7. お店の確認
イクルと鈴花さんを助けるためには、まずこちらの状況を整えなければならない。そのために必要なものは、水晶の回復薬だ。
加えて、二人が目覚めるまでにどれくらいの日数がかかるかわからない。お店のことなども、ちゃんと休んでも大丈夫なようにしなければ。
私はダンジョンのお店に繋がっている扉から、お店へ顔を出す。
何も告げずに数日顔を出していなかったので、心配をかけてしまったかもしれない。もちろんまろがフォローをしてくれていたかもしれないけれど、街のお店も忙しかった。
カランと扉を開けてダンジョンのお店に入ると、3人の妖精たちがすぐさま出迎えてくれた。
炎の妖精、ベアトリーチェ。
風の妖精、フィーナ。
土の妖精、アークル。
この3人はお店の店員として、私がいない間もしっかり運営をしてくれるのだ。元々鈴花さんに仕えていた妖精さん。
『店長、大丈夫? 体調がよくないって、まろ様がいっていたけれど……』
「もう大丈夫だよ。ごめんね、心配をかけちゃって」
『ううん。店店長が無事で、よかった』
『強くなった?』
3人が心配をして気遣ってくれる。アークルが最後に眼を見開き、私の変化を見破った。すると他の2人も私をじぃ~っと見て、『確かに!』と声をあげた。
うーん。私は自分の変化をそんなに感じないのだけれど、他から見るとそんなにわかるものだろうか?
……いや、レティスリール様や妖精という、特殊な存在だからわかったのかもしれない。
私は体力が増えたということを伝えると、3人も喜んでくれた。
『そういえば、水の花はどうかしら?』
「順調だよ。家の庭で元気になってるよ」
『私たち妖精は、力になれるから。早く元気になればいい』
「!」
私がお店にきたことに、今ベアトリーチェが言ったことも目的として含まれる。レティスリール様は、妖精たちに力を貸してもらうように言った。
そうすることによって、イクルと鈴花さんを助けられる確率があがる。
なので、私は素直に力を貸してほしいということをお願いした。
『もちろん、店長ならいいわよ!』
「ベアトリーチェ、ありがとう!」
『でも、妖精の力を受けるには試験がいるの。だから、準備をしてから会いに来て。試験ないようは、秘密。チャンスは1回』
「試験……」
しかも、チャンスは1回。
もしかしてもしかしなくても、かなり厳しい試験になるのではないだろうか。しっかり準備をして臨もうと、私は胸に誓った。
そしてその後は、秘密の通貨がどれくらいたまっているかの確認。一言でいうと、お店の売り上げです。
私が尋ねると、ベアトリーチェはにんまり笑って、レジ下にある金庫を指さした。どんと構えているそれを開けると、中にはたくさんの通貨が積まれていた。
数えてみると、秘密の通貨は300枚ほど。
「わああぁぁ、すごい! こんなに買ってくれたんだ」
『数日分』
「うん。それでも、嬉しいよ」
水晶の回復薬が一番欲しいのだけれど、この調子ならばすぐにでも集まるかもしれない。
千枚で水晶の回復薬を手に入れることができるので、まだ半分以上はたりないけれど。妖精の試験や、準備をする時間が必要だからおそらく余裕であろうということはわかる。
なんというか、こう、先がはっきり見えてきたことは純粋に嬉しい。
何をすればいいのかわかっていることは、心に余裕ができる。もちろん、やらなければいけないことはどれも大変で困難ではあるのだけれど……。
◇ ◇ ◇
「試験の準備、かぁ……」
私は自室に戻り、頭を悩ませていた。それは、妖精の試験に関することだ。
準備をしていいのだから、手ぶらで突破できるような試験ではないのだろう。回復薬はもちろん持っていくとして、あとは何が必要だろうか?
地図、食料、寝袋? 期間がどれくらいなのか、ということがわかればまだよかったんだけど。寝袋を持っていくとなると、かなりきつい準備になる。
かといって、数日間の試験で野宿……なんてことになったら、上手くやれる自信がない。
うーん、どうしよう。
「あ! 花に相談してみよう、かなぁ……」
ゲームが大好きな妹だ。
もしかしたら、試験の予想を立てたり必要最低限にあった方がいいものなどを教えてくれるかもしれない。花に相談できるのは、かなり心強い。
自分の良そうもちゃんと立てておかないと。
考えられるのは、冒険者ギルドの初心者講習のように、筆記と実技という大きな2つのカテゴリー。けれど、筆記試験の可能性は限りなく低いのではないか――と、思っている。
頭だけがよくても、妖精の力を使いこなすのは難しいのではないかと考えたから。自分の力というか、本質を示すような試験じゃないかなと思っている。
例えば、薬草採取。魔法や剣技。回復薬作成という可能性もある。
……とまぁ、若干自分に有利なように考えてしまっている私です。
ポイントと手紙を交換し、私は筆を走らせる。
リグ様には相談せずに、自分の力で成し遂げたい旨も書く。
「……でも、それだと花に相談しただけでアウト? ううーん、ちょっと微妙なところかなぁ……」
でもまぁ、書いてしまったから手紙は送ろう。
何気ない日常の雑談を書いて、それから相談を綴った手紙を封筒に詰める。花はいったいどんな反応をするのかなーと思いながら、封をする。
すると手紙は光に包まれて、その姿を消す。
どうやら、無事に花の下へいったみたいだ。
更新遅くなりました;w;!




