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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第3章 呪いの歌
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12. さぁ、旅に出ましょう!

 ガタンゴトンと、馬車の揺れる音と、激しいお尻への振動。

 思っていたけれども、乗り合い馬車の旅は予想以上に激しい。徒歩ではないだけまだましなのかもしれないけれど。



 私とイクルは、レティスリール様を捜すためにアグディス大陸へ向けて出発をした。

 私のお店があるラリール王国の東門から馬車で出発。ここから初めての、馬車旅が始まるのです。

 申し訳ないとおもいつつ、外へ出たら雪うさぎになってしまうまろにお店番を頼んで。「まかせるのである!」と、元気よく返事をしてくれたまろには頭があがらない。



 そっと吹く風の優しさに身をまかせながら、もう何時間くらいたっただろうと考える。

 馬車から見える景色はずっと草原で。最初は楽しく見ていたけれど、あまりにも同じままなので少し飽きてしまった。

 私の横には、寝ているイクル。なぜこの振動で寝れるのかと問いただしたいが、起こすのも申し訳ないのでそっとしておく。

 他に乗っている人をみれば、ほとんどが冒険者さんかな……? 弓や剣、杖をもっているので私にも判断がつく。それに、お店に買いに来てくれるのも冒険者の人が多い。最初は少し怖いと思うこともあったけれど、今では割りとなれました。よほど怖い人でなければですが。



『ふぅ。結構ゆれるぽ……』

「えっ……?」



 不意に聞こえた声に振り向けば、イクル。

 あれ、イクルってこんなしゃべりかただったかな?



『こっちぽー』

「あ、ロロ!」



 ふとイクルの腰辺り、鞄からロロが顔を覗かせていた。

 すっごい、すっごいびっくりした!! まさかイクルが鞄にスライムを詰め込んでいたなんて衝撃過ぎるよ。ねばねばしたりしないのだろうか……?



『僕もついてきたぽ! ひなみさんよろしくぽー』

「うん、よろしくね。あと、ひなみでいいよ」

『わかったぽ! ひなみよろしくぽ!』



 にこにこしているロロが可愛い。

 何でここにいるんだろう……? イクルの鞄インスライムとロロの可愛い笑顔ですっかり忘れていた。一緒にロロが行くという話しはイクルから聞いていない。

 だとしたらロロがこっそりイクルの鞄に入った? でも、そんなことをしたらイクルはすぐに気付きそうなものだけどどうなんだろう。

 ちらりとイクルの顔をみれば、その瞳は閉じられたままで。どうやらイクルに聞くのはしばらくあとになりそうだと思いつつ、ロロにと話をしながら馬車に揺られた。







 ◇ ◇ ◇



「すごいすごいすごーいいいぃぃ!!」

「ちょっとひなみ様、勝手に行かないで、迷子になられると困る」



 夕日に染まったあたりで、やっと村につくことができた。

 今までいた大きな町街ではなく、小さな村。

 ちなみに、長距離の乗合馬車には高速・ゆっくりの2パターンがあることをさっきロロが雑談ながらに教えてくれた。

 馬のスピードが倍程度違うようで、私たちが乗った乗合馬車はゆっくりスピードの安全設計。しかしなぜ通常スピード馬車がないのか。極端すぎて選択にこまります。

 でも、イクルは最初からゆっくりスピードの馬車で日数なども教えてくれていたみたい。まさかそんなところから私に気を使ってくれているとは。本当、私にイクルはもったいないと思う。



 そして私が村につくなり「すごい」と叫んだ理由。

 村にたくさんの猫がいたから。何これすごい可愛いもふもふしたいぎゅってしたい……! 視界に入るだけで10匹程度の猫がいるのではないだろうか。普通に道の真ん中にいたり、屋根にいたり、木の下で寝ていたり。

 なんだこの癒し空間は! と、心は大パニック。そういえば、前に1度だけ花と猫カフェに行ったときも楽しかったなと思いだす。



『ひなみはにぎやかでいいぽ~』

「ちょっとにぎやかすぎることもあるけどね……」



 なんとなく微妙な会話が背後からしてくるけど、気にしたら負けかもしれないので気にしないことにします。大丈夫、私はレティスリール(この世界)で強く生きると決めたのだから。

