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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第2章 ミニチュアガーデン
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11. 繋がった家と街

投稿時間変えました。

なんだか仕事中に投稿されるのは、やっぱり落ち着かなかったです。

「…もう少し落ち着いて食べなよ」

「もぐもぐ……」



 私がいつもより朝食を早めに食べるのを見て、イクルが呆れながら注意をしてくる。とは言っても、もともと食べるスピードが早くないので、そこまで大差はないのだけれど。



 朝から賑わいを見せる宿屋の食堂は、冒険者や旅人で席が埋まっているという状況だ。その中の1テーブルで、私とイクルは朝食を取っていた。



「…ん、だって今日がお店の引き取りだから落ち着かなくて!」

「だからって、まだ朝じゃない」

「えへへ」



 まだ、朝だけどもっ!

 楽しみで仕方なくて仕方ないのです。

 それに、お店を引き取れば家につなげてまろに会うことも出来る。それに、やっぱり何日も家を開けるのもどうかと思うしね。

 そんなことを思案していれば、ぱたぱたと足音が私に近づいてくるのに気が付く。あれは…ミルルさんとタクトさんだ。



「ひなみさん!」



 どうやら2人の目的は私だった様子。どうしたんだろうと思いつつミルルさんを見れば、タクトさんを前に押し出した。「ほら!」と、若干怒気を含んでいるような気がするけれど…きっと気の所為。



「…回復したんですね、良かったです」

「そうなのです! ほら、タクト!」

「……別に、助けてなんて頼んだ訳じゃねぇし!」

「「……」」



 私の前に出され、ミルルさんにせっつかれてお礼を…と言う展開ではなかった様だ。タクトさんはそう言うと、走って食堂を出て行ってしまう。

 ミルルさんの「待ちなさいです!」と言う声にはまったく耳を貸さずに。大きく肩を落として、ミルルさんが私に向き合い深く頭を下げた。



「すみませんです…」

「あっと… 大丈夫、気にしないで?」

「でも…」

「それに、真紅の回復薬ガーネット・ポーションのお金は貰ってるんだから。ね?」



 まぁ、さすがにあの反応には少し驚いたけれど。もともとの性格なのか、それともスライムに負けてしまってナーバスになっているとか? あ、でも魔物が怖くて昔の私みたいな引きこもり状態かもしれない。うん、タクトさん…その気持ち分かります。



「なんだか、村を出てからピリピリしてるみたいなんです。本当は、優しくて面倒見も良いのです…」

「そうなんですね。なら、時間が経って落ち着いたら大丈夫じゃないですか? 誰しもそんな時はありますよ」

「ありがとうございますです…!」



 私の言葉にお礼を言って、ミルルさんはタクトさんを追いかけて食堂を出て行った。上手く行くと良いのだけれど。



「まったく、面倒だね…」



 最後の一口を口に入れ、イクルがやれやれといった感じでこちらを見ていた。心底どうでも良さそうなその態度に、なんだか逆に笑みが込み上げてくる。

 イクルは本当、ブレないなぁ…。私が何時もの調子でいられるのは、どんな状況でも落ち着いてるイクルが居てくれているからかもしれない。

 イクルには感謝してもしきれないのです。



「まぁ、スライムに負けたらやさぐれもするだろうね」

「そうなの?」

「だってスライムだよ? 最弱だよ? むしろ負ける方が難しいよ。ある意味天才なのかもね」

「イクル…」



 さすがに言い過ぎだよと思いつつ、「早く食べて行くんでしょ?」と言うイクルに私の言葉は止められた。あれ、イクルはいつの間に食べ終わったのか。きっと私とミルルさんが話している時だろう。ずるいなぁ…。







