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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第2章 ミニチュアガーデン
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25. 初心者講習 - 7

「やばいっ! 行き止まりだよ…!!」

「くそっ! 何か道は無いのか…!?」



 後ろからはスライムの大群。前は壁があって行き止まり…! これは絶体絶命のピンチです!! あんなに長かった通路がここで終わるなんて…と思いつつ思案するも、良い案はまったく浮かばない。

 タクトを見れば、壁をドンドン叩いて何か仕掛けが無いか探っている。それならば私も…と、正面の壁へと向かう。ペタペタ壁を触るが、特に何か仕掛けがあるようには思えずに焦りがつのる。



「あぁう~ お願い何か仕掛けよ動いてー!」



 焦って焦って、しかし何も無い。ぽぽぽーというスライムの鳴き声がすぐそこまで迫っていると言うのに。あぁもう、どうしたらいいのかわからない。

 迫り来るスライム。逃げ場の無い私たち。



「そうだっ! ひなみ、歌うんだ…!!」

「えっ? あ、そうか…光の精霊さん!」



 しかしこんな状況下で歌えるかな…どきどきする心臓を落ち着かせつつ、一つ息を吸い込む。お願いします、このピンチを何とか乗り越えられる力を下さい…!



「ららら~♪ ら~♪」



 私の声が響き、壁に反射しているのか結構な音量になった。スライムの泣き声と若干ハーモニーを奏でているような気がしなくも無いが…それでも私の前が光り輝いた。

 先ほどと同じ綺麗な髪に、花のついたハット。優雅なドレス姿で降り立った光の精霊さんが、私へそっと笑いかけた。



『こんなに早く呼んでくれるなんて、嬉しいわ!』

「ごめんなさい… スライムに追い詰められてて…」

『あぁ、あのスライムたちね。倒すのもイイけど、ここに先へ進む道があるのよ』

「「え?」」



 光の精霊さんの言葉に、私とタクトは分からずに声を上げる。

 何か仕掛けがある様には見えないが、きっと何かがここにあるのだろう。



『えーいっ!』



 ドゴッッ!!



「「え…?」」



 大きな音を他立てて、壁に大きな穴があいた。そう、光の精霊さんが壁に穴を開けたのだ。しかも素手で。まかさあの可愛らしい格好でこんなにも肉体派だなんて…!! 衝撃です。

 ちらりとタクトを見れば、穴があいた壁を見てすぐに、自分の拳を見つめていた。うん、私もタクトも素手で壁に穴を開けるのは無理だと思う。



『ほら、道、あったでしょ?』

「あ、はい… 私は何か壁に仕掛けがあって、それを解除するのかと思ってたよ」

『あら… 確かに、壁には魔力が宿っているみたいね! でも、こっちの方が早いし、まぁいいじゃない。ね?』

「いいのかなぁ。でも、とりえず逃げよう…! スライムに追いつかれちゃう!!」



 光の精霊さんが作ってくれた穴を覗き込めば、その先は少し広い広場の様になっていた。

 私、タクト、精霊さんの順に穴を通っていく。そこは、今まで歩いて来た通路と同様にファンシーな可愛らしい空間だった。しかし、生活していたような感じはなくて… なんだろう、中央に円形の魔法陣の様なものが描かれている。壁は花の模様が描かれた可愛らしい仕上がりで、天井には花の形をしたシャンデリア。



「なんだか可愛らしい部屋に出たなぁ」

「そうだねぇ。ここに、王家の実があるのかな…?」

『あら、王家の実を探してるの? ここにあるわよ!』

「「えっ!?」」

『ここは王家の実が実る場所よ』

「ほ、本当ですか…!? どうやったら手に入りますか…!?」



 きょろきょろ見渡しながらタクトと部屋に付いて話せば、光の精霊さんから爆弾発言が出た。すぐにタクトが詰め寄れば、特に隠すことなく説明をしてくれた。



『王家の実は、この部屋の中央にある魔法陣で発芽して育つの。でも、王家の実が必要なんて…あぁ、エルフの貴方が必要なのね。でも、貴方が…?』



 エルフが必要なら納得、というような感じであったが、光の精霊さんがタクトをまじまじと見つめて首を傾げる。なんだろう、エルフはエルフでも必要なエルフとそうではないエルフがいるのだろうか。しかし、すぐに光の精霊さんが『でも…』と言葉をつなげる。



『発芽させることは出来ないの』

「な、なんでですか…!?」

『んー… 発芽させることが出来るのは、レティスリール様だけなの。残念だけど、諦めることね』

「そんな… 何か方法はないんですか!?」

『あるにはあるけど、禁忌だわ。無理よ』

「「きんき…?」」



 光の精霊さんの言葉に、思わず私の口からも言葉が漏れる。

 内容を詳しく聞こうと思ったが、かたくなに口を閉ざし内容は教えてくれないようです。意味深な言葉を呟いておあずけに…! いや、禁忌とか物騒だから聞かない方が幸せかもしれない。しかし、それだとタクトが王家の実を手に入れることが出来ない。うぅん…レティスリール様がどこにいるかも…はっ!



