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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇〇九話 担任登場ですけれど……?

「おはよう速水君」

「あ、おはよう陽向ちゃん。もしかして僕の席、隣?」

「うん」

「そっか……しばらくよろしく」

「よろしく」

 にっこりと笑った速水君も、さすがに教室内の空気が可笑しいことに気づいたようです。

「何かあった?」

「担任の先生がかっこいいらしいって、騒ぎになってるのよ」

 奈津子さんがにやにやしながら私の後ろから速水君に言いました。

「あぁ、あの先生か」

 風紀委員だから事前に知らされているのでしょう。

 そう考えると、風紀委員の皆さんって口が堅いんですね。

 さすがです。

 疲れているのか、席についてすぐにため息をついています。


 丁度、ホームルームの開始を知らせる音が鳴りました。


「お疲れ?」

「少し……ね。問題は解決したから安心して」

「それじゃ、これ、はい」

 鞄から一口大のチョコを取り出して渡しますと、速水君が嬉しそうに受け取りました。

「助かった。朝ご飯食べたのに、もうお腹空いててさ」

「走り回ったら、それはお腹空くよね」

 ごそごそと鞄を探っていると、お煎餅がでてきました。ただ、割れちゃってます。

「あー」

「ん?」

「割れちゃってるけど、良い?」

「腹に入ったら同じだから、構わない……っていうか頂戴」

「どうぞ。先生が来る前に食べちゃった方がいいよ」

「うん」

 バリバリと音をさせて急いで食べたものですから、クラス中から注目されました。

 乾き物って喉が乾きますよね。

 だから、鞄から小さいペットボトルのお茶を出しました。

「まだ開けてないので、どうぞ」

「ふふふふ、至れり尽くせりで……」

 右隣で奈津子さんがにやにやしながら言うので、速水君が喉を詰まらせて、慌ててお茶を飲みました。一気に全部飲んでしまいましたよ。

「た、助かった。休み時間に新しいの買って返すから」

「お昼休みで良いよ」

「昼休みはまた仕事なんだ」

「あぁ、そっか。大変だね」

「陽向ちゃんだって忙しいだろ? 入学式とかさ」


 返事をしようとした時に、ドアが開く音がして教室が一気にシンと静かになりました。


「おはようございます」

 

 第一声は朝の挨拶でした。

 教室の全員が「おはようございます」と返します。

「今日から君たちの担任になった篠田三雲です。二年間どうぞよろしく」

 大変普通に思えるでしょう。

 しかし。

 入って来たときに静かになったのには理由がありました。

 そして誰もそれに触れられずに困っていました。

 仕方ありません。ここは生徒会メンバーとして代表となりましょう。


「先生」

 手を挙げると篠田先生がこちらを向きました。

「何ですか、水崎さん」

「何でお面つけてるんですか?」

 篠田先生は、現在某蜘蛛男のお面をつけていました。覆面じゃありませんよ、お面です。お祭りで売っているあれです。

「理事長から始業式の紹介が始まるまでつけているようにと言われました」

 始業式には新任の先生の紹介が必ずあります。

「それはもう一人の先生もですか?」

「不公平はいけないとのことで、もう一人の先生もです」

 理事長……なにさせてるんですか……。

 私は思わずため息をついてしまいましたよ。でも、これはつかずにはいられませんよね?


 始業式が終わり次第、理事長に抗議のメールを送っておきましょう。

 


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