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箱庭の薬術師  作者: ぷにちゃん
第4章 初代勇者の英雄奇譚
133/175

25. 店員さんを雇います!

 さて、と。

 アルフレッドさんとサイネさんが先へと行ったので、私とサリナさんとソールでお店を調べます。

 とは言っても、特に変わったところは見られない。



「特に仕掛けとかもなさそうだし、本当にお店みたいだね」

「そうですね」



 サリナさんも、何も見つけられなくて「うぅーん」と悩む。

 2人してどうしようと顔を見合わせて、とりあえず少し休憩をすることにした。



「そういえば、ここは水周りとかそういうのがないですね」

「確かに。特に奥へ続くような通路とか、扉があるっていうわけでもないもんね。ひなみちゃんがここの店主なら、改築することもできたりするのかな?」

「いやいやいや……」



 それはどんなすご技ですか。

 ここは異世界だから、もしかしたらそんな不思議現象があるかもしれない。けれど、回復薬(ポーション)系統に偏っている私ではそれも難しいだろうと思う。

 おやつにと、持ってきたクッキーをサリナさんとつまみながらたわいもない雑談をして過ごす。アルフレッドさんたちに申し訳がないけれど、しっかり休むのも私の仕事だとそっと言われてしまったので仕方がない。

 まぁ、このパーティーにおいて私の体力は最下位どころか突き抜けて低いですからね。サリナさんみたいに、戦える女の人が羨ましい。



『ポッホ!?』

「ん? どうしたの、ソール」

「クッキー詰まらせちゃった?」



 サリナさんが笑いながらソールの背中を撫でるが、どうやらクッキーを詰まらせてしまったというわけではなさそうです。

 パタパタとお店の入り口へと飛んで行き、『開けるポッホ!』と私たちを呼んだ。

 なんだろう、もしかしてお客様? って、そんなわけはないか。開けようと扉へ近づけば、サリナさんに「私が開けるから」と制される。



「外に、何かあるの?」

『誰か来たポッホ!』

「え? 本当にお客さん?」

「……敵意はないみたい。開けるね」



 外の気配を確かめてから、サリナさんが扉を開く。

 するとそこには、3人の妖精さん。先ほど泉にいたたくさんの妖精さんたちの誰かだろうか。



「え?」

『ここでお店を出すのだって聞いたから、来たの!』

『雇ってもらおうと思ったの』



 そうだ、契約の条件は、妖精の雇用と店舗営業だった。

 どうしたらいいのだろうと思っていたけれど、まさか妖精さんからここへ出向いてくれるなんて。自分で雇われてくれる妖精さんを探さないといけないのかと思ってくれていたので、ラッキーです。

 ということは、妖精さんはここのお店のことを知っているのだろうか。



『私はベアトリーチェ。炎の妖精よ!』

『私はフィーナ。風の妖精』

『アークル。……土の妖精』



 可愛い、女の子の妖精が3人。

 話を聞く限り、このお店のことを知っていたらしい。そして、私が契約を結んだということがわかったから来てくれたのだという。



「えぇと、お給料は回復薬(ポーション)って聞いたんだけど本当?」



 気になっていたことを、おそるおそる聞いてみる。

 ファンタジー世界とはいえ、お給料が回復薬(ポーション)というのはちょっとどうなのだろうと思うのですよ。

 確かに、妖精では人間の通貨が不要なのかもしれないけれど。



『いいのよ、それで。……貴女の回復薬(ポーション)は、至高でしょう?』

「え……?」



 すべてを見透かしているかのように。炎の妖精であるベアトリーチェさんが私へと微笑んだ。燃えるような赤い髪から、目を離せなくなる。

 フリルの服に、可愛いフリルの傘。装飾品のひとつひとつが繊細で、女王様とでも呼びたくなってしまうような妖精さん。

 私のことを、知っているのだろうか。でも、このダンジョンに来たのは初めてだというのに。

 少し困惑した私を見て、ベアトリーチェさんが私へ真紅の回復薬ガーネット・ポーションを取り出して見せてくれた。

 小さい妖精である彼女よりは少し小さい回復薬(ポーション)瓶ではあるけれど、いったいどこに隠し持っていたのだろうか。間違いなく、その真紅の回復薬ガーネット・ポーションは私が作った回復薬(ポーション)だった。



