15. 開店準備
【鉢植え:小】 1
【鉢植え:中】 10
【鉢植え:大】 20
【野菜の種セット】 10
【果物の種セット】 10
【ハーブの種セット】 10
【小麦の種】 50
【稲の種】 100
【レンガ:1個】 5
【噴水】 1,500
【テラス席セット】 3,000
【瓶:100個】 3
【部屋】 50
【お風呂 - 増築】 5,000
【部屋 - 増築】 2,000
【部屋 - 増築】 2,000
【屋上 - 増築】 10,000
【地下室 - 増築】 30,000
【調合室 - 増築】 15,000
【鉢植え:小】 1×3 =3ポイント使用
【鉢植え:中】 =10ポイント使用
【部屋】 =50ポイント使用
【合計:63ポイント使用】
【所持ポイント:804】
「むむ。所持ポイントが少なくてまろの部屋を増築出来ないなぁ…」
私は交換日記を睨みながら、1人呟く。
まろの部屋も増築できれば良いのだが、まぁ…回復薬を作ればすぐに溜まるからそのうち増設しようと交換日記をサイドテーブルに戻す。
加えてポイント交換をした鉢植えは、花を植えてお店に飾る予定です。
宿屋からそのまま寄り道せずに戻り、今は3人でお店のレイアウトを話し合っていた。基本的には棚に並べていくだけなのでそんなに難しいことはなかった。
予定としては、明日看板が届くので明後日にお店をオープンさせる予定。現在、街に来てから私のスケジュールは割りと多忙だったりするのです。
街に入ったその翌日から数えて…。
1日目:商人ギルドへの登録
2日目:物件選び
3日目:市場で回復薬販売
4日目:物件ゲット!
5日目:看板完成予定
6日目:お店オープン!
7日目:ギルドの初心者講習会
ちなみに現在は4日目。
本当であれば、この綺麗な国の街並みを堪能しつつウィンドウショッピングをしたりしたかったのだけれども…なんだか上手くいかないものです。今度暇な時にシアちゃんを誘ってみよう。イクルは…きっと苦手なんだろうなと思う。うん、間違いないです。
「ひなみぃ~! 回復薬並べたよっ!」
リビングの方から私を呼ぶまろの声がして、慌てて返事を返し下へ降りる。というか、もう並べてしまったのだろうか。仕事が早すぎる…私はまだ何もしていなかったのに!
そのままお店へと移動すれば、もともと備え付けられていた棚に回復薬が並べられていた。
「まろすごいね…ありがとう!」
「ふふん! もっと褒めるのである!」
「すごいすごーい」
なでなで。
私はやり遂げた! そう、まろの表情が物語っていた。イクルはカウンターのところでおつりに使う硬貨を用意したり、細かい下準備をしてくれているようだった。
「ひなみ様、1日の販売数とかどうする?」
「うーん…どうしようか。各100個ずつにして、売り切れたら終わりとか?」
「そうだね、そうしようか。最初から1日100個の制限があればそれが生産の限界だと思ってもらえるだろうし…空いた時間は鍛錬や調べ物だね」
「うん。私も勉強して…神様の役に立たないといけないからね!」
とりあえずの経営方針…的なものを決めて。
あれ? もしかしてこれで開店準備は終わりなのかな?
商品となる回復薬の横にはまろによって値札と鑑定書も置いてあるし…細かい部分はイクルが仕切っているし…うん、やることがない。あ、まって、1つだけあった。
「まろ、お店に飾るお花を用意するから手伝って?」
「うん、わかったよ~」
そうして私は先ほどポイントと交換した鉢植えに花を飾る作業をして準備を終えた。
◇ ◇ ◇
翌日、看板が完成して届く日だというのに天気はあいにくの雨。
私は窓の外を恨めしげに睨みつつ、お店の中に設置した椅子に座って看板を待つ。やっぱり、お店の中に座れるスペースって、あると何かと便利だと思うのですよ。
〈ひなみの箱庭〉は、外の通りから店内が良く見える大きな窓がポイントのお店になっている。暖色系の建物に素朴な木で出来た扉はとても良く合っている。
店内には小さな鉢植えで花を飾り、お店の外にも鉢植えで花を飾った。うん、割とお店の名前といい感じではないかと思います。
ふぅ。
暇、ですね。
現在午前中。看板を届けて貰う大体の時間を聞いておけば良かったと思いつつ、携帯電話があれば楽なのにと思う。
イクルはどうやらまだ寝ているようだし、まろは現在にわとりと庭を駆けずり回っている。雨なのに元気だなぁと思う。
でも、イクルは割と早起きだったと思うんだけど…夜更かしでもしたのだろうか。
「…あれ?」
「お待たせしましたっ!」
「あー! 看板! ありがとうございます…!」
そんなことをボーっと考えていれば、看板が届いていました。
この間仕事をしていた職人のお兄さんが運んできてくれていて、大きな袋を担いでいた。って、看板をここまで担いできたの…? 力持ち過ぎます…!
