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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第八十九話 騙されました!



 招待状には私の名前のみで、家族の名前はありません。お断りしようかと思っていたら、家族全員で行ってくるように言われてしまい、断れなくなってしまいました。

 まぁ、すぐに帰って来れるでしょうし。

 

 当日のお昼前、言っていた通り久保さんがお迎えに来てくれまして家族が見送る中、出発しました。

 港に着いて、見上げた船。

 え、クルージングの船ってこんなに大きかったでしたっけ?

 ポカンと見上げていると、とんとんと肩をた叩かれました。

「おはよう、陽向さん」

「あ、奈津子さん。あの、この船じゃないですよね?」

「この船よ」

 いやいやいや。

 船っていうか船舶って言いたくなる大きさですよ?

 商業用の大きさですよね?

「うん、これ祖父の子会社の船なの。貸し切りよ」

 倒れてもいいですか。

 貸し切り!

 この大きさを何人か知りませんけど、って……あ。

「何名の予定なの?」

「えーと、今のところ。十名」

 十名でこの大きさ!? 二百名くらいの大きさですよ!

 しかも船内の様子が載ったパンフレットをわたされて見ましたけど、これどう考えてもクルーズの方ですよね? 

「はいはい、乗った乗った。展望レストランでお昼食べましょう」

 奈津子さんが手を繋いできて、引っ張られるように船内へと連れて行かれました。

 海が見えるレストランだそうで、まだ出航していないため建物が見えるのですが、十分いい景色でした。夜景だともっと凄そうです。

「さぁさぁ、何食べる?」

「えーと、何にしましょう」

 メニューを見せてもらいましたが、どうみてもランチではありません。

「ランチのメニューは……?」

「え? これがランチのメニューよ?」

 確認すると、確かにアルファベットでランチと書いてありました。

「あ、松花堂弁当にする?」

 思わず頷いてしまいましたが、後で後悔しました。

 だって二段重ねの上、おこわと茶わん蒸し付き。

「陽向さんの好きなほうじ茶を用意してもらうわね」

 メニューに乗ってないドリンクまで。

 だ、大丈夫大丈夫。今日か明日までの事です。めったにない経験ですから、満喫してしまった方が得ですよね。

 奈津子さんも同じものを頼んでようで、二人でまったりとお昼ご飯を頂きました。

「出航はいつなの?」

「午後二時くらいかな」

「え? それならもう少し遅く来ても良かったんじゃ……」

「陽向さんと一緒にお昼食べたかったの」

 満面の笑みで言われては何も言えません。


「あ、来た来た」

 レストランの入り口の方を見ながら奈津子さんが言ったので、そちらを見ますと陣海さんがいました。

「こんにちは、水崎さん。いい天気で良かったですわね」

「ええ、本当に」

 その後、続々と集まってきまして。午後一時前には揃った様子でした。

 まず私と奈津子さん、それから陣海さんに陣海さんの親戚だという男性。真琴と真由ちゃんが来た時には驚きましたね。サプライズのために黙っていたのだとか。それから、久保さんに速水君と早良君。最後に来たのは陣海さんのお兄さんでした。

 何故にこの十名? とは思いましたが、私は招待された側ですし湯江家が呼ぶのに何か理由があるんだろうなと思っていたので特に聞きませんでした。

 速水君と早良君が何となくそわそわしていますけど、私も同じですよ。落ち着きません。

 そこのところ、真由ちゃんと真琴はくつろいでいましたね。さすがです。

 皆さんで話をしながら、お茶を飲んでいたら出航の時間になったようでして。

 

 出航してから、奈津子さんに言われました。

「この旅は今日から夏休み最終日まで船に乗るのよ」

 はい? 旅?

 最終日まで? え? 一週間くらいはありますよね?

「七泊八日よ」

「は?」

 え、だって私、荷物を何も用意してきていませんよ?

「華さんにお願いして、荷物を用意してもらっているから。後は船内にショップがあるし大丈夫よ」

「大丈夫よとかじゃありませんよ! 聞いていません!」

「それはもちろん、サプライズなのだから、秘密にしてもらったわよ」


 だ、騙されました! 


 

このために色々検索してみたんですが

クルージングもクルーズも色々あるんですねー!


実際は無理なこともあろうかとは思いますが

フィクションですので、わーわーきーこーえーなーいーー!


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