「あ、ひなみちゃんの回復薬(ポーション)?」

『えぇ。……ここの、(ぬし)様からいただいたのよ。だから、この契約書には報酬を回復薬(ポーション)と記載したの。きっと、来るのであれば貴女だと思ったから』

「……っ!」



 ベアトリーチェさんの言葉に、私は息を飲む。

 私を知っていた、というか……私が契約を行うことまで想定されていただなんて。しかも、私の回復薬(ポーション)をどうやって手に入れたのだろうか。

 直接あげたりはしていないから、おそらくひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)で購入をしたのだろうとは思う。

 彼女の言う主様が、お客さんで来たということだろうか。



『ベアド、駄目。店長が困ってる』

『あら! フィーナってば、私たちはまだ雇われていないのだから店長と呼ぶのは早いわよ?』

『そう言われても、雇ってもらわないと困る。私は、ベアドみたいに回復薬(ポーション)をもらえなかったんだから』



 じぃっと、私を見るのは緑の子。風の妖精、フィーナさんだ。

 さらりと伸びた髪は足首までと、とても長い。装飾の少ない、身体にフィットするタイプの服を着ている。ベアトリーチェさんとは対照的だなと思う。

 というか、私の回復薬(ポーション)が欲しいと言ってくれている。それはとても嬉しい。いや、待って。注目すべきところは店長という単語だろうか。

 間違いなく日本でバイトしてただろうと突っ込みたくなってしまう。



『…………』



 土の妖精であるアークルさんは、無口なのかなにも喋ってはくれない。

 大き目の服をゆったり着ていて、大きな帽子がトレードマークだろうか。



『さて、と。私たちを雇うかどうか、決めて欲しいのだけれど』

「あ、はい。よろしくお願いします」

『『『……………』』』

「ひなみちゃん、面接みたいなのはいらないの?」

「……うん。だって、見ればいい子だっていうのはわかるもん」



 サリナさんの溜息が聞こえたような気もするけれど、私はいいと思ってしまったのだから仕方がない。

 3人の妖精さんが、悪い人になんて見えなかった。

 私の作った真紅の回復薬ガーネット・ポーションを大切にしていてくれたベアトリーチェさん。

 私を店長と呼んだフィーナさん。

 無口だけど、私を真っ直ぐ見てくれるアークルさん。



 うん、駄目なところなんてひとつもない。



『ほ、ほんとうにいいの?』



 先ほどまでとは違って、おずおずと私の様子を伺うベアトリーチェさん。それに笑顔で頷けば、安心したのか『やったわ!』と喜んでくれた。

 フィーナさんも安堵して、アークルさんは心なしか目がきらきらしているように思える。



『じゃ、じゃぁ、さっそく開店。たくさん売って儲けるの』

『そうね、世界にとどろく有名店にしなくてはね!』



 フィーナさんが『やるの!』と気合を入れて、ベアトリーチェさんがそれに続いた。

 とは言え、まだ商品がないので営業をできないのだけれども。家に帰れば回復薬(ポーション)はたくさんあるからいいのだけれど、さてどうしようか。

 すぐにお客さんがくるような場所ではないけれど、妖精や精霊が来るというのであれば話が違う。人間と違い、ダンジョンなどにもなれているような気がするし……。



 ……箱庭の扉を、設置しようか。

 そう考えるけれど、今はサリナさんが一緒にいる。私のスキルであれば、特殊なものを持っているだけで済む。けれど、これに限っては神であるリグ様の力だ。

 人に話してはいけないとは言われていない。むしろ、私の判断で話をしてもいいとすら言ってくれている。

 サリナさんは、人に何かを言いふらすような人ではない。けれど、やはりそれはいけない。心のどこかで私がそう思っている間は、内緒にしておいたほうがきっといい。



『店長、売るのは回復薬(ポーション)でいいのよね?』

「あ、はい! そうですね、回復薬(ポーション)です」

『もう。そんなにかしこまらなくていいのよ。名前も、呼び捨てることを許してさしあげるわ』

「あ、ありがとう?」



