8. レベルアップ大作戦 - 3
久しぶりの2日連続更新です!
リビングで、気まずい中、食事中。
ひなみ心の俳句。
って、そうではなくてですね!
現在家出昼食中。私のレベルは5になって、ハッピー気分でいいはずなのに。
カチャリと食事をする音と、イクルとまろの睨み合いが続いています。
とはいえ、その睨み合いの原因は私な訳ですけども。
「アグディスへの出発は、ひなみ様のレベルが7になったら」
「何をいってるのであるっ! 最低でも10にしないとひなみは危険であるっ!」
「…………」
そう。
2人は私のレベルをいくつまで上げるか。それで言い争いをした。結局2人とも譲らず、最終的に無言で食事をするという残念な事態になってしまった。
というか、そもそもなぜ本人にレベルをいくつまで上げたいか聞かないのか。いや、聞かれたからと言っていくつまでレベルをあげたらいいのか分からないので微妙だけれども。
そもそも、イクルはレベル5でもいいと言った。だがしかし、まろが駄目だと言った。まろが心配してくれてるのはわかるし、嬉しい。しかしこの気まずい空気をどうにかしたい。
「ええと。私は……レベルが上がってもそんなにステータスあがってないっぽい? から、このまま出発でもいいよ?」
沈黙を破り、言葉を発してみました。
イクルは「そうだね」と言ってくれたけれど、まろは頬をぷくっと膨らませた。子リスみたいで可愛いなと思ったのは内緒にして、へらりと笑ってまろのご機嫌をどう直そうか考える。
「いや、まろが心配してくれてるのはすっごーくわかってるよ? でも、そのぶんしっかり注意するから……ね?」
「むううぅぅ。ひなみはどじだからすごい心配なのに。でも、確かにひなみはレベルが上がってもあんまり変わらさそうなのである……」
「あ、うん……」
そうはっきり言われると少し傷つくんですけど。と、若干思いつつまろの優しさには嬉しくなる。
でも、心配する気持ちもとってもわかる。私はそんなに強くないけれど、防御に関してはしっかりと対策を立てたほうがいいかもしれない。
そうだ! 大きな盾を持っていけばいいんじゃないだろうか。そうしたらすべての攻撃をはじき返すこともできるし、安全なんじゃないだろうか。これは名案だ……!!
「ひなみ様、またろくでもないこと考えてるでしょ」
「えっ! そんなことないよ、名案だよ! 大きい盾を買って防御を極めればいいんだよ!」
「「はぁ……」」
イクルとまろのため息がシンクロした。なぜだ。
「それならっ! ひなみの修行をするのである!」
「ええぇっ!?」
「大丈夫! まかせるのであるっ!」
「じゃぁ、買い出しや準備は俺がしておくよ。まろ、くれぐれも庭からはでないようにね」
「わかってるのであるっ!」
さっきまで険悪ムードだったのに、なぜこうも意気投合しているのか。なぜだ。
いやいや、せっかくまろが修行をつけてくれるというのだから、ここは喜ぶところだ。頑張ってレベル……は、上がるかわからないけど防御の動きをマスターしようではないか。
とりあえず、盾を買うところから始めればいいのかな? イクルの買い出しに少しついていって、盾だけ買ってこよう。そしてまろ先生に……いや、まろ師匠に鍛えてもらおう!
と、思っていたのですが。イクルがさらりと私を見透かしたかのように、いや、見透かした。
「盾は買わなくていいよ」
「えっ!? でもそしたら防御できないよ?」
「というか、ひなみ様が盾を持って動けるとは思わないけど。防御スキルを使えばいいよ」
「あ……」
そうだった。以前ハードウルフを撃退したスキルがあった。
光りの狂詩曲
想いを込めて歌を唄うと、光りの精霊が召喚され守護者を守る盾となる。
このスキルを使うと、バリアがでて私を守ってくれる。歌を唄えば光りの精霊が現れる、私にはぴったりかもしれないけれど、もったいないすごいスキル。
そういえばハードウルフに追われたとき、最初はあせってこのスキルのことをすっかり忘れていたなぁ。あのときは焦った。死をみたね……!