 そう胸に決めて、ふと視界に入ったのはこの村に似つかわしくない建物。色とりどりのステンドグラスがついた、レンガの建物。ほかの家はほとんど木でつくられているのに。

 なんだか異質と言うか、幻想的な雰囲気をかもし出していて。



「……教会?」

「あぁ、あれ? 教会は、規模は違えどどこの村にもあるよ。この村はラリールの近くだから少し大きめに建ててあるみたいだね」

「そうなんだ。これが教会なんだ」



 教会、といえば。

 十字架かな? という私の考えは地球的なものなのだろう。ここの教会にはそんなものはなくて、変わりにたくさんの花が植えられ、きらきらと光るステンドグラスが女神様を崇めているようだった。

 そしてはたと、気付く。

 私、《神託》のスキルを覚えたかったんだ。

 すっかり忘れてしまっていたことにあちゃーと額を押さえる。マーリーさんにも今度教会に行きますとか言った気がする。いろいろと忙しくて忘れていました、ごめんなさい。

 でも、教会ならどこでもいいんだよね……? だったら、この村の教会でスキルを得られるかもしれない。うん、そうだ、そうしよう! だって今! 目の前に! 教会があるのだから!!

 そう思い、後ろを振り返ってイクルとロロを見る。

 すかさず呆れ顔になったイクルに嫌な予感を覚えつつも、「教会行きたいなー」と伝えてみる。



「駄目。まぁ、行くのはいいけど宿を確保してからだね」

「あ、そうか…… 確かに宿も大切だよね。そうと決まればすぐに行こう!」

「まったく、ひなみ様は調子がいいんだから……」



 あははと笑いつつ、私とイクルとロロは通りを進んで行く。

 この村は端から端までゆっくり歩いても1時間かからないようで、私としては広い街よりも過ごしやすいかもしれないと思う。だってお店のあるラリール王国の街はかなり広い。街中でも馬車を使って移動したりと、地味に不便なところもある。

 いや、その分お店は充実しているからいいのだけれどね? もっとこう……自転車的な移動手段があったら楽なのになぁとは思う。

 5分ほど歩いたところで宿屋の看板が視界にはいる。乗合馬車の人が教えてくれた、この村唯一の宿屋さん。大き目の木造で、横には小さな畑と、小さな小屋にモーがいた。

 木のぬくもりを感じられるドアをあければ、中には少女が1人。宿屋の従業員さんのようで、カウンター越しに「いらっしゃいませ」と迎え入れてくれた。



「こんにちは。1泊お願いしたいんですけど」

「はい、ありがとうございます! 夕飯はどうされますかっ?」

「お願いします」

「はい。ではお2人ですね、料金は……」



 そういえばお腹がすいたなぁと考えて、お姉さんが料金の計算を……って、いけない。

 今日は2人ではなくてロロが一緒にいるんだった。慌てて「もう1人います!」と声にだせば、従業員さんがきょとんとして「後から合流ですか?」と。



「違います、ロロ……スライムが一緒にいるんです」

『ロロですぽ! スライムも泊まっていいですかぽ??』

「あら! スラム街のスライムさんかしら? もちろん宿泊できるわ」

『ありがとぽ~!』



 おぉぉ! さすが異世界の宿屋、日本とはクオリティが違う! 何のかはわかりませんが。

 とりあえず一安心しつつ、従業員さんが「部屋割りはどうしましょうか?」と。



「普通でいいですよー」



 イクルを呪奴隷部屋とかいう謎の部屋に入れるのは断固阻止せねば。と、街で宿に泊まったときのことを思い返す。

 あれ? でも、ここで“普通”というとイクルが呪奴隷部屋になってしまうのか……? いけないと思い、慌てて部屋割りの訂正をお願いしようとして、先に口を開かれる。



「じゃぁ、えっと…… お2人が同じ部屋で、スライムさんは1人部屋ですか……?」

「え……えと?」



 なんとなく顔が赤いんですけど従業員さん。私とイクルが恋人同士に見えているんだろうか。

 私は15歳で、イクルは19歳。でも、私の見た目は日本人なこともあり幼く見えるし……つまりイクルはロリコンだと思われているのだろうか?

 確かに……! こんなイケメン美青年がロリコンだと知ってしまったら私も赤くなる自信がある!!

