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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第5章 闇に目覚し一輪の花
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9. ベアトリーチェの試験-1

 唐突に試験の開始が告げられて、私は固く手を握る。

 サリナさんが一緒だとはいえ、いったいどんな試験をするのかわからないのだ。不安な気持ちはとても大きい。


『私から店長に課す試験は、このダンジョンの調和!』

「え……?」


 このダンジョンの、調和?

 それはいったい何なのだろうと首をかしげると、ベアトリーチェは綺麗な髪を指ですきながら、私のやるべきことを説明してくれた。

 ……思っていたよりも丁寧で、内心ほっとする。


『店長も知っている通り、今、ここのダンジョンは主様が不在。だから、荒れ放題』

「あ、鈴花さん……」


 ダンジョンとはいえ、ここは鈴花さんの家でもあのだ。

 けれど今は、私の家で深い眠りについている。それを助けるために、私はベアトリーチェの試験を受けて妖精の力を貸してもらうのだ。


『そう。とはいっても、主様もずっとずーっと不在にしてたのですけどね。でも、今は魔物もいないし、少し平和になってきたのですわ』

「うん。残っていた魔物は、鈴花さんが倒したって言ってた」


 ひょうひょうとしているけれど、初代勇者なのだ。その強さは、今代の勇者であるサリナさんを圧倒するほどの力がある。

 ジャンクフード大好きなんだよね~と、笑いながらコーラ味の真紅の回復薬ガーネット・ポーションを飲む鈴花さんとのギャップは激しい。もちろん、その方が親しみを持てるので私は好きだけれど。


「あ、もしかして、調和って……」

「サリナさん、わかったんですか?」

『まぁ、平たく言えばダンジョン清掃ね!』


 ……………………えっ?


「ダンジョンの掃除って、ここを全部、ですか?」

『もちろんよ!』

「……っ」


 私はごくりと、息を飲む。

 だって、このダンジョンはかなり広いつくりになっているのだ。


 地下 1階 スライムがいた部屋

 地下 2階 ハードウルフとクロバットがいた部屋

 地下 3階 数種類の魔物がいた部屋

 地下 4階 数種類の魔物がいた部屋

 地下 5階 休憩スペース:おくつろぎください

 地下 6階 植物園

 地下 7階 動物園

 地下 8階 中ボスがいた部屋

 地下 9階 鍛冶屋

 地下 10階 妖精の泉 

 地下 11階 ひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)2号店

 地下 12階 ボスがいた部屋

 地下 13階 居住スペース


 そう、確かこんな感じ。

 現在地は、地下11階にあるお店。

 1階ずつが、かなりの広さを持っている。特に、魔物がいた部屋は冒険者が狩りをするということもあり、かなり広い。

 正直に、そんな悠長に掃除をしている余裕はない。


「試験が掃除なのは、わかりやすくて嬉しいんだけど……広すぎじゃないかな?」

『そうかしら?』

「終わるのに何日かかるのか、見当もつかないよ」


 最初にこのダンジョン攻略を行ったのは、魔物を倒しながらだったけれど、1日では下層まで下りきれなかったので野宿をした。

 それを思い出すと、達成できるのかすら少し不安になる。でも、イクルと鈴花さんを救うためだから、頑張らないとない事実はかわらないのだ。

 頑張るぞと気合を入れたところで、ベアトリーチェが声をあげる。


「うん?」

『店長、何か勘違いをしているわ! これは清掃といっても調和だから、ダンジョン内の環境を整えて欲しいの。傷んでしまった植物や、怪我をしてしまった魔物ではない動物がいるから。その子たちを見てほしいの』

「あ、なるほどそういうことだったんだね」


 植物や動物のお世話なら、私にもできることは多いと思う。

 スキルの天使の歌声(サンクチュアリ)を使えばいいし、怪我をしている子には回復薬(ポーション)を使えばいい。広範囲スキルもあるから、おそらく問題はないはずだ。


『大丈夫そうね! 私の試験に制限時間は設けていないけれど、早めだと助かるわ』

「うん。イクルたちを助けないといけないからね、最速で帰ってくるよ!」


 任せて! と、私はベアトリーチェに告げる。横ではサリナさんも大きく頷いてくれて、とても心強い。


『それでこそ店長ね! お店より下の階は主様の領域だから、ここから上の階をお願いするわね!』

「任せて。さっそく行ってくるから! サリナさん、いったん戻って回復薬(ポーション)を取ってきましょう。たくさんあった方がいいと思うから」

「そうだね!」




 ◇ ◇ ◇


 私たちはいったん2号店から家に戻り、リュックにたくさんの回復薬(ポーション)を詰める。

 魔法の鞄(マジック・バック)だったら、大量に収納ができるんだけどあいにく持っていない。いつか手に入れたいけど、高額なうえに市場に出回ることがあまりないと聞いて絶望したのだ。


真紅の回復薬ガーネット・ポーションがあればいいかな? 体力回復薬(ハイ・ポーション)を持っていくよりは効率もいいだろうし」


 私はリュックに50個の真紅の回復薬ガーネット・ポーションを詰める。かなりぎちぎちになってしまったけれど、調和という仕事ならば持ちすぎということはないだろう。たぶん。


「ひなみちゃん、こっちも準備オッケーだよ!」

「サリナさん、ありがとうございます!」


 サリナさんには、魔力回復薬(マナ・ポーション)を30個持ってもらった。

 基本的には、体力を回復する回復薬(ポーション)があればいいかなと思っている。


 ようし、試験に出発だ!

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