神様が私にこのスキルを使うんだって、教えてくれたのだ。思えば、この世界に来てはじめて神様と会話をしたのがこの時だった。もうあれから2年以上経つんだと思うと、なんだか懐かしい。
今日は交換日記にそんな思い出を書くのもいいかもしれない。
「じゃぁ、行って来る。まろ、頼んだよ」
「おまかせであるっ! お土産よろしくね!」
「いってらっしゃい! 私も頑張って鍛えておくよ!」
「はいはい……」
私とまろのへ呆れ顔をして、イクルは街へ買い物へ。そして私とまろは庭で修行です!
さっと食器を片付けて、神様にいただいた装備を身につける。ちょっとこの服は可愛すぎて恥ずかしいけれど、まずは形からはいるのも大切です。というか、アグディスの道中はずっと装備していなければいけないから、今のうちにならしておかないと。
商人や冒険者でもないかぎり、あまり長距離の移動は行わない。そして商人は専用の馬車と冒険者の護衛を雇うことも多い。逆に冒険者は、乗り合い馬車か、所持金事情によっては徒歩移動も多いのだそう。
なので、アグディスまでの乗り合い場所は冒険者の人と同じになる可能性が高い。なので、装備でも私1人が浮いて恥ずかしい! ということはないのです。むしろ装備のほうが溶け込んでいいのではないだろうか。
ふふ、アグディスへの未来は明るいのです! たぶん。
◇ ◇ ◇
「いやああああぁぁぁぁぁ!!!」
「ひなみ! 逃げちゃ駄目なのであるっ!」
「うく、あっ……! ら、ら、ら……光りの狂詩曲!!」
バンッ!
私のスキルが発動するのと同時に、大きな氷の固まりがバリアにあたりくだけ散った。
はぁ、はぁ、はぁ……怖かった……!
きらきらと光りを反射する氷のかけらは宝石よりもきれいだけれども、鋭いナイフよりも恐ろしい凶器だった。
まろの修行は、イクルのように1日3回だけ矢で射ろうなどという優しいものではなかった。まろを前にして、いかにイクルが優しかったのかを思い知った。
「ほら、ひなみ。まだまだいくよ?」
「ひぃっ……!」
まさかまろの笑顔をこんなにも怖いと思う日がくるとは思わなかった。
庭にでた私とまろは、きゃっきゃしながらどうやって修行しようかーなどと話していたはずだった。モーが草を食べていたので、危ないといけないので小屋へ入れたところでまろがにっこり笑って「防ぐのみである!」と言い放った。
そうして魔法で氷の固まりを生み出したまろが私に襲いかかってきて、今にいたる。
今も氷の固まりを3個生み出して……え? 3個!? さっきは大きいとはいえ1個の固まりだった。だから光りの狂詩曲でも防ぐことができたし、何とかなったのだと思う。
まろの顔付近に浮かぶ氷の固まり。笑顔のまろ。顔がひきつる私。
あ、これやばいやつだー……?
「いくのであるっ!」
「うきゃああぁぁっ! 光りの狂詩曲! 光りの狂詩曲! 光りの狂詩曲!!」
「おおぉ〜!」
とりあえずどうしたらいいかわからない私は、スキルを連発することしかできなかった。何も考えず、連発した。
襲ってきた氷の固まり2個は無事にバリアが防いでくれたが、最後の1つはスキルが間に合わず私の足を小さくかすめた。あ、一応少しずらして氷の固まりを投げてくれていたんだとほっとした。防ぎ損ねてお腹にヒットとかしたら笑えません。
「痛っ!」
「ひなみっ!? ごめんなのである、大丈夫であるっ!?」
「うん。大丈夫だよ」
慌てて駆けよってきたまろが回復薬を足にかけてくれた。みるみるうちに治る傷を見て、異世界はすごいなと関心してしまう。まぁ、この回復薬を作ったのは私なのだけれども。
というか、まろはきっと人に何かを教えるのに向いていない。それだけは確実に理解した。
なので、修行の方法を私から提案することにした。たぶんそっちのほうが効率がいいと思うから。
「まず最初は、氷の固まり1つからにしない?」
「え? でも、それだと実践には向かないんじゃ?」
「いや、徐々に増やしていくのが大切だと思うんだよ……」
きょとんとしたまろ。
しかし私がいかに順序が大切かを力説すれば、微妙な顔をしつつも最終的には頷いてくれた。あぁ、よかった……! 本当によかったと、心の底から安堵した。
と、いう訳で。順番に、順序よく、効率よく……かはわからないけれど、修行再開です!