 ◇ ◇ ◇



 まだ少し早い時間ということもあり、散歩をしながら商人ギルドへと進む。

 朝から活気のあるこの街は、いつも私を飽きさせることはない。壁の上で夢うつつな猫も、仕事に遅刻をしそうなのかダッシュしているお兄さん。

 私はゆっくりと街を確認する様に歩き、どこにどんなお店があるのかチェックをしていく。気になったお店は後で来るのです。



 それから少し歩けば、中通りから大通りへと抜ける。



 大通りにある商人ギルドは、今日も賑わいを見せていた。建物の前にある馬車を止めておくスペースは、3つ共全て使用されていた。馬が繋がれて、荷台があり屋根のように布が掛けられている。

 若干乗って見たいなと思いつつ、イクルから「早く行くよ」とのお言葉を頂戴する。なんだろう、この気持ちは…あれだよ。トラックの荷台に乗って畑の間の道を走りたい! みたいな子供ながらのわくわく。うん、良く分からないかもしれないです。



「あら…ひなみさん、いらっしゃい」

「マリアージュさん! おはようございます」



 ギルドの中へ入れば、カウンターで書類を探しているマリアージュさんが出迎えてくれた。相変わらずのハニーオレンジで、とても綺麗です。



「あぁ、物件の引き取りね。直ぐに手配するから、座って待っていて?」

「はい」



 落ち着いた声に促されて、私は前回も説明を受けた机へと向かい座った。



「ふぅ。緊張するね!」

「そう?」

「イクルは緊張しないの?」



 私の問いかけに少しだけ考える素振りを見せてから、「別に」とイクルから返事がくる。私なんて生きてて緊張の連続だと言うのに、まったくもって羨ましい限り。

 そんなやりとりをしていれば、ベルさんが書類を持ってやってくる。物件売買の契約書…的な物の様だ。

 イクルと2人で説明を聞いてからそれにサインをする。



魔法のインク(ファンタスティック)だから、間違えないようにね」

魔法のインク(ファンタスティック)?」



 聞きなれない言葉に聞き返せば、イクルが説明をしてくれた。

 魔法のインク(ファンタスティック)とは、契約書などに用いる魔道具のこと。この特殊なインクを使い、魔法のインク(ファンタスティック)と唱えれば魔法により契約が結ばれるのだという。

 それにより、契約書は破ることも、燃やすことが出来なくなる。それから契約者がどの様な状態かが分かる…などがあるらしい。

 というのも、魔法のインク(ファンタスティック)の質により契約の強度が変わるらしい。今回使用する物は低品質の物ということで、出来ることは契約書が破けない、燃えないなどだそう。私の居場所がすぐに分かるというような物は幻品質らしい。



「すごいんだね。気を付けて書かないと…っと、お願いします」

「はい、確認しますね」



 とは言っても、自分の名前を書くだけなので間違えたりはしない、はずです。その他の契約内容に関しては全て商人ギルドで記入をしてくれていた。

 続けて店舗の登録も同時に行う。これで、いつからお店を開店しても大丈夫ということだ。



「はい、問題ないですね。それでは、物件にご案内します。そこで最終確認を行って引き渡しです」

「はい、お願いします…!」



 ベルさんが確認を終えて、これから待ちに待った物件へと行きます。ちなみに最終確認とは、設備がきちんと使えるか、大きな破損がないかなどを一緒に確認するそうです。あまり日本の不動産と変わらない。





「こらが簡易的なキッチンですね。火が付くこと、水が出ることを確認して下さい」

「はい、大丈夫です!」



 ベルさんと細かく確認を行う。

 キッチンは、コンロが1つと小さい流しがあるだけ。そして、家で使っているように火力も強くなく、水の出も弱かった。まぁ、使うのは家の方だから問題はない…はず。

 続いて物件の中に大きな傷がないかの確認に回る。特にこれと言って見当たらなかった為、最終確認の作業は直ぐに終了となった。

 思っていたよりも随分簡易的だったなと思ったが、日本基準で考えてしまう私がこの世界では異常の部類に入るのだろう。まったくの別世界と考えなければいけないのだが、これが中々に難しい。



