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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇〇六話 始業式朝です


 入学式の準備も整った頃、始業式となりました。

 家から登校していた時と同じ時間に目が覚めて、食堂で朝食を取りにいきましたら数名しかいませんでした。

 食堂の職員の方のところへ行って挨拶をすると驚かれましたが、笑顔で挨拶を返してもらえたのは嬉しかったです。

「この時間はまだ少ないんですね」

「はい。その制服は生徒会の生徒さんですよね? 朝早くからお仕事ですか?」

「それが自宅から通っていた時と同じ時間に起きてしまって」

「なるほど」

「こちらの食堂はセルフサービスですか?」

「一部はそうですね。少数の方はお部屋で朝食をとられますよ」

「……部屋へ届けるのですか」

「はい、事前に時間指定いただければ」

 専用のエレベーターがあるそうです。ホテルですか? ここ。

「混む時間だと、テーブルへ運ぶ前に生徒さんが取りに来ることが多いですね。積極的に来てくださるので、こちらとしても助かります」

 でんと座って待つ人はいないそうです。そこはホッとしました。

「泉都門学園では朝ご飯を食べることを推奨しております」

 ほぼ全員が朝食を取るそうです。すごいですね。

「何になさいますか?」

「えーと、Aセットをお願いします」

「かしこまりました」

 炊き立てのご飯に鮭、温泉卵とお味噌汁。ほうれん草の胡麻和えでした。

 旅館の朝食みたいですね。

 最後にお茶を飲んでいると、少しずつ生徒が増えて来ました。

 トレーを下げて「ご馳走様でした」と言った後、食堂を後にします。

 そのまま学園に向かうために鞄を持ってきていたので、玄関に向かうとエレベーター前で真琴と真由ちゃんに会いました。

「おはよう」

「おはよう!」

「お、はよう。早いね」

 真琴が驚いて瞬きしました。

「癖で起きちゃった」

「ははは、そうか。もう登校するの?」

「うん、今朝、生徒IDでクラスは確認できたし」

 玄関にクラスが貼りだされるのは、入学式の時の一年生だけです。

「あ、そういえば真琴と真由ちゃんは何組だった?」

 真琴が答える前に真由ちゃんが何故かニヤリと……珍しくニヤリと笑って「秘密」と言います。

「えー?」

「楽しみにしてて」

 生徒会室に集合しますから、教室まで一緒に行くことになります。

 その時にわかりますね。

 ですから、あっさりと引きさがりました。

「わかった。それじゃ、また後でね」

「うん」

「後で」

 二人に手を振って玄関で靴を履きかえようとしたのですが、靴箱の鍵をどこに入れたのか忘れて慌ててしまいました。

 危なく部屋にもう一度戻るところでした。

 エレベーターなので、面倒でもないと思われがちですが、エレベーターを降りてから部屋までの距離が結構あります。

 しかもそろそろエレベーターも混んでくる時間ではないでしょうか。

 鍵が見つかった時はホッとしました。どうせなら、ここも指紋認証にしてくれればいいのに……。


 生徒玄関へ向かうと速水君にばったりと会いました。

「おはよう、速水君。風紀委員の仕事?」

「おはよう。風紀副委員長なんかになっちゃったもんで、朝から忙しいよ。……新しい制服似合ってるね」

「ありがとう。副委員長ってすごいね。お互い大変だけど頑張りましょう!」

 握手をしてブンブンと振ると、速水君が笑ってくれました。

「陽向ちゃんは副会長だっけ? そっちの方が大変じゃない?」

「一年生も早くに入って手伝ってくれているので、大丈夫」

「そっか。でも、体調に気を付けて」

「うっ……、皆にそればかり言われる……」

 速水君は楽しそうに笑って私の頭を撫でてくれました。

「それだけみんなが心配してるんだよ」

「うん」

「そういえば、何組だった?」

 私が項垂れたのを見て、速水君が話題を変えてくれたようです。

「私はまた一組でした」

「本当に!? やった! 神頼みしたかいがあった!」

 神頼みしようかなと言っていたのは覚えていますが、本当に神社に行ってきたんですか? 速水君。

「っていうことは、速水君も?」

「うん、一組。二年間よろしく」

「うん、よろしくね」


 本当に嬉しそうに笑うのでつられて私も笑顔になりました。

 

 

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