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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第七十七話 揃いました



 空港まで迎えに行った龍矢さんを今か今かと家で待っているのは私と父と華さんです。

 他の人が見ていたら、そわそわしすぎだと言われるであろうくらい、家の中をうろうろしていました。

 意味もなく冷蔵庫を開けてみたり、客間を確認したり郵便受けを覗いてみたり。

 お互いにツッコミをいれつつも、そわそわしながら待っていました。

「ただいま」

 龍矢さんとドアが開く音がして、三人で飛ぶように玄関へ行くと龍矢さんが荷物を持って、その後から香矢さんと千歌さんがニコニコしながら入ってきました。私は夏休みの頭ぐらいにあってますけど、三人は冬休み以来ですよね。

 全員でハグをした後、ソファに座ってもらいお茶を淹れました。

 一、二、三、四、五、六。

 六人いるのを何度も数えてはニヤニヤしてしまい、華さんに笑われましたけど。何となく家族が揃った! という感じで嬉しかったんです。

 北海道のお土産をもらって、わいわい話をしていると午後に着いたとはいえ、すぐに夕飯の時間になってしまいました。

 龍矢さんが同僚の方から借りてきたという、流しそうめんの機械がででんとテーブルに置かれています。意外と大きめの物でした。まぁ六人で小さいのを使っても食べづらいですよね。

 そうめんだけじゃなくてプチトマトまで流れたのには笑いましたけれど、用意していたそうめんが全部なくなるくらい楽しく食べました。すぐにデザートが食べられないくらいは食べましたよ。

 冷たいものを食べ過ぎたので、食後のお茶は温かいのを飲みました。

 香矢さんと千歌さんに挟まれて話をしているうちに、お腹いっぱいだったのも手伝ってウトウトしてしまい、私はそのまま眠ってしまったのでした。


 目が覚めると自分の部屋で、時計を確認すると午後十一時半です。この時間だとまだ誰か起きているかなと思ってリビングへと行くことにしました。

 何だか前にもこんな事ありましたよね。あの時は深夜に起きましたけど。

 キッチンの方に華さんと千歌さんがいて、男性陣は一人もいません。

「あれ? お父さんたちは?」

「買い物に行ったわよ」

 近くに遅くまで開いているスーパーがあるので、そこへ行ったのでしょう。今日着いたばかりの香矢さんを連れて行かなくても良かったのでは?

「ま。男同士の話でもあるんでしょうよ。こっちは女同士話をしましょ。夏休み中だし、まだ良いわよね?」

 千歌さんに言われて、図らずも途中で仮眠を取った様なことになっているのでぜんぜん眠くありませんし、隣に座って話をすることにしました。

 友達のとの約束の話をすると、とても喜んでくれました。そういえば千歌さんと香矢さんと夏祭りに行くのは初ですよね。今からすごく楽しみになってきました。

 川下りで微妙に水をかぶった話とか、池をのぞき込みすぎて落ちそうになった話とか。

「そういえば、小さい頃に陽向。そんなことあったわよ」

「え?」

「昔住んでいた町の温泉に鯉がいる池があってね。小さい子って頭が重いでしょう? それで落ちそうになったというか、落ちちゃって」

「えっええっ?」

「浅い池だったから、すぐに顔をだしてね。ケラケラ笑ってた」

 ぜんぜん覚えていませんよ。

「従業員の人が真っ青になって助け出してくれたけど、その次に行ったら柵が作られてたわよ」

 それは何と言いますか、ご迷惑をおかけしました。

「あの頃は子供とどう接したらいいか分からなくてね。同僚の人に、目を離しちゃだめよって怒られたっけ」

「ご、ごめんなさい」

「私が縁に腰掛けさせたのが悪かったのだから、陽向が謝る事じゃないわ。それに、陽向は小さい頃から大人しい子で騒ぎも駄々をこねることもほとんどなかったから、池から顔を出して笑ったときにね……あぁ陽向もああして、はしゃぐんだって。声を上げて笑うんだって、その時に思ってね。あの時からかなあ、暇があればあちこち出かけてたの」

 そういえばアルバムの写真に華さんとでかけているのが集中している時期がありますね。

「陽向を抱いているとね、声をかけられるのが半分に減ったし、同僚のお子さんと一緒にでかけたりして時々相談したりして」

 二十代前半で伯母ですもんね。父はまだ大学生でしたから華さんに預けられることが多かったそうです。後は親戚のところですね。


「その頃に龍矢に会ったのよ」



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