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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第五十四話 両手に花?



 現在、私の横には和香が立っております。

 ほくほく顔です。

 私はといえば、イスに座ってジュースを飲んでいるところです。

 何故、和香がほくほく顔かと言いますと。

 和香の向こう側のイスには金城会長が座っているからです。

「麗しき姫君達のお側に控えられる」

 という理由でほくほく顔なのです。

「和香も座ったらどう?」

 と何度も言ったのですが笑顔で断られました。

「今日の僕は、二人のしもべです」

 

 実は花時が来てすぐに芹会長が面白がって金城会長を和香に紹介したのですが、その途端に和香は片膝をついて金城会長の手を取り指先に口づけをしました。


 あれですあれ、ファンタジーなんかである騎士がお姫様にやるあれです。


「麗しき姫君にお会いできて光栄です」

 なんて芝居がかってやるものですから、周りの女子から黄色い悲鳴アンド江間さんの口から違う悲鳴が漏れました。

 近くで芹会長がお腹を抱えて笑っていますけど、これ誰が止めると思ってるんです? やっぱりハリセンを持ってくるべきでしたね。

「和香?」

「ひなひゃ、いひゃいいひゃい」

 仕方ないのでほっぺを引っ張りました。

「水崎さんのお知り合いですかー?」

「ええ、友人です」

 和香を立たせて、ほっぺから手を離すと和香がとんでも無いことを言いました。

「焼き餅妬きだなぁ陽向は」

「焼き餅じゃない。何、王子様に磨きかけてるの!」

「磨きかかったように見える? 嬉しいなあ」

 前に会ったときより背が伸びましたね?

 よくよく見ると髪に小さい王冠のピンがさしてありました。それで片方の前髪を押さえています。

 花時の方にお話を聞いてみると、女子から大変もてているとか。そりゃ見た目は王子様ですからね。

 見た目は…を強調して言うと花時の書記さんが笑っていました。

 そんなこんなで、現在テーブルには私と金城会長、向かい側に芹会長、その後ろに修斗先輩が立っていて、その横にすでにげっそりしている江間さん。それで私と金城会長の間に和香が立っている…という図であります。

「両手に花、良いねぇ」

「芹会長、私たちで遊ばないでください」

「いやいや、両手に花って結構難しいんだよ?」

「難しいとか簡単とかではなくてですね」

「そうなんですよ、芹会長。花時は女子高なのに、なかなか両手に花ってできないんですよ」

 和香も乗らなくてよろしい。

「そうだよねぇ。泉都門も女子が多いけど、両手に花ってなかなか無いよ」

 芹会長と和香の話を聞いていると、二人の両手に花…の定義が似ていました。

 二人曰く、並んで歩いているだけでは両手に花ではないと。手を繋ぐもしくは腕を組んでこその両手に花だと力説していました。


 もう、どうでも良いです。


 金城会長にあーんと言われて口に食べ物を運んでもらって、和香が相好をくずしているのは見ません、見えませーん。

 ため息をつきつつ、芹会長を見ると何かを期待するキラキラした目でこちらを見ていました。

「やりませんよ」

「えー」


 えー、じゃないです。

 修斗先輩、やろうとしないでいいんですよ!



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