そのまま袋を下ろし、看板を見せてくれた。
「す、すごい…!!!」
思わず、その出来の良さに声を上げてしまう。
木で出来た看板の左上には一輪の大きな花が、右下には小さな花がたくさん咲いていた。そのまま蔦が伸びて看板のアクセントにもなっている。そして中央には〈ひなみの箱庭〉と書かれていた。
木の扉よりも少し明るい色の看板は、とても目を引く仕上がりになっており大満足です。
「ありがとうございます…! すごいです、可愛いです!」
「おう。そう言って貰えると嬉しいな! 早速取り付けていいかい?」
「お願いします!」
どうやらすぐに取り付けることが可能の様で、わくわくしながら私も雨の中自分のお店の表へでる。大分小雨になってきてはいるようで、これなら大丈夫と思い看板を付ける壁を見る。
でも、つける位置はバルコニーの横辺り…どうやってるけるのだろうか。特に梯子があるわけでもないし、かといってバルコニーからだと設置するのも難しそうだ。むむむと方法を考えていれば、お兄さんが看板をぶん投げた。
「おりゃあああぁぁぁ!!!」
「えぇっ!?」
ちょ、何ぶん投げてるんですか!?
私は慌てて声を上げようとして、しかし次の瞬間息を飲んだ。
看板から蔦が伸びて、壁へと手のように伸ばしたのだ。
「え、どういうこと?」
看板から伸びた蔦は、器用に壁へと張り付いた。あれ、そんなに大きな出っ張りとかなかったはずなんだけど、なんでくっついたの? いや、それより何よりあれ?
「ははっ! 初めて見るかい?」
「あ、はいっ」
「魔力木で作った看板だからな、これくらいは楽勝だ。まぁ、俺の腕が良いってのもあるがな!」
お兄さんが、はっはっはと笑いながら分かりにくいざっくりの説明をしてくれた。
「看板から伸びた蔦が上手く壁と同調して張り付いてくれるんだ。便利だろう?」
「んー… よく分からないけど、便利ですごいってことは分かりましたよ!」
「おう、それが分かれば十分だ!」
私は付けられた看板を見る。
咲いている花は、季節ごとに変化するようなのでとても楽しみなのです。
きっとこれから紅葉の季節にもなるし…今からわくわくしてしまう。
「これで作業は終わりだな。またよろしく頼む」
「はい。ありがとうございます!」
手を振りながら帰路につくお兄さんを見送り、再度お礼の言葉を投げた。
いやぁ、ファンタジー世界はすごいですね! まさか看板をぶん投げるとは思わなかった。
さて。
ひと段落したら途端に暇になってしまった感じ。お店の準備も終わったし、今日はもう予定がない。
近所のお店に挨拶回りを、とも思ったのだが開いていない。さすが路地通り、皆さんフリーダムですね。
お店の前に飾った花に水でもあげようかなかと思っていれば、声をかけられた。
「ひなみ!」
「あれ? タクトさんじゃないですか」
「タクトで良い」
「うーん… まぁ、そういうならそうしますけど」
私がそう返事をすれば、「おう」と返事をしながらタクトが笑う。外に跳ねた柔らかい髪が揺れて、少しどきりとする。
この世界は外国みたいに、結構気軽な感じがする。というか、日本人が堅苦しくすぎるのかもしれないけれど。
「こんな所で何してるんだ?」
「ここでお店を開くんですよ。明日から開店するんです」
「へぇ、すごいな! 路地通りもうろうろして見るもんだな」
そう言いながら、窓から見える回復薬を楽しそうにタクトが眺める。「いくらで売るんだ?」と聞かれたので、予定の金額を伝えれば高いため驚かれる。
「でも、俺の足を一瞬で治したすごい回復薬ならそのくらいはするよな。俺がもっと稼げる冒険者になったら買いにくるから、それまで潰れるなよな!」
「む、潰れないよ!」
たぶんね。と、心の中で補足して。
「あっ! そうそう、ひなみに会ったら言おうと思ってたんだ」
