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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第1章 異世界生活スタート
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【小話】黄色の花

挿絵があります!

「まろー? どこいるのー??」



私は庭の隅から隅まで歩き回り、目的のまろを呼ぶ。しかしどこを見てもまろがいない。イクルも屋上を見に行ってくれたが、すぐ降りてきて「いなかったよ」と教えてくれた。



「まさか森にでちゃったのかな…?」

「どうだろうね。まぁ、まろなら森に出ても問題はないと思うけど…心配だね」



イクルの言葉に一つ頷き、もう1度庭を見渡す。駄目だ、いない。



「森にいるなら、まろは雪魔法もあるし逃げ足も速いし良いけど…問題は何者かに連れ去られた可能性かな?」

「えええぇぇっ!?」



確かに、まろは可愛い。しかも希少。

ふらりと誘拐をされてしまう可能性もある。野良うさぎ?と間違えて連れて行かれてしまったりしたのだろうか。私の脳内に不安がよぎり、それが顔に出てしまった様で、イクルが「大丈夫だよ」と声を掛けてくれた。



「まぁ、連れ去られた可能性もほぼ無いよ。雪うさぎは捕獲が大変だし。それに…この家と庭は安全性でしょ?」

「えっ?」

「ひなみ様のスキルにあったじゃない」



あぁ!

スキル《神様の箱庭》だ!



「そうだった!」

「忘れてたの? まったく。といっても、俺には具体的な効果が分からないんだけど」

「このスキルは、敵を入れないって神様が言ってたけど…」

「となると、まろが連れ去られた可能性はゼロだね。家のどこかに隠れてるか、森に出たかだね」



ん?

まろは誘拐された訳ではないと。でも、この箱庭のスキルは魔物を入れないんじゃ…って、あれ?

そうか。

まろも魔物なんだった。じゃあ、“敵”っていったい何を指すのか。

むむむと、思案していれば、これまたイクルが呆れた顔をしていた。あれ、イクルには理由が分かっているのだろうか。



「ひなみ様の“敵”を入れないってことでしょ。人でも、魔物でも、動物でも」

「あ、なるほど…」



確かに、以前私に襲い掛かってきたハードウルフは結界に弾かれていた。でもまろは弾かれない。そう考えると、スキル使用者の敵を遮断する…というのが正解ということ。

なんだか、とっても神様に守られてる気がします。





『み〜』

「まろっ!?」



と、私がスキル《神様の箱庭》について考えていると、どこからともなくまろの声が耳に届いた。しかし、辺りを見渡してもまろの姿は見当たらない。



「まろ、どこー!?」

『みっ!』



いつもなら私に飛びついて来てくれるはずなのに、今は声が聞こえるのみ。いったいどこから声がするのか…草むら? いや、いないぞ?

庭の草が少し生えている場所は、鶏のおやつ場となっている。てっきりそこでかくれんぼでもしてたのかと思ったが、まろの姿は無い。



「……」

「えっ!? イクル、まろの居場所わかったの?」

「…うん」

「どこ? どこどこ??」



イクルには何でもお見通しなんだろうか… 私にはまろの居場所がまったく分からないのに。これも風魔法の探索のおかげなんだろうか。



『み〜っ!』

「……あれ?」



イクルの方から、まろの、声が、するよ?

じっと私がイクルの方を見ると、イクルの背中から出てきてイクルの肩に乗った。

まろは口で小さな花をくわえていた。



『みっ!!』

「えっ? くれるの?」

『みぃ〜!』

「ありがとう!」



私はまろから花を受け取り、黄色く小さい花からそっと匂いをかいでみる。とたん、甘い花の香りが私の中に広がって優しい空気が出来上がる。

ピョンと、まろがイクルの肩から飛び降りて華麗なジャンプを披露してくれる。そのままたしたしと地面を小さな手で叩く。



「ん?」

「そこに植えろってことなんじゃ?」

「あぁ!」



まろの示すところに、そっと花を植えてあげる。すると満足気にまろも花の匂いをかぐ。そのまま私へ飛びついてきたので、しっかりとまろを受けとめた。



挿絵(By みてみん)



「まろの花、綺麗だね!」

『みっ!』



まろも「そうだろう!」と言うように高く可愛い声をあげる。

あ、そうだ。せっかくのまろの花だ。この花でお花畑が出来たら素敵なんじゃないだろうか。



「よし! まろが持ってきてくれた可愛い話。綺麗な花を満開にっ! 《天使の歌声(サンクチュアリ)》!!」



私の声に呼応して、地面から甘い香りが一斉に湧き立つ。そして黄色い小さな花は、私達の足元一面に広がった。



『みー!』

「相変わらず、すごいね」



なんだか、ちょっと照れます。えへ。



「まろのお花、綺麗だね」

『みっ!』

「そうだね」



小さい花が集まって、それはまるで黄色の花絨毯であった。この花で花冠でも作ったら可愛いかもしれない。

って、あれ。

何か大切なことを忘れているような?



「ひなみ様、中でお茶にしよう」

「あ、うん…」

「今日はパンでも揚げてみようか」

『みぃ〜!』



イクルが家の方へ向かえば、まろも私の腕を抜けて家へと向かう。まろは甘いパンが大好きなのです。

あ、そうだ! 思い出した!



「そうだよ! まろってば、どこにいたの!?」



私は声に出してそう叫び、イクルとまろの後を追って走る。

いや、分かってはいるんですよ。だってまろが持ってきてくれた花…庭に咲いてない花だもん。つまり、森に入らないと手に入れることが出来ない訳ですよ。



『みぃ〜?』

「あっ! まろ、誤魔化そうとしてない!?」

『みっ!』



お気楽な調子のまろは、どうやらはぐらかしにかかったようです。

まぁ、無事で良かった…です。

イラスト ひより様


この小説のイメージイラストを頂いたので、使用させていただきました。

そして小話もつけてみました。


素敵なイラストをありがとうございます!

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