 ちらりとイクルを見る。イクルがロリコン……だと、笑いがこみ上げてしまうかもしれない。



「へんな顔してないでさっさと手続きしなよ。俺とスライムが一緒で、ひなみ様(この人)は1人で」

「あぁ、わかりました。では、こちらが鍵になります。料金は、お1人1,000リル、スライムさんは700リルになります」

「はい、これで。ありがとうございます」



 お金を払い、鍵を貰う。街で使っていた宿屋は1人2,000リルだったから、それを考えると大分安い。まぁ、ここが街ではなく村だから……っていうのもあるとは思うけれど。

 そうだ、あとで猫ともふもふしたいなぁ。でも、何でこんなに猫がいるんだろうか。



「そういえば、ここはすごい猫がたくさんいるんですね?」

「あぁ、ここの村は猫好きが集まって作った村なので、猫がたくさんいるんですよっ! 可愛いでしょう?」



 問えば満面の笑みで斜め上の回答をいただいたような。

 うん、猫は超可愛いと思うよ。でも、ほら……もっとファンタジーっぽい理由があると思ったのに。ちょっと期待していたからなんとなく残念だなと思うけど、これは内緒にしておこう。

 そういえばカウンターにも猫の置物があるなと思いつつ、私たちは部屋へ足を運んだ。



「今日はこのまま休んで、明日の朝に乗合馬車で次の街へ行くよ。そこはそこそこ大きい街だけど、その次の村までは馬車で2日かかるから夜営だね」

「えっ! 夜営……!」

「まぁ、とはいっても夜営場所はちゃんと休憩用の小屋があるからそんなに心配はいらないよ」



 なんだ、よかった……! 既に出発2日目で野宿的な展開になるのはつらいなと思ってしまった。せめてもう少し旅になれるまでは宿屋さんにお世話になりたいと心から切実に思う。

 そしてそんな話をしていたため話題にだせなかったことが1つ。



「ねぇ、この部屋……ねこすぎない?」

『ねこまみれぽ! どうぽ?』

「ん? って、ロロ何それすごい可愛いんだけど……!!」



 どういうことか、私とイクルが明日のスケジュールを話し終えたあと。ロロはただのスライムではなく猫耳スライムに進化しているではないですか。

 え、なにこれ、いったいどうなってるの??

 スライム特有のぷるっとした身体の頭? 部分から、ぴょこんと可愛らしい猫耳が生えていた。ロロの身体の水色と同じ色で、すごい可愛くて違和感が無い。



「あぁ、もしかして石鹸の効果?」

『そうぽー!』

「石鹸って、あの石鹸?」



 私がロロの妹ちゃんにお土産として買った、体とか洗う石鹸のこと?

 ちらりとイクルを見ればただ頷かれた。私まだ何も言ってないのにお見通しですかさすがイクルさんです。



「ということは、今のロロはどういう状態なの?」

『ただ単に耳と尻尾が生えてるだけの状態で、それ以外はなにもかわってないぽ』

「あ、そうなんだ。見た目チェンジアイテム的な……?」

『そうぽー!』



 すみませんでした。猫村とってもすごかったです。さっきはもっと期待してたとか言ってしまいましたが十分異世界ですすごいです。

 でも、猫耳石鹸かぁ。スライム限定効果……だよね? だって、ロロたちスライムと私たち人間では石鹸の使用方法が違うだろうし。

 なんとなく自分の頭をさわってしまったのは、たぶん条件反射で、深い意味はない。



『ひなみとイクルもやってみればいいぽー』

「えっ! 人間にも使えるの!?」

『説明書によると……人間はそれで頭を洗うと3分猫耳が生えるみたいぽ』

「さんぷん……」



 お風呂はいって猫耳はやして、出てきた頃には猫耳ない時間だよね?

 それは自己満足アイテムなんだろうか。いや、それはそれでいいと思うんだけどね。

 どうせなら、シアちゃんとお泊りで猫耳パジャマ女子パーティーとかしたら楽しそうだったのに。残念。

 ちなみにスライムだと1日効果が持つらしい。すごい!

 そしてちらりとイクルを見る。絶対猫耳が似合うのに絶対やってくれないだろう。まぁしかたない、それがイクルだし。

 そんなことをもやもや考えていれば、イクルが何か言いたげな目でこちらを見ながら「解散」と告げた。

 明日は朝一教会で《神託》スキルの収得をして、その後すぐに乗り合い馬車でしゅっぱつ。本当はもう少し観光をしたいけれど……あまり最初から村に長居するのもくないため、次の街で少しゆっくりすることにした。



 ちなみにその夜、村にあるという大浴場施設で頭をあらったら猫耳が生えてきてあせったのは内緒の話。

 でもあれ? 私に生えたってことは、まさか男湯に入っていたイクルも……? いや、考えるのはやめておこう。だって後で怒られそうだから。

そういえば、私気付いたのです。

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いつもたくさんの感想や評価ありがとうございます。

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