「光の精霊さん…! もしかして、レティスリール様がどこにいるか知っていたりしませんか…!?」

『えっ?』

「レティスリール様しか発芽出来ないのであれば、発芽してもらえる様にお願いをします…! それに、お会いしてみたいですし…」

「ひなみ… 俺のことなのに、ありがとう」



 そう、禁忌が無理なのであれば… レティスリール様を探し出してお願いすれば良いのですよ!

 どのみち会いにいく予定でもあったのだから。少しそれが早くなる分には何の問題も無い。たぶん。



『ひなみ… それは、無理だわ。だって、レティスリール様はもう…亡くなっているのよ』

「え…っ?」

「あ… そう、ですよね…」



 驚きの声を上げる私と、当たり前だというタクトの声。いやいやいや、レティスリール様は生きている。だって、神様ともお話したし…どういうこと? 神様が知らないうちに亡くなっていたということ? それとも、神様が私に嘘をついていた? それか…光の精霊さんが知らないだけで、本当は生きている可能性もある。うぅん、考えても分からないか。



「となると、手に入れるのは厳しいか…? でも、ここまで来たんだ。光の精霊様…どうか、発芽方法を教えて下さい…!」

『だーめっ! 駄目よ。これをあげるから、早く街に戻りなさい。この翼を握って“帰還”と言えばひなみの家に帰れるわ。じゃぁ、早く帰るのよっ!』

「「あっ」」



 そう言って、光の精霊さんはタクトに真っ白な翼を渡して消えていった。きらきらと光を帯びた純白の翼は光の精霊さんの翼だろうか…? しかし、帰還と言えば私の家に帰れる何て、とてつもなく便利なアイテムではないだろうか。何回も使えるアイテムなのかなぁ? 1回だけ使用して消えてしまわないことを祈るしかないのです。



「さてと… 帰る…?」

「ここまで来たのに、帰るのもな。少し、調べてもいいか?」

「うーん… まぁ、危険はなさそうだから良いよ」

「助かる。サンキューな、ひなみ」





 可愛らしいシャンデリアからあふれる光の下で、タクトが魔法陣を観察している。私にはまったくもって意味が分からないが、タクトには何か分かるのだろうか。

 観察を始めて15分。あきもせずに見ているタクトは…凄いなと思う。私も魔法陣が分かれば、魔法を使えたり色々ファンタジーなことが出来るようなことになるのだろうか。うぅん、あまりイメージがわかない、かなぁ?



「うーん… 今までに見たことの無いタイプの魔法陣だ。けど、あれとあの魔法陣を組み合わせればこの陣展開に…まてよ、それなら…」

「……」



 これは、もう少しおとなしく待っていた方が良さそうだ。というか、思った以上に真剣なタクトを見れば…声をかければ怒られるんじゃないかとすら思うのですよ。

 様子をうかがっていれば、特に何かメモを取ったりはしないようだ。でも、タクトのことだから全て暗記をしていそうな気がする。私ももう少し物覚えが良ければなぁ。そんなことを考えていれば、タクトの呼ぶ声が耳に入った。



「どうしたの?」

「ん、これなんだけどさ」



 壁に寄りかかりながら観察していた私は、タクトがいる中央の魔法陣まで少し足早に近寄る。手招きしていたタクトの横に行けば、魔法陣を指差される。



「これさぁ、成長促進的な魔法陣だと思うんだよ。ただ、それだけにしては内容が細かい気がするんだ」

「内容が細かい??」

「あぁ。通常の魔法陣であれば、もっと簡易的な書き方なんだよ。古代文字で書かれているんだけど、ほら、ここの部分は文字数が特に多いだろ?」

「う、うん…」



 いまいち分からないが、タクトの指差す先を見れば文字のようなミミズ線が二重になって魔法陣を囲む形に円を描いている。これ、模様だと思っていたけど古代文字だったんだ。まぁ、内容はさっぱり分からないんですが。英語の筆記体よりも線に近くて、まったく文字?の違いが分からない。



