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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第2章 ミニチュアガーデン
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12. 精霊化の謎

今回は少し短いです。

何時もの半分より少なめ…です。

 視点:まろ



 ふわ、こんなに美味しい果実は初めて。

 庭に実った果実は私を大変に満足させるのである!



 私はちょこちょこと走り回り、目的の場所…“姫の木”へと登って行く。

 そしてそれをこっそりいただくのです。これが私のおやつで、楽しみの時間。



 私が暮らしているのは、ひなみの家。リグリス様より命を受けてこの世界〈レティスリール〉へとやって来た。上手い具合に森でひなみに出逢い、そのまま家まで付いてくることに成功した。

 ふふん。私にとってこんなこと…朝飯前なのである。ちょっと得意気になりながら、キョロキョロと辺りを見渡して異常が無いととを確認する。

 切り株の家があって、草花が咲いた優しい庭のあるこの家。リグリス様の加護があるので、家に何かあるはずはないのだけれど…それでも確認を怠らないのは私の素晴らしいところ!




「みぃっ!」



 あぁ、そうだった。

 今の私は雪うさぎ。しゃべろうと思っても、口からは鳴き声しか発することが出来ない。ひなみやイクルと話すことも出来ず…とても不便。

 現在、ひなみとイクルは街へ行っている為とても暇。いつもはひなみが遊んでくれるので楽しく過ごしていたのだけれど、1人…1匹? では、特にやることもない。



「みぃぃ〜」



 あーあぁ。早く人型になりたいなぁ。

 私は精霊になることが出来る。ただ、それには大きな問題がある。

 この〈レティスリール〉では、1種族につき1人しか精霊になることが出来ない。そうでなければ、私はとっくに精霊になれる器だというのに!

 まったく、何故こんな不毛な扱いを受けなければならないのか。

 でもそれは、言い換えれば〈レティスリール〉に精霊化した雪うさぎ(同胞)が存在しているということ。

 けれど、リグリス様の元にいた雪うさぎは私を合わせて5人。では、この地にいる雪うさぎ(同胞)は何者なのか。リグリス様によって産み出された私達は、自然発生をすることはない。となると、リグリス様であればきっとその正体を知っているに違いない。

 が、今の私にはそれを聞く術はない。



 人型になりたいなりたい!

 なってひなみとイクルと話しをしたいのであるっ! うぅ、私の可愛い夢が叶わないなんて、まったく酷い世界だ。



 この世界きて、私が始めて試したことは“精霊化”だった。まぁ、簡単に言えば人型になることなのだけれども。

 降り立ったこの森で、私はそれを試みた。しかし、それは叶わず私の夢は散ったのだ。そしてそのままひなみについて来て現在に至る。



「みぅ……」



 大きくため息を吐いて、一応もう1度くらい“精霊化”を試そうかなと思い立つ。だって、もしかしたら何らかの原因があって…偶々“精霊化”出来なかっただけ、という可能性も無きにしも非ず。たぶん。

 そうと決まれば、さっそく試そう。だってひなみもイクルもいないし、暇なのである。最近はよくイクルの探索に付いていったりもしたけれど、基本はひなみに遊んでもらう。



「みみみみみぃ〜〜!!」



 私は身体に雪の力を集めて一気にそれを解放する。その力の爆発により、魔物は“精霊”へと進化することが出来る。とはいえ、普通の魔物は唯の魔物なので、私の様に凄い魔物でないと無理なのであるっ!



 パァン!



 光となった雪の結晶が空中を踊り、私の力が身体中を駆け巡る。

 そしてそのまま私は雪に包まれる。



「…あれ?」



 “精霊化”、出来たのであるっ!



「どういうことなのであるっ!?」



 私は自分の体を見る。

 薄い水色の髪は綺麗なボブになっており、小さいツインテールも健在。服は純白のワンピース。

 リグリス様のところで人型になっていた私とまったく同じだった。

 何故、無理だった“精霊化”が出来たのか。雪うさぎの精霊が死んだのか…? 否、この様な短期間でそれは考えにくい。



「となると…」



 私は小走りに庭の端まで行く。

 もしかしたら、この“庭”が異常なのかもしれない…そうとしか考えられない。

 1歩、森へと足を踏み出す。



「みみーみっ!!」



 あぁ、やっぱりなのである!

 私は雪うさぎの姿へと戻った。

 もう1度庭に戻り、また“精霊化”を行う。



「あぁ、やっぱりなのである!」



 今度もしっかり人型になった。

 やはり、この庭の効果なのだ。なんといっても、あのリグリス様の愛が詰まっているのだから。たぶん。



「でも、これでひなみとイクルと話が出来るっ!」



 私はにんまりとして、嬉しさのあまり庭中を駆け回る。元々は雪うさぎなので、駆け回るのは大好きだ。

 あぁ、早くこの姿をひなみとイクルに見せたいなぁ。きっと2人共、すごくすっごーく驚くのである!



「ふふんっ!」



 でも、まてよ。

 私にはひなみとイクルがいつ帰ってくるのかは分からない。そう思うと、なんだか妙に淋しくなる。一応、早く帰ってくるねとは言っていたのだけれど…。



「うぅん…」



 外には出れない。

 となると、人型になってもやはり暇なままだということだ。



「あ、そうだっ!」



 閃いた。さすが私であるっ!!



「ひなみの使っていない調合室があったはず。私が華麗に調合して、ひなみを驚かせるのであるっ!」



 ふふん。我ながら完璧である。

 帰ってきたら驚くひなみの顔が脳裏に浮かぶ。私は得意気になりながら、調合室を目指してダッシュした。

女の子はまろでしたー!

という初のまろ視点です。

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