「ようし、じゃぁいっくよー!」
「うん! いいよ!!」
まろが氷の固まりを生み出して、私めがけて投げつけて来る。
「光りの狂詩曲!!」
「どんどんいくのであるっ!」
まずは、私の足下に氷の固まりが襲う。それをなんなく光りの狂詩曲で防ぎ、次に右肩、左肩、お腹と続く。全ての氷の固まりを防ぎ、最後にまろが私の顔面めがけて氷の固まりを放つ。
正直怖い……けれど、ここで目をそらしたら駄目だ。まっすぐに見据えて、光りの狂詩曲を発動させて防ぐ。
……よしっ! 1つずつ、くる場所がわかっている氷の固まりは問題なく防げることがわかった。
次は、氷の固まり1つというところは変えず、ランダムでまろに投げてもらう。最初の5回は場所も決めていたから問題はなかったけれど、どこに飛んで来るかわからない場合……しっかり防げるのかはわからない。
若干実験がかっているような気もするが、自分のスキルをしっかり把握できていない私には丁度いいだろうと思う。
「じゃぁ、次はランダム!」
「まかせるのであるっ!」
そう言って、まろは新しい氷の固まりを5個生み出した。その固まりが1つ飛んできて、私は慌てて光りの狂詩曲を発動させる。
あぁもう、5個一気に飛ばしてくるのかと思ってすっごい焦ったよ……! 忘れてたてへぺろとか言って5個とばされなくて良かった……!! まろは若干、大丈夫かなと不安になるときがあるようなないような。
私の右上くらいでくだけ散った氷がぱらぱら落ちてきて、綺麗だなぁとのほほんとした一瞬。新しい氷の固まりをまろが飛ばしてきた。
本当に容赦ない……! きっとイクルだったら次行くよと声をかけてくれたに違いない。いや、絶対にかけてくれた。だがまろにそんな優しさはないようだ。いや、それは最初に連続で氷の固まりを投げられたときに気付きました。
次は左足へ飛んできた氷の固まり。目をそらさない様に、じっと見つめる。
間違った場所にバリアが展開されてしまえば、また怪我をしてしまう。それは痛いので、やっぱり回避したい訳です。
「光りの狂詩曲!!」
バンッ!
大きな音とともに氷がくだけ、防御に成功したことがわかる。
うん、ちょっとこつをつかんできたかもしれない。バリアを出したいところへ意識を集中させると、なんとなくその辺りにでてくれるのです。
いや、あやふやすぎると言われても仕方が無いが、こればっかりは上手くわからない。むしろ、それだけわかっただけでも私にしては十分のような気がしなくもない。うぅん、難しい。そもそもスキルって、この世界に来て初めて使ったわけだし、上手く使いこなせないのは仕方がない。きっと。
でも、使いこなすための努力はきちんとしようと、心に誓う。
神様のためっていうのはもちろんだけど、自分を守るため。それに、大切な仲間を……私も守りたい。守られるだけじゃなくて、少しは役に立てるように頑張るのだ。
「ようし、じゃぁ次は間隔を短くしていくのであるっ!」
「うん、バッチこいだー!!」
ヒュンっと私の……右肩をめがけて氷が飛んできた。しっかりそれを見据えてスキルを発動させて、防ぐ。そのまま第2撃がすかさずおそってくる。
集中だ、と。そう自分に言い聞かせて、しっかり前を見る。次の氷は……お腹!? これはしっかり防がないと大惨事になるけど、大丈夫。
私はまっすぐ氷を見据えたまま、声を高らかにする。
「光りの狂詩曲!!」
「さすがひなみっ! じゃぁこれはどうであるっ!?」
「……えっ!? ちょ、光りの狂詩曲!」
バンバンバンッ!!
氷の固まり3個が同時に飛んできた。とっさにスキルを使えたからよかったものの、うっかり遅れをとっていたら私は死んでいたのではないだろうか。
というか、まろ。さっきあんなにもゆっくり順番に修行をすることの大切さを伝えたばかりだろいうのに。もう私が伝えたことを忘れてしまったのだろうか。
というか、まろのことだから楽しくなって調子にのってしまった……といのが正しいのかもしれない。その証拠に、目をきらきらさせて私を見ている。「ひなみすごいのである!」と、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていて……さすがうさぎさんだよ。
でも、まろの修行は怖いからもう今日はおしまい……かな。
ぐったりしている私に、まろが「ひなみは体力もつけたほうがいいのであるっ!」と。もしかしたら明日からハードな1日がはじまるのかもしれない。