 ふふっと笑うベアトリーチェが、クリスタルを見ながらどこに回復薬(ポーション)を並べていこうかフィーナと相談をしている。

 アークルにいたっては、無言で棚を雑巾で拭き始めた。



「みんな、すっごい張り切ってるねぇ……」

「うん。嬉しいけど、期待に応えられるかなぁ」

「ひなみちゃんなら、大丈夫。自身を持って! ね?」



 サリナさんがガッツポーズをしながら、私を励ましてくれる。

 いたって平凡な私が、2店舗目を経営だなんて。考えるだけで緊張してしまうけれど、せいいっぱいリグ様のために頑張ろうと思う。



『うーん、何かが足りないのよねぇ』

「どうしたの?」

『あら、うさぎの……えぇと』

「サリナだよ」

『そう、サリナと言うのね。ほら、このお店って何かが足りないと思わない?』



 優雅に首を傾げるベアトリーチェに問われ、サリナさんも一緒に首を傾げる。

 私も考えてはみるけれど、特に思い浮かばない。棚だってあるし、レジもある。しいて言うなれば、商品がないということくらいだろうか。

 いや、商品がないというのは大問題だけれども。



『そう、華やかさがかけるのよ!』

『クリスタル、綺麗』

『もちろん、美しいわよ。でも、花を飾るのがいいわ。そうね、サリナ。貴女、私と一緒に花を摘みに行くから持ちなさい』

「えっあ、はい……?」



 ベアトリーチェさんの得意げな声は、自信に満ち溢れていた。

 そうか、お店に花を飾りたかったのか。確かにクリスタルでとても綺麗だけれど、花があれば暖かさがプラスされていいかもしれない。

 どうやら、上の階にある妖精の泉にベアトリーチェがおすすめする花があるらしい。それを一緒にとりに言ってとサリナさんに頼んでいるようだった。



『ここは安全だから、店長のことなら大丈夫よ。それに、フィーナとアークルもいるもの』

「あぁっと、私は大丈夫ですよ」

「そう? うーん、確かにここは安全みたいだし。じゃぁ、さっと花を摘んでくるね」



 少し悩みはしたけれど、サリナさんはベアトリーチェと一緒に花を摘みに行った。

 確かにここは安全で、危険はない。ダンジョンに済んでいる妖精が言うのだから間違いない。



「ここと、家を箱庭の扉で繋げてください!」



【鉢植え:小】 1

【鉢植え:中】 10

【鉢植え:大】 20

【野菜の種セット】 10

【果物の種セット】 10

【ハーブの種セット】 10

【小麦の種】 50

【稲の種】 100

【レンガ:1個】 5

【噴水 - バージョンアップ】 2,000

【テラス席セット】 3,000

【瓶:100個】 3

【部屋】 50

【お風呂 - 増築】 10,000

【部屋ひなみ - 増築】 50,000

【部屋イクル - 増築】 2,000

【部屋まろ - 増築】 2,000

【部屋サリナ - 増築】 2,000

【屋上 - 増築】 30,000

【地下室 - 増築】 1,000,000

【調合室 - 増築】 15,000

 New!【箱庭の扉 - 増築】 1,000,000

【無詠唱】 50,000

【文通:1往復】 300,000


【箱庭の扉 - 増築】 =300000ポイント使用


【合計:300000ポイント使用】


【所持ポイント:998,936,815】



『店長、すごい』

『……すご』



 あ、そうだ妖精さんがいたんだった。

 でもまぁ、彼女達は店員になるのだからどっちみち教えることにはなるのか。だって、商品の搬入はここに設置した箱庭の扉から行われるのだから。

 この扉のことをフィーナとアークルに説明して、私たちはさっそく回復薬(ポーション)ひなみの箱庭(ミニチュアガーデン)2号店へと運び入れた。



『すごいポッホー』



 うとうとお昼寝をしていたソールも、目が覚めたようです。ソールは、もともと箱庭の扉を設置したときに花と一緒に家へ……と、そう考えていた。

 青い花を、綺麗に咲かすという約束を忘れてはいない。

また土曜日じゃなくて日曜日になりましたごめんなさい……!

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