「ん?」
「倒したぜ、スライム…!!」
「おおぉぉ! すごい、やったね!」
私が手を叩きながらすごいと褒めれば、「ついさっきな!」と満足気に教えてくれた。その為少しテンションがおかしいらしく、いつもはあまりしない街探索をしているとコッソリ教えてくれた。
私はまだ1人じゃ倒せないので、タクトが純粋にすごいと思う。
「ただ、2匹同時に出られたらどうしようかと思って対策を立ててるんだ。何か良いアイテムや装備が売ってれば良いんだけど、中々無いよな」
「うーん… そうだねぇ。私は弱いから実践の相談には乗って上げられないし」
「まぁ、また考えればなんとかなるか」
1匹倒したら、次は2匹想定か。タクトは先のこともしっかり計画を立てていて、見た目とは正反対なような気もする。だって、踊りとか得意そうで、スポーツが出来そうなイケメンなのに。実は戦略家タイプだなんて。
私が1人で考えて少し笑えば、「なんだよ」と突っ込みが入る。
「あはは、何でもないよ。そうだ!」
「ん?」
「良かったら、私の回復薬貰ってよ。友達になれたし、スライム倒した記念だよー!」
私はタクトを手招きしながら店の中へと入る。話をしていたらすっかり雨は止んでいたが、少し濡れて寒いのもある。私と同様にタクトも濡れているので、暖かいホットミルクでも用意しようかな。
冷えた時は、やっぱりホットミルクだと思うのですよ。
「え、いいのか?」
「うん。って、私こそ勝手に友達だと思っちゃったけど」
「はは、とっくにダチだな!」
私の言葉に笑顔で答えてくれてなんだか嬉しくなる。出会う人皆良い人で、この世界は暖かいなぁと思うのです。
「でも俺、何かあげられるもの無いしなぁ…」
「気にしなくて良いよ?」
うつむきながら「うーん…」と悩むタクトに何もいらないと伝えるが、あまりなっとくがいかない様だった。スライムを倒したお祝いだから気にしなくて良いのに。
あぁ、でも…それなら少し頼み事をしてみようかな。
「じゃあさ、1つお願いをしてもいい?」
「お? なんだ?」
「回復薬の使い心地を教えて欲しくて。私はあんまり戦闘をしないから、自分で使う機会がなくて。ダメかな?」
「なんだ、そんなことならお安い御用だよ。使ったら報告にくるな!」
ドンと胸を叩き、任せとけとタクトが態度で示してくれる。
私は棚からそれぞれ3個ずつ手にとってそれをタクトへと渡す。
「スライム撃破おめでとう!」
「サンキュ! でも、こんなに良いのか?」
「うん! でも、感想よろしくね?」
「あぁ。これを使い終ったら、今度は自分の稼ぎで買いにくるから待ってろよ!」
「楽しみにしてるよ!」
2人で笑いながら、次の約束をする。いつになるかは分からないけれど、タクトさんならきっとすごい冒険者になってくれると思う。根拠は無いのだけれど。
今はスライム1匹。次は2匹。うん、割と道は長そうだ。
怪我をしないと良いと思いつつ、多分無理だろうなとも少し思う。その心配もあり、お祝いと称して回復薬をあげたのだ。余計なお世話かもしれないけれど、魔物は本当に危険ですからね…!
「っと、そうだ。今日はこれから冒険者ギルドで実技の初心者講習があったんだ!」
「えっ! 時間は大丈夫?」
「ん、平気! でも、そろそろ出ないと怪しいから行くな。じゃあ、また明後日の講習で!」
「うん、またね!」
すっかり忘れていたらしいタクトが慌ててお店から出て行くのを見送り、私はお店の最終チェックを行なっていく。
とは言っても、確認することなんてあまり無いんだけどね。
しばらく作業をして、終わった頃に眠そうに目をこすりながらイクルがお店へと顔を出した。
イクルに「おはよう」と声を掛けて、昼食の準備を始めることにした。
今週は更新が難しいかもです…
色々溜め込んですみません。