 さらにベルさんが物件の中を一周し、問題がないことを確認する。このチェック後、何か問題があったとしても購入者の責任となる為いい加減にすることは出来ないのだ。



「ありがとうございます!」

「いえいえ、こちらこそお買い上げありがとうございます」



 ぺこりとベルさんへお辞儀をしてお礼をする。代金は先程ギルドで支払いを行ったので、もうここは私のお店となった。

 ベルさんは商人ギルドに戻り、私とイクルはそのままお店に残った。



「すごいすごい、お店だよイクル!」

「なんだかあっという間だったね。普通、こんな短期間にお店を持つなんて出来ないよ…」

「イクルのおかげだね」

「何言ってるのさ」



 へへ、と笑いながらイクルを見て、イクルも少しだけ笑ってくれた。良かった、呆れ顔じゃなかった。



 と、ここまで揃えば後はポイントで《箱庭の扉》をゲットするだけ。

 看板は明日届くし、細かい物はこれから買いに行く。間に合わなければ明日会にいくことも出来る。

 あれ、今なら何でも出来る気がします。



「取り敢えず、《箱庭の扉》を設置すればいいんじゃない?」

「うん。ポイントを使って、箱庭の扉と交換…お願いします!」



 ガコン!



 お?

 何やらお店が動いたような音がした。どこだろうなと視線を巡らせれば…あ、ありました。



「廊下の奥に…ドアが出来てるね」

「うん…」



 ごくりと喉を鳴らして、そのドアに目を向ける。それは、明らかに不自然であるはずなのに、どこか自然なドアだった。

 特に華美であるとか、そういうことはなく。デザインはこの家に合わせてあるようで、木目模様の…他の部屋へと続くドアと同じ見た目であった。

 開けてもいいのかな? ちょっと不安になりつつイクルを見れば「大丈夫だと思うけど、俺が開けるよ」と申し出てくれた。

 私はそれに頷き、ドアへと歩いていくイクルの後ろへと続く。大丈夫、このドアはちゃんと家に繋がっているのだから。



「…家、じゃない?」

「え?」



 ゆっくりと開けた先は、小さな部屋になっていた。そしてその部屋にはもう1つドアがあり、どこかに続いているようだった。

 中には入らず部屋を見渡せば、知らない場所な筈なのに懐かしさが込み上げる。



「家じゃないけど、内装や雰囲気が家と同じだよ…!」

「もしかして…あのドアの奥が家じゃない?」

「あ、そうだ、思い出した! 家に1部屋追加して、そこに繋げるって神様が言ってたよ!」

「あぁ、なるほどね」



 私の言葉を聞いて、イクルが遠慮はいらないとばかりに部屋をずんずん進んでいく。6畳程度の部屋だった為、すぐにドアの前へと付くことが出来た。



「あぁ、やっぱり家だね」

「良かった!」



 何のためらいも無くイクルがドアを開ければ、そこは見慣れた我が家でした。

 あぁ、良かった。そう安堵していれば、目が合った。え、目が合った?



「えと…?」

「……何者?」



 新しい部屋のドアは、ちゃんと我が家のリビングへと繋がっていた。何時もの見慣れたリビングだった。そのテーブルに腰掛けている見知らぬ女の子を除けば。

 私と目が合ったのは、林檎を食べている1人の女の子だった。

 薄い水色の髪はボブになっていて、再度を少しだけ結んでツインテールにしてある。真っ白な、くるぶしまである丈の長いワンピースを着た、10歳くらいの可愛い女の子。



 私は良い言葉が思い当たらず、そんな様子を見たイクルが私を庇う形で前へと出た。恐らく私と女の子に面識が無いと判断しての行動だろう。



「ひなみに、イクル……! おかえりなさい!」

「えっ?」



 女の子は、頬張っていた林檎を急いで食べて、花が咲いた様な笑顔を見せてくれた。



 おかえりなさい?

いつも感想や評価をありがとうございます。

返事が遅くて申し訳ないです。

しっかり読んではいますので…! 

時間が出来たらすぐに返信します…!


そしてやっと話が進みそうです。

でもまだやりたいことも出したいキャラもいっぱいです。

お話って難しいですね。

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