表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
91/302

第九十一話 睨まれました


「お祖父さま、友人の水崎陽向さんよ」

「初めまして、水崎陽向さん。私は奈津子の祖父で湯江信三郎です」

 握手をして顔を見ますと、ニッコリと微笑んだ湯江信三郎さんと目が合いました。

 お若い! とてもお祖父さまなんて呼べないくらい若いです。

「お招きありがとうございます」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらですよ。お土産ありがとう」

「あの、その事なんですけど。お礼のために奈津子さんに渡してもらったのです。そのお礼だなんて」

 それから、あの……そろそろ手を離していただけないかと……。

「話に聞いてはいましたが、本当にお可愛らしいんですね、陽向さんは」

 あれ? スルーされました?

「いえ、あの」

「ふふふ、あれは奈津子の要請に答えただけですからね。それなのにお礼としてお土産をいただいては、湯江信三郎としてお礼を返さずにはいられないということです」

 分かったような分からないような、これけむに巻かれてませんか。

「そのお礼なら夏祭りで十分です」

「いえいえ、足りませんよ。夏祭りのお土産もいただいてしまいましたからね。陣海氏もぜひにと協力してくれました。今回は参加できずに残念を通り越して悔しがっていましたよ」

 陣海さんのお祖父さまもお父さまも、予定が入っていて来れなかったそうです。ただ、クルーズに来たかっただけではないかと思うのですけど。

 奈津子さんが教えてくれたんですが、芹先輩と修斗先輩、それから康くんや純君にも声をかけたのだそうです。予定が合ったのは真琴と真由ちゃんだったということみたいですね。

 船内に入るとヘリコプターは飛んで行ってしまいました。


 本当はあれに乗って帰りたいというつもりがあったのですが。


「あなたのためのクルーズです」


 と言われては、帰ると言えないじゃないですか……ねえ。

 結局、夏休み最終日までいることを承諾させられました。


 船旅バトラー付き。

 

 何となく、バトラーというと無表情なイメージだったのですが、久保さんといい笹村さんといい、表情豊かです。

 あ、ちなみに湯江新三郎さんには秘書さんが付いて来ていました。

 葛西智樹とおっしゃるそうですが、大変目つきの悪い方でした。

 通り過ぎる時にギロリと睨まれたのですが、怖かったです。

「ごめんなさいね、陽向さん。葛西は人見知りなのよ、秘書のくせに」

 有能なんだけどねぇと奈津子さんが呟きましたけど、あれ人見知りの睨みじゃないような気がしますよ。どちらかというと、近づくな! 的な感じです。まぁ私が感じた印象ですから、本当のところはわかりませんけど。


 一旦客室に戻って、華さんが用意してくれた鞄を開けようとして違和感を感じました。見たことのないスーツケースです。

 淡いブルーのスーツケースなのですが、断言して言います。これ私のスーツケースじゃないです。

「笹村さん」

 ドアを開けるとすぐ側に立っていて驚きましたが、ともかく私のものではないことを告げました。

「いえ、そちらは確かに水崎様のでございます」

「えっ、あの」

「開けていただければわかりますので」

 そういってニッコリ。

「は、はぁ」

 仕方なく室内に戻ってスーツケースを開けました。

 確かに。確かに見覚えのある服などが入っていましたけど。

 あきらかに今まで私が持っていなかったものまで入っています。

 華さんか父が買ってくれたのでしょうか?

 

 同じフロアにシアターがあるので、そちらに行こうということになりまして、その入り口付近で待ち合わせしています。

 スーツケースの中身を整理して、欲しい物をあとでショップに見に行こうと思っていたために時間ももらったわけなのですが。

 確認してからシアターへ行くまでの間で、葛西さんに会いました。


「どうやってお嬢様に近づいた」


 それが葛西さんの睨みの理由ですかと、何となく納得してしまいました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