイクルは、また呆れ顔で。あれ? 今日のイクル呆れ顔多くない……?
「はい、せーの」
「ちょ、え、《ステータス》」
「《ステータス》」
ひどいイクルさん、いきなりすぎるよ!
私が心を落ち着かせてからせーのって言う予定だったのに!!
〈 楠木ひなみ 〉
15歳
Lv. 6
HP 111/111
MP 167/167
ATK 29
DEF 29
AGI 40
MAG 62
LUK 157
〈スキル〉
神様の箱庭
光の狂詩曲
天使の歌声
〈称号〉
リグリス神の加護
〈 イクル - 呪 〉
19歳
Lv. 27
HP 3,743/3,743
MP 2,245/2,245
ATK 686
DEF 549
AGI 824
AMG 395
LUK 20
〈スキル〉
風魔法 - 探索
神託
〈状態異常〉
ステータス値減少
攻撃魔法使用不可
猫舌
「「………………」」
あれっ?
なんかいろいろおかしくないかな……?
「神託……残念。でも、イクルが取得できてよかったよ」
いやもう、本当に。割と100%くらいの勢いで取得できると思っていました。だってリグ様が大丈夫だと思うみたいに言っていたから……!
いやいや、そうだよ、高望みは駄目だよ。私はリグ様と交換日記を毎日しているし、指輪でお話できるし、リボンの結界だってあるんだから。大丈夫、私は強い子だから泣かないよ。
私のレベルが6になっていて少し驚いたけれど、たぶん昨日の夜に村の近くでハードウルフをイクルと一緒に倒したからだろう。
うん、それはいいんだよ、別に。レベルが1あがってはいるけど肝心の能力値の増加は残念な感じに少ないし。じゃぁ私が何を言いたいかっていえば、ひとつなわけで。
「何でイクルそんなにレベルあがってるのっ!?」
「まぁ、いろいろと」




