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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第六十七話 布団がいっぱい



「まあぁ…布団で部屋がいっぱいに?」

「苦しくないんですの?」

 

 乾いた笑いの六名。興味津々の十名。

 そもそもベッド以外で寝るのが初めてという女子もいるということが発覚。

 小学生の時の修学旅行の話を聞くと、ツインでベッドだったそうです。そうですか。はぁ…。

 

 そんな話が終わったのが五時過ぎでした。夕食まではまだ一時間あります。

「僕は館内探検してくる」

 和香が言い出して、それに着いていく女子が数名。

 私は部屋にいることにしました。

 

 この旅の一つだけ守るルールは、単独行動を取らない、必ず二人以上で行動すること。となっています。

 部屋に残ったのは私と奈津子さんだけでした。

「奈津子さんも行ってきては?」

「ルールに則っただけよ。それに、陽向さんにだけ言っておこうかと思うことがあって」

「ん? なに?」

「実は、他のお客さんに数名護衛が紛れ込んでるから」

「……はぁ」

「久保だけでは心許ないと思われたみたいでね、まぁ分からないとは思うけど。一応」

「お嬢様がいっぱい参加してるものね。仕方ないか」

「速水君にも言ってあるわ」

 何かあった時に頼れる大人がいるというのは、確かに良いことではありますが、反転見張られていると思うと息苦しいかもしれません。

 なるほど、それで私と速水君だけに教えたわけですね。


 一人納得していると扉がノックされた音が聞こえたので、チェーンをかけて開けました。

「あ、速水君」

 速水君と早良君でした。

「部屋にいるって聞いたから、来てみたんだ。池に鯉がいるっていうから、見に行かない?」

 振り返って奈津子さんを見ると頷いたので、扉を閉めてからチェーンを外し、二人で外へ出ました。

 四人で庭の池を見に行くと、他の参加者の皆さんも数名居て、さらに目つきの鋭い女性と柔和な男性がベンチに座っていました。

 速水君と目線をあわせて頷きあいます。

 何がそう思わせるのか分かりませんが、多分あの二人なのでしょう。二人だけとは限りませんが。

 柔和そうに見える男性から、たまに龍矢さんに感じるピリピリとした感じが伺えます。

 あの二人は目立たせるための人でしょう。だとするとまだまだいそうです。

「分からない方が助かるけど」

「そうだね」

 周りを見ましたが他にそれらしい人は居ませんでした。見破られるようでは意味がないですものね。

 ベンチの二人は態とそうしているのでしょうから。

「何かあったら久保さんか、あの二人に頼れってことなのかな」

「そうかもしれないけど私たちがわからない可能性もあったのでは?」

「それならそれで良かったのかもよ」

 まぁ、その方が良かったんでしょう。

 二人でヒソヒソ話をしていたものですから、それに気づいた皆さんに声をそろえて言われました。

「そこ、イチャイチャしない!」


 してませんってば!!



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