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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第五十九話 待ってました!


 休憩後再び案内をしてもらい、普段は誰も立ち入れないという屋上にまで入らせてもらえました。

「海が見えるんですね」

「海水温が低いから泳げないけどね」

 海で泳ぐくらいならプールに行くよと言われて、びっくりしました。夏だというのに海で泳がないとは!

 いえ、私も泳がないんですけどね。だってカナヅチですから…。


 いよいよジンギスカンの…夕食の時間ということで私たちは着替えました。何しろ白い制服なので汚れやすいですし、匂いも付きますからね。ジャージにお着替えです。こちらの生徒会の方も着替えていました。

 階段を下りて外へ出ると、学校の裏へと回ります。

 そこには焼き肉の準備が整えてありました。

 ジンギスカンというと、あの鍋を思い浮かべるのですが、炭火でバーベキューの様に焼いて食べるようです。大勢ならこちらの方が良いかもしれませんね。

 少し深めの紙皿と箸を渡されまして、その紙皿にジンギスカンのタレが注がれました。

「ご飯はこっちねー、好きなだけ食べてください」

 そちらを見るとお握りがまさに山のように積まれています。

「ジュース類はこっちです」

 二リットルのペットボトルと紙コップ、それに色んな種類の五百ミリリットルのペットボトルが置かれていました。

 すでに野菜が並べられていて、いよいよ肉も焼かれるようです。待ってました! ジンギスカンです。


「純君、食べたことある?」

「ありますけど…」

「その様子だと苦手?」

「んー」

 煮え切らない返事をして、純君は小さめのラム肉をタレにつけて口へと入れました。

「ん?」

 モグモグと咀嚼していた純君は、次第に顔が明るくなり満面の笑みとなりました。

「うわ、美味しい! 炭火で焼いてるからなんでしょうか。臭みが気にならないですし、タレも美味しいです」

 そうそう、炭火だと少しクセがなくなるというか、美味しいんですよね。これに慣れると、炭火じゃなくても食べれるようになるかもしれませんよ。

 途中からホッケなどの海産物が入ったり、焼きそば焼きうどんが追加され、お握りの山もほぼなくなるくらいの勢いで皆さん食べていました。

 大満足です。

「陽向ちゃんって本当にジンギスカン好きなんだね」

「はい、香矢さんの家で食べてから大好きになりました」

 香矢さんのお宅のお庭で、同じように炭火焼で食べたんです。それから大好きになりました。


 あたりはもう真っ暗で、学校の明かりがこちらを照らしていました。

 そろそろホテルに戻る時間ですね。

 明日も午前中はこちらの学校で交流した後、午後は自由時間となります。

 私は香矢さんと千歌さんに会いにいきますよ、もちろん。

 芹会長は修斗先輩と郷土資料館へ行くそうです。純君は? と尋ねましたら、理事長と町立の図書館に行ってくるそうですよ。

 私だけ親戚に会いに行っちゃって良いんでしょうか。

 何かありませんかと芹会長に聞いてみましたが、あっさりと「ないよー」と言われてしまいました。

「学校との交流がお仕事だし、夕食までに戻って来てくれれば大丈夫だよ」

「ありがとうございます」

 校庭にバスが迎えに来ていて、私たちはそれに乗り込みました。

 ホテルに着くと、まずシャワーです。それから父に電話…を掛ける前に華さんに写真付きでメールを送り、明日の時間を香矢さんにメールで送りました。迎えに来てくれるそうです。

 そのメールを読んでから父に電話をかけました。

〔ひ~な~た~~~~~~~~!!!〕

 何とも情けない声で言うので、少し笑ってしまいました。

 明後日には会えますから、少しの我慢です。


 そして次の日、交流を終えて学校でお弁当を食べた後、ホテルに戻り私服に着替えてホテル前で待っていると、香矢さんが千歌さんと一緒に車で迎えに来てくれました。

「待ってたよ、陽向ちゃん」

「お久しぶりです」

 二人と抱擁を交わして、車に乗ります。

「家で待ってろって言ったのに、千歌が待てないって言い出して」

「良いじゃない! 一分一秒でも早く会いたかったのよ!」


 私もこの日が来るのを待ってましたよ!



ジンギスカンの記述は作者本人の感想みたいなものです

大好きなのです、はい


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