「通常であれば、魔法陣はこの半分の文字情報で良いんだ。さらに、中の円には古代図まで使われている。おそらく、外周の古代文字とリンクさせているんだと思うんだけど…」

「これが分かるなんてすごいね… 私にはさっぱりだよ」



 あははと笑いつつ再度見るが、さっぱり分かりません。



「んー… そうだなぁ。簡単に言えば、成長促進の魔法陣なんだけど、何かもう一手間行程が加えられているってとこかな。ただ、そのプラス要素が分からない」

「なるほど… 成長促進と、もう1つ。それは、例えば実がなるなら味が良くなるとか、大きく育つ…とか?」

「それだと良いんだけどな。何とも言えない」

「ふむぅ…」



 しゃがみ込んでいたタクトが伸びをしながら立ち上がり、ひとつ伸びをした。そして何か考え込んでる様子を見せつつ私をじっと見つめて来た。

 え、な…なに…?



「光の精霊様はああ言っていたけど。ひなみ、1つ試したいことがあるんだが、いいか?」

「…うん? 内容を聞いてみないと何とも言えないけど、試したいことって?」

「あぁ。ここで、さっき使ったスキル天使の歌声(サンクチュアリ)を使って欲しいんだ」

「それくらいなら別に良いけど、種がないと意味ないんじゃない…?」



 成長促進用の魔法陣であるのは良いんだけど、種が無ければ発芽どころの話ではない訳です。



「そう。もしかしたら、魔法陣に加わっているプラスアルファの部分が種だったら…ってこともあるだろ? まぁ、可能性は低いんだけどな」

「あぁ、なるほど! 魔法陣に種が仕込んであるかもしれないってことだね」

「イエス!」



 そういうことなら、おまかせあれだよ!

 タクトが魔法陣から出て、入れ替わりに私が魔法陣へと足を踏み入れる。

 特にこれといった変化などはなく、何かを感じるといったこともない。



「じゃぁ、行くね。《天使の歌声(サンクチュアリ)》」

「おおおぉぉぉ…ぉ…?」

「うーんと、特に何も起こらないねぇ?」

「そうだなぁ」



 まったく何も起きない。ちょ、ちょっと恥ずかしいのですが。魔法の呪文を唱えたけれど、何も起こらなかった! みたいな。



「駄目かぁ…」

「だねぇ」



 タクトがこっちにきて、魔法陣の中に入って来る。2人で入ってもまだ少し余裕のある大きめの魔法陣は、うんともすんとも言いませんでした。



「駄目元で、もっかい、ど?」

「ん、まぁいいけど…」



 今度はタクトも魔法陣の中にいるらしく、変化が起こらないか見たいようでしゃがんで魔法陣に顔を近づける。うーん…何度やっても結果は同じ気がするんだけどなぁ。



「ふぅ…」



 落ち着いて、深呼吸をする。

 タクトが王家の実を欲しがっているんです。どんな魔法陣なのか私には分かりませんが…ここに種が有るのなら、どうか芽吹いて下さい…!!



「《天使の歌声(サンクチュアリ)》!!!」

「「っっ!?」」



 すると、今度は魔法陣が赤く光り輝きだした。

 先ほどはうんともすんとも言わなかったのに、魔法陣の文字や記号が赤くなり、周りは光っている。なんだろうと辺りを見渡すが、特に変化はないようだ。魔法陣だけ…?



「タクト、これ、……えっ!?」

「ひな、み…うぁ…」



 しゃがみ込んで魔法陣の観察をしていたタクトに視線を向ければ、崩れ落ちて魔法陣の上でうずくまる形になっていた。いったい何が起こったのか、私には特に何も感じられない。タクトの名前を呼ぶが、苦しそうなうめき声しか聞こえない。



「タクト! しっかりして…!?」

「あ…っ!!」



 タクトの肩を抱いて、とりあえずこの魔法陣から出ようとするが、タクトの体に力が入っているらしく上手く動かすことが出来ない。でも、きっとこのまま魔法陣の中にいるのはあまり良くないような気がする。

 しかし、その瞬間……



「あ、あ、あ… うわああぁぁぁっっ!!!」

「タクト…ッ!!?」



 瞬間、タクトの左胸から…… 植物の花が咲いた。

遅くなりました!

活動報告に少しお休みして復帰とか書いたのに、まるっと正月一ヶ月もだらけていました…!

皆さんからいただく更新まーだーの感想やメッセージを見てやらねばやらねばと思い今にいたります。がんばります!


そしてなろうコンに応募していたんですが、なんと挿絵を描いてくれている方がいました…! 夢ですか!? 何度も見てしまいました!

ありがとうございますありがとうです!!(嬉)

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